【日本遺産の基礎知識】甲州の匠の源流・御嶽昇仙峡〜水晶の鼓動が導いた信仰と技、そして先進技術へ〜(山梨県)
執筆:日本遺産普及協会監事 黒田尚嗣
山梨県の日本遺産「甲州の匠の源流・御嶽昇仙峡〜水晶の鼓動が導いた信仰と技、そして先進技術へ〜」の基礎知識を紹介します。
※本記事は、『日本遺産検定3級公式テキスト』一般社団法人日本遺産普及協会監修/黒田尚嗣編著(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。
日本遺産指定の背景
昇仙峡(しょうせんきょう)一帯の山地は、水の塊と信じられていた水晶を産出する水源信仰の地であり、地域を流れる荒川上流を訪ねると、悠久の時をかけた浸食により形成された大小の滝や巨石、奇岩に驚かされます。
水が作った芸術品ともいえるこの渓谷美は、江戸時代末期に行われた新道開削により奇跡的に出現したものですが、地域の人々の熱意により日本有数の景勝地として磨きあげられてきました。
そして、昇仙峡一帯で産出された豊富な水晶とその加工技術は、匠の技として日本一のジュエリー産業の基盤となり、更には、人工水晶製造技術へと繋がって、スマートフォンなどの電子機器に使用されるなど、過去から現代に至る私たちの生活を支えているのです。
1.日本有数の水晶産地
金峰山(きんぷさん)を源とする「荒川」は、隆起した花崗岩山地を悠久の時をかけ浸食し、芸術的ともいえる渓谷美と貴重な水晶をこの地にもたらしました。綺麗な六角形で長い結晶は、特定条件が揃わないと形成されないため、日本には、水晶の産出地がそれほど多くありません。
金峰山周辺の花崗岩を主とする地質には、黒平地区など、優れた結晶が産出される水晶鉱床がいくつもあり、水晶の発見は、水源信仰と結びつき、研磨されて金櫻(かなざくら)神社の御神宝となっているなど、この地の信仰と深く関わっています。
2.多くの信仰を集めた金櫻神社と御嶽古道
金峰山は、富士山と並ぶ信仰の山であり、その里宮として鎌倉時代に建立された金櫻神社は、現在も多くの参拝客で賑わいます。甲斐市には、当時の参詣道の入口に建てられていた鎌倉時代の石鳥居が発掘・復元されていますが、参詣道入口から弥三郎岳を越えて金櫻神社に向かう険しい道は、御嶽古道と呼ばれ、かつて、歌川広重もここを訪れています。
3.御嶽新道と特別名勝の指定
昇仙峡の奥地の集落に暮らす長田円右衛門は、9年の歳月をかけて、荒川沿いに新たな道(御嶽新道)を切り開き、甲府城下と奥地の村を結びました。この新道開削は、村人の生活を便利にしたばかりでなく、昇仙峡の素晴らしい景観を人々の目に触れるようにした、画期的な役割を果たしました。「内陸の白砂青松」と賞され、明治時代から景勝地として道路などが整備され、大正12(1923)年には、国名勝、昭和28(1953年)年には、特別名勝の指定を受け、麓に湧く湯村温泉とともに、観光地として発展しました。
4.江戸時代から続く水晶加工技術
金櫻神社には、御神宝として水晶玉が奉られていますが、この水晶玉の加工技術は、京都で水晶玉加工販売をしていた玉屋の番頭弥助が、水晶買いつけの際、金櫻神社の神官たちに伝授したといわれています。
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著者プロフィール
日本遺産普及協会代表監事。近畿日本ツーリストなどを経て、現在はクラブツーリズム株式会社の顧問を務める。旅の文化カレッジ講師として「旅行+知恵=人生のときめき」をテーマに旅の講座や旅行の企画、ツアーに同行する案内人や添乗員の育成などを行う。また自らもツアーに同行し、「世界遺産・日本遺産の語り部」として活躍中。旅行情報誌『月刊 旅行読売』に「日本遺産のミカタ」連載中。著書に『日本遺産の教科書 令和の旅指南』などがある。日本遺産国際フォーラム パネリスト、一般社団法人日本旅行作家協会会員、旅の文化研究所研究員、総合旅行業取扱管理者