絵本作家でイラストレーターの、のだかおりさんに聞いてみました。
ニジノ絵本屋の絵本作家であり、働く女性向けのコラムなどを書いているナカセコエミコさん。『ビーズのおともだち』作者であるおおにしわかと制作チームメンバーに、ナカセコさんが聞き手となってこれまでの道のりや絵本制作秘話を伺います。絵本づくりに携わったそれぞれのオンリーワン・ストーリーをご紹介します。
episode3_のだかおり
わかちゃんが手作りで制作したオリジナル絵本『ビーズのおともだち』。商業出版をするにあたり、わかちゃんの原案をもとに絵を描いたのがイラストレーターののだかおりさんです。
絵本『ビーズのおともだち』インタビューマガジン3回目は、のださんのこれまでのヒストリーと『ビーズのおともだち』制作秘話をお聞きします。
のださんの現在のお仕事について教えていただけますか?
フリーランスのイラストレーターをしています。
主に学習書や医療関係の書籍において、子どもや女性向けのイラストをご依頼いただくことが多いです。内容によって線画と輪郭線がないタッチを描き分けています。
イラストの仕事をメインにしつつ、テレビ制作の仕事もしています。前職でスポーツ中継の放送席ディレクターなどをしていたつながりで、イラストとは関係なく制作スタッフとしてのお仕事をいただいています。
小さいときから絵を描くことが好きだったのでしょうか?
姉弟の中では、一番お絵描きをする子でした。賞をもらったり、周りの方から「上手ね」と褒めてもらったことで、絵を描くことが好きになったのかもしれません。
小中高生のころはずっと美術部で、先生から美大進学を薦められていましたが、当時の私は絵の仕事に就くことを考えていませんでした。
食べることが好きだったので、「食」を学ぶ大学に進学して、調理実習のレシピを絵でまとめたり、オープンキャンパスのお手伝いで絵を描く機会をいただいたり。卒業制作ではたくさん挿絵が入った冊子を作りました。
料理番組に携わるテレビ制作会社に就職したあとも、職場のメモに絵を添えたり、日常的に絵を描き続けていました。
テレビ制作からイラストの仕事に変わっていくきっかけがあったのでしょうか?
テレビ制作会社を辞めたあと、大学の先輩がやっている飲食店でお手伝いをすることになりました。先輩は私にお店のチラシ・POP・看板のイラスト担当をさせてくれたんです。
そのアルバイトをする中で、イラストレーターという職業を知ったことが最初のきっかけです。「イラストレーターになるにはどうしたらいいか」を考えて、活動を始めました。お店で展示をさせてもらえないか先輩に相談し、イラストの展示をしていました。
流れに沿っていく中で徐々にイラストレーターの道がついたという感じでしょうか?
前職を辞めたあと、実は4ヶ月くらい仕事をしていない時期があったんです。国内旅行をしたり、海外でホームステイをしたり。その期間に、「私は何をしたいのか」を考えました。
そのときは答えが出なかったのですが、「趣味の絵が何かにつながればいいな」と思い、2014年夏からInstagramを始めました。当時は、一日一投稿以上、絵や落書きを投稿しました。
決断したタイミングは、Instagramのフォロワーが増えて、自分の絵に少し自信を持ち始めたころです。「イラストレーターを名乗る!」と決めて、2015年春にはかけ持ちしていたアルバイトを全部辞めました。
その後、年1回開催されている商談展の存在を知り、2016年に初出展しました。それまでは、大きなイラストでの収入はなく、知名度を上げるために、LINEスタンプ制作やInstagram投稿を継続しました。
前職でお世話になった方々から、テレビ制作のお仕事もいただきました。たくさんの方に支えていただいたおかげで生活ができていましたね。
イラストレーターもテレビ制作の仕事も、違う刺激があって楽しいです。在宅やカフェで作業ができる絵の仕事と、外に出て人とコミュニケーションをとるテレビ制作の仕事。うまく両立していきたいです。
のださんとわかちゃんとの出会いのきっかけを教えてもらえますか?
ニジノ絵本屋のいしいあやさんから、『ビーズのおともだち』制作のお声かけをいただいたことがきっかけです。
もともと、私がニジノ絵本屋のお店に訪れたり、いしいさんが私の絵本原画展に来てくれたりと以前から交流がありました。
いしいさんの妹さん(中島ナオさん)が活動されていたdeleteCの投稿を知り、私もSNSに投稿したことがありました。その投稿の印象や今までのご縁があって、お声かけしてくださいました。
ちょうどこの絵本のお話が来たときに、テレビ制作の仕事でNHKにいました。その職場に、当時わかちゃんが所属していたFoorin楽団の写真が貼ってあったんです。不思議なご縁を感じました。
のださんから見てわかちゃんはどんな人だと思いますか?
初めてZoomで顔合わせをしたときは、わかちゃん以外が全員大人だったせいか、緊張していてすごく静かな印象を受けました。でも、実際に会うとたくさんお話しをして、たくさん笑う子でした。
私がイラストの提案で「こっちの方がいいかな?」と聞くと、「そうだね」とか「私はこっちが好き」と、自分の意見をきちんと答えてくれる。その理由も話してくれたので、私もその意向をふまえて、「こういう表現はどう?」と、やりとりしながら進めることができました。自分の考えや好みを自分の言葉で伝えることができて、とても芯がしっかりしているなと思いました。
わかちゃんだから、今回のようなちょっと特殊なチーム制での絵本づくりも、スムーズにできたように感じます。
わかちゃんと絵本づくりをするうえで、のださんが心に留めていたことはありますか?
わかちゃんが作ったキャラクターを私の絵に落とし込むときに、「妖精の羽の色や形、この模様は大事にしたい」など、わかちゃんが大事にしている部分やこだわりを、できるだけそのまま描こうと思いました。
キャラクターの性格が読者に伝わるように、表情や仕草を考えたり、構図を工夫したり。わかちゃんの世界観を大切にしながら、提案をするように心がけました。
実は、私も小学生のころに妖精を描いていたんですよ。7人の虹の妖精を描いた記憶が強く残っています。
今でも妖精が好きで「意外とメルヘンだね」って、周りから言われます。
(文章担当の大川さんも妖精が好きだったそうですよ。)
みんなメルヘンですね。「妖精でつながっている」なんて、なんだかうれしいですね。
今回の絵本制作で見てほしいという部分はありますか?
絵担当としては、文章で伝えきれないことを絵で表現できていたらいいなと思っています。積み木が積み上がる躍動感や、カーテンの中のあたたかい雰囲気など。動きのある構図を楽しんでもらえたらうれしいです。
絵本って、一般的には絵の具などを使ったアナログ制作のイメージがあるかもしれませんが、今回はiPadで制作したんです。
『ビーズのおともだち』の制作期間は、テレビ制作の仕事をしていたので、お昼休憩や仕事終わりにカフェで描いたり、電車の移動中にも描いていました。いろいろなところで少しずつ進めることができたので、デジタル制作にして良かったです。「iPadで描いてるんだな」っていう目線で見てもらうのもおもしろいのかもしれません。
『ビーズのおともだち』を通じて、のださんが伝えたい人・ことはありますか?
この絵本は、きっとこれから多くの方の手に渡っていくのではないでしょうか。たくさんの人が明るい気持ちになり、前を向くきっかけになる一冊になったらとても幸せです。
また、「ビーズの活動」を知ってもらえるきっかけになればと思います。
絵本の中の好きなページを部屋に飾ったり、自分だけの妖精を描いてもらうのもいいかもしれません。
いろいろな楽しみ方をしながら、読んでもらいたいです。
最後に一言!
今の目標は、飲食店や保育園など、施設の壁画を描くことです。
ライブペイントや、ライブ配信で絵を描くパフォーマンスのような活動を増やしていきたいですね。コロナ禍になる前は、アートイベントで大きな絵を描くことにも挑戦していました。
絵ができあがっていくところを楽しんでいる方々の反応を見ると、すごくうれしくて。また、大きな絵に挑戦して、思いっきり描きたいです。
児童書や絵本の分野の仕事も増やしていきたいです。2020年に出版した『ゴロウのえほん』(刊:ひるねこBOOKSレーベル)という絵本が、今回いしいさんにお声かけいただいたきっかけでもあるので、今後も絵本を出版していきたいですね。