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令和世代に語り継ぎたい映画100選「お熱いのがお好き」
この項、最初に取り上げる映画は1959年作のアメリカ映画「お熱いのがお好き」
映画のジャンルとしては「コメディ」
もっと峻別するとドタバタコメディとかハートウォーミングコメディという感じの作品です
アメリカ映画協会(AFI)の名画100選ではたびたび上位に選出され、1959年の米アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞(ノミネートのみは監督賞、主演男優賞、脚色賞、撮影賞)、ゴールデングローブ賞(コメディ部門)では作品賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞した名作
制作は”1959年”ですが、作品の舞台となるのは禁酒法時代の「1929年」のシカゴ
1930年代に流行ったギャング映画へのオマージュに満ち溢れており、悪の親玉・スパッツ役を演じたのが1930年代のギャング映画の代表作「暗黒街の顔役」に出演していたジョージ・ラフトなのもそんなオマージュ的なひとつなのであろう
舞台となるのが今から考えるとおよそ100年前の出来事
古臭いと感じるのも当然でしょう
しかしこの映画はLGBTQの先駆け的な面も持っている先進的な映画
(と、勝手に思っています)
その醍醐味は映画を見て、ラストのセリフを聞いた時に譲るとして先に進めましょう
前述の通り、映画の舞台となるのは1929年
ギャングが幅を利かせる禁酒法時代のシカゴ
主役となるのはグランドキャバレーの楽士・サックス奏者のジョー(ミッキー・カーティス)とベース奏者のジェリー(ジャック・レモン)
偶然、ギャングの抗争による殺人現場を見てしまった二人
ギャングからの追跡を逃れるために取った作戦は…
女性に化けて女性だけの楽団に潜入し、シカゴを離れること!
そんなのひと目でバレるだろう、などと言わずココだけ見逃せれば間違いなくこの映画を楽しめますw それに次第にジョセフィンとダフネが女に見えてくるから不思議です
無事、女性楽団に潜り込んだ二人。フロリダへと向かう列車の中、有名なマリリンモンローの「Runnin’ Wild」の歌唱シーンから映画のテイストが一気に変化します
このフロリダ行きの列車シーンは見どころ満載で、まず乗り込む前のひとくだりから面白い!
言葉のやり取りで笑わせたかと思ったら、マリリンモンロー登場!
(蒸気が吹き出すなど秀逸なアイデアも満載!)
ミュートトランペットを使用した曲が最高にマリリンモンローを可愛くみせてくれます(この後もモンローのテーマ曲のようにたびたび登場します)
そして前述「Runnin’ Wild」の歌唱シーンで笑いながら見惚れてしまい
その夜のコンパートメントパーティへとなだれ込みます
何故1人用のコンパートメント(寝台)の10人近くが集まって飲み会をするのか?などとツッコミたい気持ちが湧き上がる前にテンポの良い演出とリズムで映画の世界に持ってかれてしまいます
列車のシーンを境にいったんギャングに追われていることはいったん忘れ
コメディシーンの連続に突入
フロリダに到着するとそこにいたのは金持ちのオジサマたち
いわゆる富豪の保養地として当時は有名だったのでしょう
そんな富豪のお眼鏡にかない、玉の輿にのりたいと願うモンローたち
そしてここからは”恋の複雑関係”で笑わせてくれます
老富豪(ジョー・E・ブラウン)にアタックされまくるダフネ(レモン)
富豪の子息に化けシュガー(モンロー)をモノにしようとするジョセフィン(カーチス)
そんなジョセフィンにナンパをしてくるホテルのボーイ…
その夜のショーはこの映画でいちばん有名な「I Wanna Be Loved by You」の歌唱シーン。モンローのプ・プッピィ・ドゥ!の可愛さといったらないです
そしてその後のタンゴのシーンもこの映画最高の見せ場です
その後、恋の行方 のコメディパートとともにギャングも再登場し
一気にクライマックスへ
この辺の詳細は伏せますが、ラストの名セリフまで怒涛の見せ場が続きます
30年代のギャング映画、サイレント映画や40、50年代の珍道中映画やなどに代表されるアメリカンコメディ映画へのオマージュ(カメラ目線でセリフを言うシーンやエレベータの階数表示のギャグ、道中のカーチス&レモンのセリフの応酬など…)が今としては古臭く感じる演出も多いが、この辺は過去の名作を観れば観るほど”なるほど!”と感心・感動してしまう部分なので他の名作に触れるきっかけになればと思います。
そしてこの作品そのものは、今見ても色褪せることの無い笑いの精神に満ちていて隅から隅まで楽しめる傑作です
そして最後の名セリフ
「Well, nobody's perfect.」(完璧な人はいないよ)
このセリフを是非堪能してもらいたいです
【ちょっと豆知識】
ちなみに映画のタイトル(原題)「Some Like It Hot」は
マザー・グースの『Pease Porridge Hot(英語: Pease Porridge Hot)』(熱々の豆がゆ)の一節に由来するらしく
「お熱いのが好きな人もいれば 冷たいのが好きな人もいる…」というように人それぞれ、いろんな人がいる(大雑把な訳です)という意味で
ラストのセリフ「Well, nobody's perfect.」(完璧な人はいないよ)ともどもこの作品のテーマ、モチーフに基づくタイトルのようです
またこの当時、すでにカラー映画がメインとなっていたのに映画がモノクロで撮影された理由はジャック・レモンとトニー・カーチスの女装姿がキワモノっぽく映らないようにという話ですが、それ以外にも時代(1920年代)を感じさせるためなど計算し尽くされた結果なのは、映画を見終わった人ならわかることでしょう
この映画の名シーンとも言えるププッピドゥソング
「I Wanna Be Loved by You」ですが
マリリンモンローの代名詞のように扱われることが多いですが、最初に歌ったのは 1928年、当時の人気歌手で女優のヘレン・ケインで、彼女を基にアメリカンキャラクターである”ベティブープ”が創作された逸話がある