【読書感想文】ベジタリアン 前編
【読書感想文】ベジタリアン 前編
ノーベル文学賞受賞作家・韓流作家ハンガンさんの「菜食主義者」(ベジタリアン)です。
※※本文には、ネタバレを含みます。※※
ユダヤ人・ハンナ・アーレントと親交の深かったメアリー・マッカーシーの「アメリカの鳥」のような社会文学、あるいは冒頭の方で、吉村萬壱さんの「ボラード病」のような作品かと思ったのですが、違いました。
一言であらわすのは難しいです。「サイコホラー」と言うのが一番簡単なのですが、「ホラー」というのは、作品の本質ではない。ハン・ガンさんは、エンターテイメントではなく、自身の何かを説明するために書かれたと思う。ウラジーミル・ナバコフさんの「賜物」に近い。
なので、私は物の価値が分からない人間で、おこがましいけれども、本作品はマン・ブッカー国際賞受賞作、ハンガンさんはノーベル文学賞受賞作家、妥当と感じました。
主人公は「ヨンヘ」という女性なのですが、彼女はある夢をキッカケに「植物になりたい」と願うことから、日本と同じく家族制の強い韓国において、その思いの強さが、家族を崩壊に導いていきます。
本作は、「菜食主義者」「蒙古斑」「木の花火」という三章に分かれています。
ひとつめの語りは、ヨンヘの夫・チョン
ふたつめの語りは、ヨンヘの姉・インへの夫
みっつめの語りは、ヨンヘの姉・インへ
「菜食主義者」では、ヨンヘが「ある夢を見た」ことをキッカケに突然菜食主義者になると宣言し、戸惑うチョンの姿が描かれます。世にいうベジタリアンは程度によって分かれますが、ヨンヘは鶏卵や脂も摂らない、徹底した菜食主義者に変貌します。
チョンは会社役員の妻を伴った食事会に招かれ、立身出世に興奮する「普通の男」。けれど、ヨンヘが何かに憑かれたように肉絶ちし、おまけに生来ブラジャーを付けないので、チョンの食事会での面子は丸潰れになります。
ヨンヘの実の両親に説得するよう頼みます。けれど、ベトナム戦争に出兵したことが誇りで元来粗暴の父親は、頑是ないヨンヘを殴り手足を押さえつけてまで肉を食べさせようとし、これに抵抗したヨンヘは果物ナイフで自らを人質にして流血する惨事に。
精神病院に送られたヨンヘは、チョンが見舞いに訪れた時、なぜか病院の庭でトップレスになり、「暑かったから」と言いました。
その手にはなぜか、縊死したメジロが握られていました。
https://youtu.be/499Z0Gb0Nxc?si=tWo97BcD7k67jOEQ