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【読書感想文】ベジタリアン 後編




【読書感想文】ベジタリアン 後編





ノーベル文学賞受賞作家・韓流作家ハンガンさんの「菜食主義者」(ベジタリアン)です。

カテゴライズするとすれば「サイコホラー」ですが、作者・ハンガンさんの絶望的なほどの孤独感と表裏一体の多幸感がある重厚な作品です。

※※このnoteにはネタバレがあります※※

チュクソン精神病院で、主人公ヨンヘは、ついに絶食状態となります。自分は木になるから、水を摂るだけで生きていけるようになるのだ。言語も思考もいずれ止まる。もう少しで。

ヨンヘの姉、インへは、チウの母であるために「妹のように」はなれないことに、フラストレーションを感じ始めています。

ヨンヘは寡黙ながら頑固で、父の「躾」と称した暴力の的になりやすかったことを思い返していました。対してインへは、物分かりの良いよい子。それはつまり、ヨンヘの良い姉であるよりも「卑怯」であったこと。

チュクソン病院へヨンヘの見舞いに行く他、仕事と育児のストレスか、インへは不正出血するようになりました。病院に行くと、ポリープが原因と明かされ、彼女はホッとするよりもむしろ「まだ生きなければならない」事に、絶望を感じています。

※※ 本文から ※※

彼女の声が大きくなる。

そのベッドで横たわって、実は死んでいくだけじゃない。それだけじゃない

※※ ※※ ※※  ※※

妹ヨンヘが夢に浸れることを羨ましく、恨めしく感じながら、ヨンヘが現実でどれだけ滑稽に見えているかも、インへは感じています。

そして彼女はチユの母であることの責任からも、逃れられません。

ヨンヘは、比較的症状が軽くガタイの良いヒジュに入浴の介助を受けるなど、世話になっています。食事を受け付けないヨンヘの症状はいよいよ悪くなり、ついに集中治療が必要と判断されチュクソン病院にもいられなくなりました。

涙を流してヨンヘを案じるヒジュを抱きしめたくなるも、インヘにはそれが出来ません。現実に愛着があることを示すようなシンボリックな言動を、インへもが、取りづらくなっているのです。

※※ 本文から ※※

こう?こうしたからママが笑った?

チウ(インへの息子)はそう言って、少し前の行動を繰り返し始める。口を尖らせて額に角を作ったり(略)

彼女が笑うほどチウのおかしな行動はエスカレートする。そうした子供の必死の努力が、むしろ彼女に罪悪感を呼び起こし、彼女の笑いが結局は薄れてしまうことをチウが理解できるはずがない。

 (略)

「それはね」

彼女はふと口を開いてヨンヘにささやく。

「もしかしたら夢かもしれない」

返事を待つように、いや、何かに抗議でもするようなか、彼女の視線は暗くて粘り強い。

※※ ※※ ※※  ※※

妹が本気で木になることを、望んだら?


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