第28回: 2022年カタールW杯は奴隷制の産物!逃げられない「カファラ制度」と劣悪な労働環境
ホカホカ白米と パリパリの海苔。おかずとして白身魚のフライ。
日本人ならば誰もが愛してやまない「のり弁当」。
その原点は、高度経済成長期におけるブルーワーカー向けの安価な弁当の特需である。手早く作れて、しかも美味しいという特徴は、作り手にとっても、無論買い手にとっても大きなメリットであった。まさに現代日本の礎と言えよう。
しかし、逆に言えば当時の日本のブルーワーカーたちはたとえ安価と言えど、弁当を無理なく購入できる程度の賃金を得ていたということである。
(写真: 経済成長の象徴・東京タワーと当時のブルーワーカー)
ただ残念なことに、この現代にあっても、のり弁当にすら手が届かないほどの劣悪な環境での労働を強いられているブルーワーカーは存在している。それが顕著に観測できるのが、カタール、特に2022年のサッカーW杯に向けたスタジアムの建設現場である。
カタールの労働環境についてはこれまで度々議論されてきた。その劣悪さの一つの要因として、労働者のほとんどが外国からやってきた出稼ぎ労働者によって構成されている点が挙げられる。自国民ではないという蔑視が無賃金や、酷暑にも関わらず水を飲むことすら許されないという地獄を生み出しているのだ。
(写真: スタジアム建設現場で働く肉体労働者)
そうした惨状にあって、なぜ出稼ぎ労働者たちはカタールを去らないのか。そう思った読者の方々も多かろう。しかし、彼らはそれを”しない”のではない、”できない”のである。その背景にはカタールでは慣習となっている悪魔的契約の存在がある。
その名も「カファラ制度」。この制度の下では外国人労働者のビザは雇用主の支配下に置かれ、退職するにも、国へ帰るにも、許可なしにはできないのである。まさに奴隷制度そのものだ。
しかし、ワールドカップ開催地に選ばれたことで、その制度を含め、カタールの酷い労働環境は国際的な批判を浴びた。それを受け、同国政府はカファラ制度を廃止することを正式に決定した。
だが、問題なのはその成果を我々は中々感じ取ることができない点だ。たまたまW杯という世界的注目度の高いイベントの建設が行われるために、その労働環境にスポットライトが当たったのであって、ほとぼりが冷めれば元の木阿弥、となってしまうのであれば意味がない。
我々はW杯を楽しみに待つことは勿論だが、その開催を支えてくれている労働者がどのような環境で働いているのか、ということからも決して目を離してはいけない。彼らがのり弁当を安心して食べることのできる世界が必要なのだ。絶対に『手弁当』でスタジアム建設、などという事態を引き起こしてはならない。
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【余禄】
今回のテーマは「ワールドカップ」と「のり弁当」でした。いや〜記事の方針立てるまで大変でした。だって全然関係ないんですもん。結果、あの強引な導入になったわけです・・・
私がやっている企画に関しては以下の記事をご参照ください。
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参考文献
- 池田恵理: 『昭和の食文化、のり弁当。 今後の行方は・・・』, 2019年1月31日, https://news.yahoo.co.jp/byline/ikedaeri/20190131-00052230/
- 伏見香名子: 『「労働者のためのW杯」に見る現代の奴隷制』, 日経ビジネス, 2018年6月27日, https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/100500021/062200019/?P=1
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