受賞する小説のつくり方〜総合ガイド〜
崖っぷち作家のニジマルカです。
「受賞する小説のつくり方」総合ガイドです。
受賞するにはどういった作品を書けばいいかをご紹介しています。
ざっくりとまとめていきますので、気になった記事があれば個別記事をご覧ください。
受賞する作品とは?
単純に言って、受賞するには「出版社が欲しい作品」を出せばいいです。
出版社が欲しい作品は、
従来のヒット作のように売れ
かつ、いままでなかった作品
です。
この2つをわかりやすく表現すると、
定番を踏まえ
新規性がある
となります。
つまり、
受賞する作品 = 定番 + 新規性
だということです。
当たり前に思うかもしれませんが、ほとんどの人はこのことを理解していません。
まずは「受賞するには2つの要件を満たなさいとダメなんだな」と知っておいてください。
売れた作品のリストをつくるには?
上で書いたとおり、受賞するには定番と新規性が必要です。
まずは定番から考えていきましょう。
定番とは何かというと、
最近売れた作品の共通性
のことです。
ですから、定番を出す前に売れた作品のリストをつくらなければなりません。
以下のように作業を進めるといいでしょう。
めざすジャンルの新刊リストをつくる
新刊の販売部数を記録する
累計部数を出し、売れた作品のリストをつくる
1.めざすジャンルの新作リストをつくる
最初に、自分がめざしているジャンルやレーベルの新刊リストをつくりましょう。
新刊情報サイトを見るのが早いです。↓
抜き出すのは単巻ものか、シリーズ1巻目だけで構いません(既存シリーズは過去作なので省く)。
2.新刊の販売部数を記録する
新刊リストができたら、ランキングを見て、結果を記録していきましょう
販売部数がわかるのはオリコンランキングだけです。↓
新刊がランキングに入っていれば、部数がわかります。
部数を週毎に記録していけばいいです。
(ランキング圏外なら”圏外”と記録していきます)
3.累計部数を出し、売れた作品のリストをつくる
何週か記録して累計部数を出します。
累計部数で並び替えれば、売れた作品リストの出来上がりです。
データの整理は、
レーベル、出版日、タイトル、1週目部数、2週目部数…、累計部数、あらすじ
くらいできると完璧です。
自分はこんな感じに記録しています。↓
定番を出すには?
売れた作品のリストができたら、共通する要素や構造を見つけていきます。
そういった共通性が「定番」です。
おおまかな手順はこうです。↓
あらすじを分析する
他の作品も同様に分析する
共通性を見つける
あらすじを分析するには、
あらすじを5W1H+Result(結果)で整理する
できたあらすじを要素ごとに抽象化する
抽象化したあらすじを図にする
という流れになります。
あらすじを分析できたら、同じ構造の作品がないか探してみましょう。
おそらくいくつか見つかると思います。
その共通性こそが、ヒット作品の「定番」です。
具体的な作業は以下の記事でくわしく説明しています。↓
定番と新規性の関係は?
定番についてはわかったと思います。
次は新規性ですが、その前に、定番と新規性の関係性を見ておきましょう。
定番と新規性とは要するに、
定番 :古さ
新規性:新しさ
のことです。
古さと新しさが売上にどう影響するかを簡単にグラフにすると、こうなります。↓
おわかりのとおり、古すぎても、新しすぎても上手くいきません。
売上が最大になるのは、古さと新しさの中間の作品です。
このグラフを人口分布と捉えてもいいです。
懐古趣味の人も、新しもの好きな人も存在しますが、その数は多くはありません。
一番多いのは中央付近の「古すぎず、でも新しすぎないものが好きな人たち」です。
要するに「普通の人たち」ですね。
「売れる」というのは、この普通の人たちに受け入れられることを言います。
ですから、出版社が「古さと新しさの中間の作品」を欲しがるのは、当然のことなのです。
改めてグラフにまとめるとわかりやすいでしょう。↓
中央の点線から左は「過去」であり、そこに上手くいった「定番」があります。
右は「未来」であり、そこにちょうどいい「新規性」があります。
この2つを併せ持つのがグラフの濃い色の領域であり、そこに入った作品が受賞する作品(売れる作品)です。
そして大ヒットするのは、定番と新規性がぎりぎりでバランスした作品というわけです。
新規性を出すには?
では「新規性」について考えていきましょう。
まず「新規性を出す」とは
新しいワードを出すこと
だとわかっておいてください。
ぼんやりしたアイデアを出すのではなく、はっきりしたワードに落とすことだと理解しましょう。
(ワードにできない場合はフレーズやセンテンスでもいいです。とにかくぼんやりしたままでは使えません)
その新規性をタイトルに入れることで、より新しさが明確になります。
ですから、もっと言うと、新規性を出すとは
タイトルに入れられる新しいワードを出すこと
だと言えるでしょう。
ところで、新人賞における新規性は、かなり新しめに寄っていても通用する印象です。
出版社が「ムリかもしれないけど、もしかして……」と今までなかった新しい作品を取る傾向があるからです。
グラフにするとこんな感じです。↓
ですから、新人賞では思いきって新しめの作品で勝負するのがオススメです。
では新しさをどう出すかですが、技術的にはこの辺りの記事が参考になると思います。↓
個別記事にもくわしめに書いてあります。↓
上手くいく作品の特徴を知りたい
さて、受賞する(売れる)作品は、「定番と新規性がバランスした作品」です。
そういった作品を、槍の形に例えるとわかりやすくなります。↓
作品とは武器です。
作者の使命は、作品という武器を使って読者を倒すことです。
槍の各部分は図のように、
定番 :柄の部分
新規性:穂先の部分
に相当しています。
それぞれ見ていきましょう。
1.定番は柄の部分
定番とは「読者が好きなパターン」のことです。
この部分がしっかりしていないと、敵を倒すことはできません。
重要なのは、柄の部分が穂先より長いことです。
柄の部分が短いと、ナイフのようになってしまいます。
ナイフで戦うには敵に接近しなければならず、素人には難しいです。
ですから、作品をつくるときは、柄の部分、つまり定番の割合を多くすべきなのです。
具体的な割合としては、
定番:新規性 = 2:1
くらいで考えるといいでしょう。
2.新規性は穂先の部分
一方、新規性は「いままでなかった」という性質のことです。
攻撃力があるのは、穂先の部分だけです。
つまり、作品の攻撃力とは新規性にあるのです。
穂先は固く、鋭くなければなりませんが、かといって大きすぎても扱いが難しくなります。
たとえば斧のような武器は素人には扱えません。
ですから、槍のように長い柄と鋭い穂先を持った武器が最適なのです。
また、定番だけでも、新規性だけでも戦えないと知っておきましょう。
どちらかでしか戦えないとしたら、迷わず定番を取ってください。
定番(柄)は要するに棒ですから、多少の攻撃力があります。
新規性(穂先)は握りがありませんから、握っただけで自分が傷ついてしまいます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。↓
まとめ
以上のことくらいがわかっていれば、新人賞に挑む際、途方に暮れることはないと思います。
作品は定番+新規性です。
定番は過去のヒット作を分析すれば出ます。
新規性はどこかから持ってくるしかありません。
また新人賞ではかなり新しめの作品でも受け入れてくれます。
ですから、定番を踏まえたら、ちょっとおかしいくらいの新規性を加えるのが、新人賞攻略の良い戦術になります。
これでもう戦いの準備は整いました。
あとは作品を書くだけです!
それではまたくまー。