『カレー野獣館 黄』 追篇完全版
蜂伽哩撫養
この館の蜂はいろんな迷路を残していく
この館で先週発見された蜂伽哩六角筒に泳ぐ、にわか雨のうす苦い記憶の残る森林の液果や塵だらけの名もわからぬ茸に、内蔵がひどく肥大したザリガニ、働きマンゴ蟻が蜂たちによって誘拐され、挽き噛まれ、噛み割られ、分解されて新たな荒療治の紫乳森林液果として生まれ変わった紫のケチャップを醸し出す半液体
この蜂が残した半液体をどんなカレー店も鋳造依頼できないであろう蜂製廃食器に結果としてなっているところの萌黄と薄黒の蜂伽哩六角筒で食してみるとそれは甘酸っぱい蜂カレーそのもので、それを茹でると蜂の巣状になる豆であるところのファジオロ豆をふかしたものとまぶして食すとすぐにわたしの中耳がざくろ歯の止まらないくしゃみのように紫と赤に反射間違いを繰り返すように激しく蝉動しはじめる
わたしの意識がその蜂伽哩六角筒の紫乳森林液果蜂カレーが生む幻聴にゆとゆと漂わせられている間にも、ファジオロ豆の蒸し煮と水煮とその紫乳森林蜂液果の何カ月分ものスープストックと一緒にあわせた蜂カレー粥は次々に出来上がっていく
この蜂カレー粥の消化吸収性はわたしの錆びはじめている膀胱、咽喉、大腸、食道たちをいっせいに蝉動させてその放しっぱなしの振動がしかし新たな別の蜂の襲来を呼ぶ
ピンクマニホットオイル、アニスオイル、カスリメティオイル、ハッカオイル、シナモンオイル、マンゴローズオイル、ブレイズドビーオイル、スウィートキンマオイルにここでつくられた蜂カレー香油とをあわせてできた幾通りもの蜂カレーをこれからテパチェ酒と一緒に食そうと思った時にはその新たな蜂どもの襲来によりわたしはまだ蝉動し続ける幻聴と蜂が運んだマンゴ蟻の蟻酸の残り香が八方から投げてくる音の果てない続きとで蜂伽哩六角筒に入っていなければザリガニの甲羅をも軽々と溶かす紫乳森林蜂液果を口からすべて垂らしてしまう
その垂らしてしまった蜂カレーは蜂たちにすべて奪われて回収されてしまう
紫乳液果を求め新たに飛来する蜂たちを刺激しないように全力で走ろうとするわたしの喉からは蜂蜜を食べる幾つかの動物たちの咆哮がまぎれ発された気がするがそれも蜂カレーが生んだわたしの中耳の蝉動音がすべて打ち消していてわたしはそもそも走ってなどいないことに気づき、わたしは蜂に刺されてしまう
黴た鎖がやってきた水の環たちを完全に拒否して
誰にも聴かれずに蝉が蜘蛛の壊れる過程を模したことを忘れた機械に鎖はその仮鳴を剥がされ、子がいつの時代のかわからね弾粉をやぶれた地図に広げている
古徘徊のその水郷の沸き出る案山子の辛さの記憶が吐き捨てられている荒れた道のすべてを子がそらんじているのを相棒が記憶している
捨てられた舟の五分の一が朽斑河に沈む魚で湾の雨もすべて無効になるその地の稲妻がその轟きを完全に否定され泥のように落ちるその色からまたはじめようとする相棒に蜘蛛の過程を模していた蝉のことは忘れその過程そのものになりつつある機械は吃るどもるの自然さで竜骨を築くが竜はその地にいたためしなくそれでも記憶にかつて蝉だった過程がしがみつくと破れた舟が凝視し過ぎた夏が白過ぎる腰の舟霊
それを相棒が食おうとしたので止めた蜘蛛の過程だったものはついにばらばらになり、その跡に溜まる闇が白くなっていくが環も陣もさびれはじめて舟着き場には夏と鎖が溜まりはじめて取り返しのつかない蜘蛛以外の水尾が黴も水もはじいて相棒はその場所を離れ
記録できない舟腹の声貝が沸
打楽器カレーのフェザンダージュ
打楽器を食べる
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