牡牛座の言葉ー湯浅 誠~人の安全が私の安全につながる
心理占星術家nicoが選んだ今月の言葉は...
牡牛座の言葉
1969年4月23日 東京生まれ。太陽、水星を牡牛座に持つ。
社会活動家、政治学者。特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。反貧困ネットワーク事務局長、内閣府参与(緊急雇用対策本部貧困・困窮者支援チーム事務局長、内閣官房震災ボランティア連携室長、内閣官房社会的包摂推進室長)。2019年より東京大学特任教授。2008年末に日比谷公園で行われた「年越し派遣村」の”村長”としても知られる。著書に「反貧困―すべり台社会からの脱出 」「ヒーローを待っていても世界は変わらない」などがある。
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世に出回っている12サインの考え方は、果たして本当に現実を物語っているのだろうか。もしかしたら、12サインの意味を狭い範囲に押し込めて、せっかくの可能性を台無しにしてしまっているのではないだろうか。そうだとしたら、自己の人生を本気で生きている人たちから12サインを生きるヒント、それぞれのサインを輝かして生きるヒントを探ることができるのではないだろうか。これが、私が「今月の言葉」を通して検証してみたいと思っていることだ。
「今月の言葉」を書き始めて5年が経つ。SNSのおかげなのか、そのせいなのか、象徴の断片的な言葉ばかりが先行し、その背景にある多面的なプリズムのような色合い、意味合いが失われていっているように感じることが多くなった。
特にここ最近、「ほんとうにそのような言葉で、そのサインの魅力を片づけてしまっていいのだろうか?」という強い疑問ばかりが頭をよぎるようになった。
牡牛座はその代表だ。たいていの占星術の本に「牡牛座は“五感を満たす” “きれいなものを愛でる” “心地よさを大切にする”といったことを意識して過ごすといい」などと書いてある。たとえ、それが太陽サインの牡牛座であってもだという。
太陽という恒星の壮大なエネルギーを使って?
ただ五感を満たせばいいというのか?
本来、恒星である太陽は、他の銀河まで輝きを放ち、その光を届けるわけだから、ホロスコープにおける太陽も同様に太陽=私の光によって、他の銀河=他者を楽しませ、喜ばせ、貢献的に利用されるエネルギーとなるはずである。決して、自分だけが満足すればいいというエネルギーではない。
そこから、今月の言葉、牡牛座の湯浅 誠氏の言葉を考えてみたい。
牡牛座はゾディアック2番目のサインであり、不動サイン・地エレメント。「I have=私は所有する」がテーマであり、自分に備わった“所有=価値”の実感により、自己/自己価値を大切に扱い、その安全を保持し、自分のリソースがより豊かになるための行為に勤しむ。
太陽サインが牡牛座の場合、太陽の光が届く範囲によって、つまり公的活動の範囲によって、どこまでを自分のリソースと感じ、どこまでを慈しみ、どこまでの安全を保持するために活動するかが変わってくる。
よって、活動範囲が狭い牡牛座太陽の持ち主は、「私の空腹を満たす」ためだけに太陽のエネルギーを使うことになるだろうし、学生時代から公的活動を続けている湯浅氏のような人の場合、牡牛座太陽の活動とは、日本全体の人的価値を自分/社会のリソースとみなし、生活がままならない貧困者の空腹を自分の空腹のように感じ、居ても立っても居られなくなるということになる。
日本の貧困者の暮らしに必要なものを考えることは、私の暮らしに必要なものを考えることと同義であり、私の安全を守ることと日本の子供たちの安全を守ることも同義となる。これが牡牛座・太陽の活動の広がりの一例である。
湯浅氏は言う。
自分がつくったわけでもない社会システムのおかげで教育や医療、公共機関などを利用させてもらって生活している。にもかかわらず、そのシステムからこぼれ落ちてしまった人に対して「自己責任」として責め立てる人たちがいる。
では、いったいこの社会は誰のものなのだろうか。
社会制度を自分のリソースとして利用するのだとしたら、うまく機能していないもの/人も自分の大事な財産として捉え、価値として扱い、育て直していくことができるのではないだろうか。それが牡牛座的な太陽=クリエイティビティの能力の一つとなるのではないだろうか。それにより安全が確保できる人が一人でも増えれば、自分の太陽の光の届く領域が一人分、明るく幸福なものとなるはずだ。
2021年の牡牛座期は、そのように世界を捉え直してみたいと思う。世界は美しいほうがいいし、「社会は損」をしないほうがいい。ゴミは少しでも少なく、空気はおいしく、困っている人はできる限り少ないほうがいい。なぜならここは私の住む世界でもあるのだ。もし、目をそむけたくなるような出来事に遭遇したときは、しっかりと現実を見つめ、自分に何ができるか少し考えてみたいと思う。人の安全が私の安全につながるように。