第17回 「日本からカニが消える?!富山の紅ズワイガニ漁獲量減少について」
かの文豪・太宰治も愛したという日本が誇る海の幸「カニ」。
今や日本の食卓には欠かせぬものとなったカニであるが、漁師たちは現在その漁獲量に頭を悩ませているという。最初に悲鳴が聞こえてきたのは、言わずと知れたカニの名産地・富山県だ。
カニの中でも「紅ズワイガニ」と呼ばれる種が富山県では代表的である。この種の漁は1950年代から本格化し、当時は単に「赤ガニ」と呼ばれていたものをある種ブランド化することで富山は今の漁業県の座に就いた。
これは富山県の紅ズワイ漁獲量の時代推移を示したグラフだ。1966年頃には、紅ズワイの漁獲量は2,000トンに迫る勢いだったが、1996年頃にはその4分の1程度までに減少してしまっている。漁獲量が著しく増加したのは濱田虎松氏(はまだ・とらまつ)考案の「カニかご漁法」と呼ばれる効率的な収穫法が確立されたことによるが、その影響もあって県は今後の資源保護を考え、厳しい規制を敷いた。
(写真: カニ籠を使った漁の様子)
しかし、規制を敷くタイミングは一手遅れていたかも知れない。紅ズワイは成長が特段遅いことで知られており、ひとたび乱獲されてしまうと生態系の再生には幾星霜を要する。成長過程の個体が抜け出せる構造のカニ籠や、禁漁区の設定など多くの対策が講じられているが、その成果を確認するにはもう少しの辛抱が必要そうだ。
一つここで言及しておきたいのは、紅ズワイの存在価値は単に食用だけではないということだ。最近、甲殻類の殻に含まれる「キチン・キトサン」という動物性食物繊維が食バランスを整えるとして、注目を集めている。その活用法は現在も研究が進んでおり、サプリメント等だけでなく、化粧品・農業製品などにも適材であるという。
(写真: キチン・キトサンのサプリメント)
唯一無二の絶品海の幸としても勿論、健康物質の源泉としても我々の生活に必要不可欠な紅ズワイガニ。我々はそんな宝ともいえるカニの生態系の存続が危ぶまれていることをしっかりと認識し、今一度自然との「共生」を考えていかなくてはならないだろう。
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参考文献
- 富山県: 『⑵ ベニズワイ』, http://www.pref.toyama.jp/branches/1661/suisan/21zuwaigani.htm
- 北日本新聞: 『「ベニズワイ(上)資源管理」 漁業者が回復に挑戦』, 2003年3月20日, http://www.pref.toyama.jp/branches/1661/suisan/no19.html