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ドイツにおける「ノブレス・オブリージュ」赤十字など

ヨーロッパカップたけなわのドイツです。
昨日など、我が家の近くのフランクフルトで開催される試合もありました。
夫がドイツ赤十字のボランティア会員なので、よく赤十字情報がもたらされるのですが、この試合のときにはなんと千人ものボランティアが救急車とともにスタジアム近くで待機しているそう!

うちの町の赤十字チームはもちろん、近隣からたくさんボランティアが出ているんだそうで、いやはやすごい。
何事もなければ、1台も必要でないはずだけど、確かにいざ何かあるのだとしたら、何台も必要になるのかも。

でも、え? 赤十字? 救急車?って思いませんでしたか?

なんと、ドイツには公的な救急車があるのは大きな街だけ!
これは消防署も同じ。
人口75万人のフランクフルト市には、市から給与をもらう専任の消防士さんと救急救命士さんがいる。
でも、フランクフルト隣接のわが市(人口3万5千人)には消防署、消防車はあるけど、いわゆるボランティアの「消防団員」しかいない。

私の父は日本で長らく地元の消防団員に所属していた。
でも、都内の話なので、公務員の消防士さんが当然いて、そのお手伝いという位置づけ。

でも、うちの町は専任はいない!
消防団員だけで対応しなくてはならない。

救急はどうなっているかというと、うちの町ではドイツ赤十字が業務受託しています。
だから、町の専任の救急救命士はいないものの、24時間365日対応できるようになっている。

うちの町では、って書いた通り、受託先は複数あって、ドイツ赤十字(DRK-Deutsches Rotes Kreuz)の他に、聖ヨハネ騎士団(JUH-Johanniter Unfall Hilfe)、ドイツ労働者サマリタン基金(ASB-Arbeiter Samariter Bund Deutschland)、マルタ騎士団(MHD-Malteser Hilfsdienst)が四大機関だ。
他にもカリタスなども見たことがあるけど、大きくわけキリスト教系とその他に分けられる。

先日看護師の親戚がドイツに来たときに、救急車の色やデザインがまちまちですねと言っていた。
そりゃその通り、受託先が町によって違うからだ。

これらの機関は、自治体から業務委託をし、専任職員を雇って対応している。
だから、もちろん仕事として「救急救命士です」という人は一定数いるんだけど、要は公務員じゃないのだ!

赤十字などは業務委託した分の収入をもちろん、職員雇用にもあてるけど、新しい救急車や器具を買ったりにも使う。
他の収入源としては、イベントごと(多分、今回はFIFAが出している?)の出張サービスがある。

ある程度の規模のイベントには救急車を用意しておかなければならないルールがあるようで、よく夫は「Gebucht(予約されている)」と言っている。
今回の予約は、「救急車1台と3人だから行ってくる」とか。
(一人だと怖くて行かない!w)

それから日本でもお馴染みの献血事業。
これも専任チームは雇用しているけど、血液を病院に売ったお金が、備品購入とかに使われている。
私の血は病気の人に献じていると思っていたけど、赤十字にだったのか!
(まあ、周り回って、人の役には立っているけれど)

それから爆撃のたくさんあった、フランクフルト周辺では年に何回か爆弾が見つかる。
場合によっては、半径何キロ避難してくださいということになる。
そのとき、赤十字は体育館などを借りて、温かい食べ物を用意したりする。
真冬の路面凍結で高速道路で立ち往生した車にも、毛布や食べ物を差し入れにいく。
無料で!
その費用は自治体が出しているわけじゃない!

うちの町の赤十字のボランティアのクリスマス会に行ったことがあるけど、実際はもう活動していないOBやOG、家族も含めて80人くらいだったか。
よく動いているのは、多分10人くらいだと思う。
(うちの夫は最近プレスとかSNS担当)

夫は赤十字のボランティア会員なんだけど、それ以外に賛助会員の制度がある。
こちらは石を投げたら当たるんじゃないかというくらいいるらしい。
但し、みなさん高齢で、これからの収入が心配だという。

私はガールスカウト活動を通じて、ボランティアをしてきた方(今もドイツ語力を問われないなら、赤十字を手伝ってもいいんだけどなあと思っている)だけど、日本でそれだけの数の人がボランティアをしたり、募金(賛助会員は月々会費として募金している)をしたりしているだろうか。

ボランティア先としては、医療、消防関係にとどまらない。
薄謝で少年スポーツのコーチをしている人もたくさんいる。

ドイツ全土で公務員の救急救命士があまりいないってびっくりな話だ!
もちろん日本でも業務委託は可能なのかもしれないけど、成り立ちとして、自治から始まっているから、今の形なんだろう。

これが、ヨーロッパ風のノブレス・オブリージュなんだと思う。
お金に余裕のある人はお金を出す、体力がある人は、ボラインティアをする。
(ちなみにキリスト教信者は源泉徴収で収入の1割が問答無用で教会税としてとられ、全国の教会に分配されている。)
おかみが助けてくれる、または助け合い(互助)の日本とちょっと違う。

どっちがいいとか悪いという話ではない。
日本人の私としては、町に公務員の消防士と救急救命士がいないってどういうこと?!と思うけど、それで回るのなら、むしろすごいと思う。

職場も、緊急呼び出しがあれば、帰っていいよというのだ!
今日は少年サッカーのトレーニングなんで、早く帰りまーすが許されるのだ!

但し、この方法ができていたのは、やはり「ドイツ人」が多かったからではないか。
戦争で助けてもらったからと、多くの人が賛助会員になっていた聞いたけど、それって80代とかの人ってことでしょ?!
キリスト教的な価値観のない人(私みたいに、仏教系「自分のことは自分でしましょう!」な人)が移民として増えてきて、これまで通りのやり方でやっていけるんだろうか。

多民族社会ならではの新しいルールができていくのかもしれないが、過渡期であることには間違いないと思う。

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