「Let's Build a Zoo」アイロニカル動物園経営シミュレーション
※半年前に書いたのに公開するの忘れてました。
はじめに
2021/11発売の動物園経営シミュレーション、「Let's Build a Zoo」が面白かったのでレビューを書く。ありがたい事に、発売時点から公式で日本語に対応している。にも関わらず、2021/12現在では攻略wikiも5chのスレも無いような状態なので、宣伝も兼ねて記事にしようと思った次第だ。
(追記:2022/5現在ですら攻略wikiもスレもない模様)
このゲームの特徴
・可愛らしいドット絵調の見下ろし2Dシミュレーションゲーム。
・「ヴァリアント」という柄のようなものが各動物に10種類ほど存在し、新たなヴァリアントは交配の組み合わせで生まれてくる。
・スゴいDNAテクノロジーによってスプライシング(キメラ)やクローンが作れる。「ヴァリアント」との組み合わせで、動物の種類は30万種を超えるとのこと。
・ランダムに発生するイベントで、動物をペイントして珍しい動物に見せたり(クマを塗ってパンダにするなど)、またそっくりなロボットにすり替える事でエサ不要で永久に生き続けさせることもできる。
・モラルという概念があり、善と悪のポイントによって使用できる施設が異なる。善ルートでは農業やオーガニック食品の販売、悪ルートでは工場を建設し飼育している動物を屠殺し、製品を作ることができる。ポイントはそれぞれプレイヤーの行動で蓄積される。
・土産屋や軽食店も設置でき、利益を得られる。塩分や化学調味料の量のパラメーター、品質と価格のパラメーターが設定可能。
レビュー
動物園経営シミュレーションというと、有名なのは「planet zoo」だと思う。わたしも購入して少しだけプレイしたことがあるが、比較すると3Dマップではないので多少の自由度やリアリティの点では劣るものの、ヴァリアントの発見やキメラの作成と、工業或いは農業の発展に重点をおいているため、逆にとっつきやすいと感じた。近年の自由度が高すぎる経営シミュレーションに尻込みしてしまうわたしのような人にも安心してオススメできる。
このゲームの魅力はなんと言っても可愛らしいドット絵のグラフィックとは裏腹にどことなく毒のある雰囲気を漂わせていることだ。
動物のクローンやキメラの作成を行う時点で真っ当な倫理観はとうに置き去りにしているが、ピザ屋のバジルを減らしてレタスを増やし、唐辛子で味を誤魔化したり、シェイクの中身からミルクを抜いて水と液糖で誤魔化して高い利益率を出すこともできる。全体で見ればショップの収入など微々たるものだが、こうした細かい設定項目がある事に思わず苦笑いしてしまう。
わたしが初見で右も左も分からずプレイした時はモラルポイントがマイナスになり悪ルートに突入したが、こちらのルートではどうやらプロセッサーを使って生き物の死骸を回収、そこから肉食獣用の餌を作ったり、豚からベーコン、蛇からヘビ皮を作る事ができるのが特徴のようだ。
さらに発展すると「間引き」を行う施設もアンロックされる。増えすぎた動物を安楽死させる手間を省く代わりに、檻の中がジェノサイドの現場になってしまう施設だ。
現実の価値観を持ち込むと、動物園でこれらを行うのはだいぶ倫理的に問題があるように感じるが、ゲームなのであえてヴィランに徹してみるのも楽しい。動物園を経営していたはずなのに、整然と並ぶ工場と生み出す利益の数字に不敵な笑みを浮かべてしまう。
このモラルの概念により相反する2つの発展の方向性があるのが、他の経営シミュレーション系ゲームには無い大きな特徴だ。
尤も、これらの要素は犬猫をはじめとした愛玩動物の過剰な見た目至上主義に起因する遺伝子操作や、鶏卵・鶏肉の大量生産の現場など、一概にも「ゲームの中だけの倫理を逸脱した行為」とも言えないところがある(これらが悪だと主張する意図は無いと断りを入れておく)
このゲームの仄かに香る毒気は、現実に対するほんの少しの皮肉になっているように思う。
まとめ
まだ発売されたばかりという事もあり、来場者数は1日8000人前後、資金は9999999でカンストし、デコレーション点も加味するとマップが小さめなど、気付けば数百時間プレイしている事が多いこの手のゲームとしては少々ボリューム不足に感じるなど気になるところはあるものの、アイデア・基礎的な部分としてはかなり面白いと感じた。今後のアップデートにはとても期待したいところだ。