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ストーリージェニックな名刺の作り方 〜レタッチャー 大谷さん編〜
今回は1つのDMから物語は始まった
ちょうど前回の記事 (〜るってぃさん編〜) を書いているときに、1通のDMが届いた。おもむろにDMを開けてみると、Twitterでいつもお世話になっているレタッチャーの大谷さんからでした。
セミナー用に名刺を改めて作ろうかと検討中なのですが、ニシグチさんにデザインから印刷までお願いする事ってできたりしますか?
正直「まさか、あの大谷さんの名刺をデザインさせていただけるとは、有り難きしあわせ…」といった感じでした(笑)というのも、私がTwitterで大谷さんを見つけたときから「この方のレタッチは本当にスゴイ!」とずっと思っていたので、感無量なわけです。私のように小手先で画像処理をしているデザイナーにとって、大谷さんはまさに「神のような存在」でもあったのでした。ちなみに"レタッチ"とは、下記の意味になります。
画像の色の補正や汚れの除去、合成といった画像の修整や加工作業のこと。印刷写真業界ではフォトレタッチと呼ばれた。フォトレタッチソフトの代表的なものにアドビ システムズ社のPhotoshopがある。
※ASCII.jpデジタル用語辞典より引用
大谷さんのレタッチのスゴさは、noteを見るとすぐにお分かりいただけると思います。まだ大谷さんのことをご存じないという方がおられましたら、是非ともこちらをチェックしてみてくださいね!
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職業である"レタッチャー"について考察してみた
おかげさまで大好評の「ストーリージェニックな名刺の作り方」シリーズ。記念すべき第1回目は「フォトグラファー」でチェキ風、第2回目は「プロ無職」で無色(無職)透明の名刺でした。そして、今回である第3回目は「レタッチャー」・・・んっ!?レタッチャー??
さらに続けますと、心の中ではこのような感じになっています。
「フォトグラファー」=「カメラ」、これは分かる!っていうか明瞭でわかりやすい。「プロ無職」=「無色(無職)透明」、これは確かに難しかったけど、すでにアイデアがあったので、割とスムーズにことが運んだ。そして今回は「レタッチャー」という職業。レタッチャーって、画像の修正や処理作業の仕事なので、この職業を表現するのって結構難しくないかこれ!?ヤバい!これはかなりハードル高いかもしれんぞ!ヤバいよヤバいよー!!
私はデザインを生業にしているので、"レタッチャー"という職業(言葉)は普段から当たり前のように聞いているわけですけど、ふと「世間の人は、果たして"レタッチャー"という職業を知っているのかな!?」という疑問が湧いてきました。
思い立ったら吉日ということで、「"レタッチャー"ってどんな職業かわかりますか?」という質問を、私の周りにいる人(30人ほど)にぶつけてみたところ、デザイン業界に身をおいていない方は"レタッチャー"という職業をほとんど認知していないということがわかりました。
ここで明るみになった"レタッチャーという職業があまり認知されていない"という事実。今回の名刺デザインにおいては、このあたりを丁寧にデザインしていく(問題を解決していく)ことが、とても重要になってくると肌で感じました。
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名刺の機能は、"相手に印象を残すためのツール"である
ここからが本番になるわけですが、名刺のデザインをお見せする前に、名刺自体の考え方について、少しだけお付き合いいただければと思います。世の中には"名刺不要論"というのもありますので、あくまで個人的な意見として以下の内容は捉えてもらえればと嬉しいです。
私が考える名刺の機能は「相手に印象を残すためのツール」としています。この中での"印象"というのは、自分の職業や自分ができること、自分の得意(好き)なものなどを指しています。
この"相手に与えるべき印象をいかにしてデザインしていくか、そのためにはどのような表現方法が最適であるのか"といった部分を考えぬくことこそが、本来追求するべき"デザインの本質である"と考えています。これは名刺のデザインに限らず、デザイン全般に対して言えることだと思います。
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レタッチャーという仕事を"わかりやすく、カッコ良く"デザインする
前述したことを整理しながら企画提案書をデザインしていきました。今回の名刺デザインは、"レタッチャー"という職業をいかにしてわかりやすく、カッコ良くデザインしていくか"に尽きると思います。なので、インパクトを重視せず、あくまで機能性を重視するかたちで進めていくことにしました。
今回この"カッコ良く"という部分をプラスしたの理由は、大谷さんのプロフィール写真から感じる印象と、レタッチ後の成果物(写真)を見て感じる印象に起因しています。大阪人で言うところの、いわゆる「シュッとした感じ」と言う部分をプラスして表現するということですね。
ただ、このいわゆる「シュッとした感じ」だけになってしまうと、デザイン的には何も面白くもないので、実際にレタッチされた写真(仕上がり前-Before-と仕上がり後-After-)を実例として名刺に掲載することが、何よりもわかりやすくなるのではないかと考えました。
このあたりのデザインプロセスも合わせてこれから解説いきたいと思いますので、実際の企画提案書と合わせてご覧ください。企画提案書の内容をもとにブラッシュアップしています。
①会社の事業内容
大谷さんの会社の事業内容としては、このような感じでした。
広告事業における画像制作、画像処理、写真修正、写真加工のレタッチ業務全般。web・雑誌・ポスターなどのメインビジュアルデザイン、広告ビジュアル制作デザインコンサルティング。セミナー講師、オンラインレタッチスクール運営。しっかりと内容を把握して、訴求すべきポイントを整理していきます。
②課題
前述しているように、比較的わかりにくい"レタッチャー"という職業をどのようにして表現していくかというのが、今回の課題の中心となります。"レタッチャー"という仕事は、基本的にパソコンを使っておこなう作業であり、最終的には成果物(写真)としてデータ納品することが主となるため、職業を具体的に表現することはかなり難しくなります。"レタッチャー"という仕事内容を一度分解してみて、比較的わかりやすい(伝わりやすい)部分を名刺の中で表現することで、"レタッチャー"という職業を覚えてもらえるきっかけとなると考えます。
③解決策
1)ビジュアル表現(画像)を多く入れるため、名刺の面積を広くする
大谷さんが制作した成果物(写真)を名刺の中面で表現することで、実際に名刺を広げたときに"レタッチの仕事をしている"ということが人目で見でわかるよう「二つ折り仕様」にしました。また"Before"と"After"をセットで見せることにより、レタッチ後の違い(効果)をわかりやすく表現することができます。また、3つのテーマ「衣・食・住」の写真をセレクトすることにより、大谷さんがカバーできるレタッチの幅の広さも合わせて表現しています。
2)"Before"と"After"の2面性は、表面でもモノクロとして表現する
二つ折りの仕様にしているため、名刺を渡すときは畳んだ状態となります。つまり、中面の成果物(写真)が見えないモノクロのカッコ良い状態で、相手に名刺を相手にお渡しすることになります。中面が見えないが故に、変なアピール感を抑えることもでき、相手が名刺を手に取って広げたときに、はじめて中身が見ることができるので、そこから話が生まれるという導線設計にもしているところが特徴になります。
3)デジタル表現に合わせたフォント(書体)を使用する
レタッチの作業はデジタル上で行われているので、フォント選びもかなり重要になってきます。今回セレクトしたのは「スマートフォントUI」フォントという、今っぽい(現代風の)雰囲気を演出することができる、読みやすさを重視したデザインフォントにしました。
4)紙質を発色と手触りが良いものにする
今回は二つ折り仕様になるため、実際に手に触れる部分が多くなります。そのときに「触っていて気持ち良い」「高級感を感じることができる」と思ってもらえるような肌触りの良い「マシュマロ209g/㎡(180Kg)」という紙を使用しました。実際に触った感じがとてもスベスベで、鮮やかな色彩でグラフィックがかなり引き立つ用紙なので、個人的にもお気に入りの用紙になります。
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大谷さんが近々"独立3周年を迎える"ということを偶然Twitterで知る
ここから話は少し違った方向へと進んでいきます。
デザインを進めていたある日、いつものようにTwitterのタイムラインを眺めていると、大谷さんのひとつのツイートが目に留まりました。
(以下、私の心のつぶやきをお楽しみください)
へぇー、大谷さん独立されてもう3年にもなるんや。やっぱりすごいな、大谷さん半端ないしな…しかも8月1日って…あと10日ほどやん……ちょ、ちょ、待てよ!(←イメージはキムタク風)急いだら間に合わなくもないやん!8月1日に届けることができたら、めっちゃ喜んでもらえるやん!!
>今年の8月1日で独立3周年
もともと納期的には「8月上旬だと助かります」と言っていただいていたので、スケジュール的にはもう少し余裕があるかたちでしたが、またもや"思い立ったら吉日"&"スピードはクオリティーの一部である"(←前回のnoteをご覧ください)とのことで、翌日にあった予定をキャンセル(延期)し、大谷さんの名刺のデザイン制作に力を注ぐことを、その場で心に誓ったのでした。
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相手に届けるまでがデザイナーの仕事
私はいつも、自分がこうされたら「嬉しいやろうな」「ビックリするやろうな」「感動するやろうな」という視点を持つようにしています。これは「自分がされて嬉しいと思うことを、相手にしてみる」ということに尽きます。つまり相手の視点に立って物事を考え、捉えるということです。
私は自分の大切な記念日を覚えてもらえてると嬉しいですし、感謝のメッセージや手紙が同封されていると嬉しいですし、そこに(大阪人だからか)ユーモアやボキャブラリーがプラスされていれば尚嬉しいです(笑)そもそも嬉しいことをされて嫌がる人間なんか世の中にいないと思っています。
そこで、今回は御祝いの品物と一緒に名刺をお届けししようと考えました。熨斗紙もプリントアウトして包装しました。(この辻利のわらび餅、めっちゃ美味しいんですよ)このあたりは百貨店のインハウスデザイナーを10年やっていたこともあり、品物の選定や熨斗紙の知識、包装技術などはデザイナーのくせに珍しく搭載されているのです(笑)
その写真を撮るのを忘れていたのですが、ちょうど大谷さんが御礼ツイートをしてくださいましたので、是非見てみてください。(もう大谷さんの胃袋の中でしょうけど 笑)
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レタッチャー 大谷さんに感謝を込めて
名刺をお届けした日(8月1日)に、大谷さんからいただいた御礼のメッセージを頂戴しました。そして最後の一文は、以下の言葉でしめくくられていました。
本当にありがとうございます。。本当に感謝です。。感動です。
こんな言葉をいただけると、デザイナーやってて本当に良かったって思える。人の役に立てているということを実感することができる。
そして、明日もがんばろうって思える。
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〜あとがき〜
今回はタイミング良く自分がデザインした名刺で御祝いできたのは、とても嬉しかったです!今回のお題は正直難産だったので、個人的にもとても勉強になりました(笑)
次なるストーリージェニックな名刺、ズバリ職業は「WEBデザイナー」です。果たしてどんなデザインになるのか、乞うご期待です!
改めまして大谷さん、独立3周年おめでとうございます!
これからのますますのご活躍、楽しみにしております!!
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写真は宇野真由子さん(UNO photo works)に撮影いただきました。今回もステキな写真をありがとうございました。
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