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2023年に実施したことまとめ(社内編)

小さな会社の慎ましやかな1年間の取り組みを、どうぞご笑覧ください。

1.自社の状況(2024年1月)

当社は大阪に本社がある創業75年目の医療機器製造業です。機器事業と消耗品事業の2つの事業部があります。
機器事業部の主力製品は哺乳瓶の洗浄機、滅菌機です。国内で唯一、病院での調乳に関わるすべての製品を提供しています。設計、製造、販売、アフターサービスを自社で一貫して行っています。
消耗品事業部ではクリーンルームで注射薬容器、哺乳瓶を洗浄滅菌し販売しています。

社員数は50名弱、売上は5-10億円の間です。
2017年からkintone、slack、2021年1月からGoogleWorkspaceを導入しました。2023年からはjinjer勤怠、楽々精算を導入しています。
ISO9001・ISO13485(医療機器)を取得しており、品質文書はほぼすべて様式・台帳管理がされています。
私は2020年1月から専務取締役・消耗品事業部長、2022年11月から機器事業部長兼務となり、全事業部の責任者となりました。

2.紙のタイムカード&給与明細の廃止

毎月15日の勤怠締め日を過ぎた後、全社員の勤務時間を集計し、顧問社労士さんに給与計算を依頼し、紙の給与明細を印刷、発送頂き、25日には社員の手元に届ける。

経理部の義母が、何十年も責任をもって、休日出勤してなんとか間に合わせていました。
ですが、義母も60歳を超え後任を探す中で、この仕組みでは引き継げないと考え、長年依頼していた顧問社労士さんも変更した上でタイムカードをjinjer勤怠に、給与明細をWEB明細に変更しました。
これはマンパワー不足の中、経理部長が意思決定をし経理部内でシステムの仕様を固めていきました。(システム構築には妊娠中の妻さんの力を最大限活用)
システム化はこれまでなぁなぁだったルールを明確にするため、出張規定や、出勤時間などを見直し、出来るだけ社員に良い条件になるよう役員を中心に話し合いました。※まだまだ改善の余地ありです。

システム化でこれまで手書きですぐ修正できたものが、逐一入力しなければならなくなりました。全体の手間が減ったか、と言われると微妙な部分もあります。
しかし、結果的にタイムカード押し機はなくなり、管理職が行っていた集計作業もなく、経理部が土日に出勤する必要もなくなり、持続可能な仕組みに変更することが出来、無事に義母から新しいメンバーに引き継ぐ事ができました。

さよならタイムカード

ちなみに、去年のnoteで書き漏れていましたが、昨年末に楽楽精算を導入し、経費申請のデジタル化も完了してます。(恐ろしく苦労しながらも)インボイス対応も実現し、経理部はこの1年半で大きくデジタル化を成し遂げました。
「環境は変わる。自分たちも変わらないといけない」と弊社の経理部長が全社集会で強く述べていたのが印象的です。

3.3Dレイアウト作成ツールの導入

当社は調乳機器の製造販売だけでなく、お客様へ調乳室レイアウトもご提案します。これまでは営業がお客様へヒアリングし、それを設計に伝え、設計が2DCADで作図してお客様に提出していました。
3Dレイアウト作成ツールを導入して、営業側でヒアリング内容を一度3Dデータに示し、お客様に提案できました。
この3Dデータの制作過程で営業と設計間でレイアウトの設計思想を共有できましたし、なによりお客様への提案スピード、クオリティが上がりました。営業がこの提案数をもっと増やすことが2024年度の部門目標です。

4.機器事業のkintone化

2022年11月から機器事業部長に就任したことで、機器事業の技術部門のkintone化を進めました。

①図面管理アプリ

これまでエクセルで管理していた図面登録台帳をkintone化しました。
図面にハンコを押して承認→PDFスキャンして保存するのではなく、kintoneアプリ側で図面PDFが保存されたレコードを承認することで、編集不可にし、そのデータのファイル名が(承認済み)に変更されGoogleWorkspaceの共有ドライブの特定フォルダに保存される、という仕組みを作りました。
この結果、承認プロセスが早くなり、設計G以外にも承認済み図面の保管場所がわかりやすくなりました。
これは元々設計Gのあるメンバーが「Python使って、スキャンした図面名をOCRで読み取ってファイル名にするコード書きました!」と報告してきたので、「それするくらいならkintone化させて!!」と言って取り組みを始めました。やって良かった。

②受注案件の設計・製造計画アプリ

受注した案件の設計・製造計画を作成し、その進捗を管理するアプリを作成しました。これで、機器事業の受注から納品までのプロセスがすべてkintoneでつながりました。
また、先の図面アプリによって、承認済み図面とも連携できたことで、案件をお客様側の情報だけでなく、製品情報とも紐づけることができました。

設計製造計画アプリにより、案件情報がkintoneに一元化できた。

このアプリは設計Gの若手が80%作ってくれました。とても嬉しい。

③機器保証書の出力アプリ

機器を納入するときに手書きで作成していた納品書をkintoneに入力された情報を呼び出すことで押印済みの保証書が出力できるようになりました。
この結果、10冊ほど残っていた手書き伝票は廃棄されました。

廃棄される手書き伝票

5.組織変更

2023年11月、当社の新年度とともに組織変更を行いました。

①経理部を経営企画部へ

当社の管理部門は経理部という名前だったのですが、経営企画部に変更しました。もともと、総務・労務など管理部門全体の業務を行っていること、そして今後は更に会社をよりよくする企画・実行を担っていく組織としたい、という宣言も込めて組織名を変更をしました。
部門長やチームメンバーはいきなりの変更に気後れするかと思いきや、設立日には名刺が用意されていて、乗り気だったと分かりました。

②商品企画室の新設

新商品開発に注力するため、新たに商品企画室を新設しました。
従来は会長が思いついたアイデアがそのまま設計開発プロセスに進んだり、プロジェクト単位で有志が集まっていました。その結果、新商品を生み出すサイクルが遅くなっている危機感がありました。
そこで、商品企画室を作り、まず企画数を増やすことを目指します。その結果、新商品を生み出すサイクルを速めていきます。
 (言った以上、やらねば)

6.アイデアへの褒賞の仕組み

①商品のタネ制度

商品企画室の新設と合わせ、新商品のアイデアを社員から募集する仕組みを作りました。
冷やかしじゃない、といった最低限の基準を満たしたアイデアには一律500円、企画書が通って開発が開始すれば5,000円、製品化されれば〇〇万円、という風にアイデアを出した人へ還元する仕組みを設けました。
当社はこれまで、創業者、二代目のアイデアで新商品が生まれていましたが、そのアイデアが枯渇すれば停滞します。
さらに平々凡々な私はとても先代のその部分は引き継げない。ならば、とみんなの力を借りれる制度を作りました。
「千のタネを生み出そう!」これが言いたいがために「商品のタネ」という名前にしたのは内緒です。
この制度が始まって3か月で20のアイデアが出てきました。

商品のタネアプリのヘッダー

②カイゼン提案制度の変更

当社は2021年からカイゼン提案制度をスタートさせました。成果としては、3年間で500万円/年(提案者の集計に基づく)という成果がありましたが、提案数は減少傾向でした。

数字としては増えていても、カイゼン提案件数は減少傾向

そこで、これまでは「年間の最優秀者」のみを選んで表彰していましたがそれをやめ、カイゼン提案が出された時点で褒賞がある仕組みにしました。

これらの取り組みは、三田理化工業が経営理念である「創造力と技術革新により、顧客の課題を解決し社会に貢献する」会社であり続けるために、より創造力を発揮できる環境をつくる一環としてスタートしました。
これが数字につながるよう、2024年は実行の年です。

7.全社研修

ここ最近取り組んでなかった、全社研修を実施しました。

①課題解決

外部講師による課題解決フレームワークの研修を実施しました。
カイゼン提案を奨励するため、制度だけでなく、カイゼンを考える機会を設けました。課題解決のフレームワークを学び、そのフレームワークをベースに自分の業務課題を考えてもらう時間を作りました。
議論は白熱し、どんどん課題の発生原因を掘り下げることができました。

本社での課題解決研修

②三田理化らしさグループワーク

大阪の本社、兵庫県西脇市の開発センター、東京営業所、全員がそろって「三田理化らしさとは」を考えるグループワークを開催しました。
「風通しの良い」「雑談の時間が楽しい」「個性が強い」という言葉が多く出てきて、メンバーが思う三田理化工業の良いところがわかったこと、それをメンバー間で共有できたことで良い時間になったと思います。

付箋に書いてもらった言葉がとてもおもしろい

8.三田工場の縮小とリフォーム

①三田工場の縮小

私の入社前、兵庫県西脇市の開発センターでは離職者が多く、採用もうまくいきませんでした。そこで発祥の地である三田工場にクリーンルームを設置し、軽作業を行える環境を整えパート職の方に働いて頂いていました。
ここ数年、地道な業務改善を積み重ねた結果、開発センターでは残業も減り、離職も止まったことで業務が回るようになり、三田工場の消耗品事業としての役割が縮小していきました。

そのため、68歳まで働いているメンバーが引退を申し出たタイミングで、三田工場での軽作業を止めることにしました。残っていたもう1名の方にもお話し、会社都合で契約を終了することにしました。
その結果、最大6名いた三田工場は77歳の大ベテラン1名になりました。
これは良い成果ではありませんが、自分自身の意思決定の結果として忘れてはならないことだと思います。

②三田工場の書庫新設及び本社プチリフォーム

上記のこともあり、場所・資産を眠らせておくこともできないので、三田工場の一部をリフォームしました。古い建屋の2階を抜き、壁と床をきれいにしただけですが、なんか古民家カフェみたいになりました。

そこに大阪本社で眠っていた古い図面や技術文書を棚ごと移転し、本社の事務所にあったスライド書棚を撤去しました。

大型なスライド書棚を撤去し、人が増やせる空間を広げる

その結果、本社の人材が増えてもワンフロアに設計・製造・営業がいる、という体制を維持することができました。

(このツイートしてるときに比べれば進歩してる)

その他にも、本社のロッカールームがちょっと大きくなったり、倉庫を片付けました。
他のアトツギの方々がきれいなオフィスにリフォームしているのに比べて細々したものですが、ちょっとずつ働きやすい環境に変えています。

9.総務もろもろ

①私服オーケー

事務メンバーは事務服を支給し、着用を義務付けていましたが、私服の希望が出たこと、例外が発生していることから、新しい方の入社に合わせ私服OKという形に変更しました。
事務服の着用もOKとしていましたが、1ヶ月で対象者は全員私服になり、朝のロッカールーム渋滞が解消されました。

②お茶をペットボトルに

本社ご来客時、急須のお茶を湯呑みでお出ししていましたが、ペットボトルに変わりました。
5年前に提案したときは「そんな失礼なことできるか」という感じだったのですが、今回提案したときはあっさり通りました。

10.会長・社長就任式

2023年12月28日に、23年ぶりに新たな代表取締役が就任しました。

それに先立ち有馬温泉の向陽閣にて会長・社長就任式を行いました。
2019年の70周年記念に沖縄旅行以来の社員旅行です。
就任式は23年ぶりなので進め方は全て手探り。この運営のほとんどを若手社員に丸投げしました。
最初はハラハラしていましたが、蓋を開ければ思い出に残るとても良い就任式になりました。
事前に「23年間、一人で代表取締役を担ってきた会長(義父)を泣かせてほしい」という要求を実行委員に伝えましたが、結果的に泣かされたのは新社長の私でした。
会長に向けたサプライズが私にも用意され、知らない間に仕組まれた妻さんからのメッセージに心動かされた就任式。

サプライズで頂いたユニフォーム。49はこの時点の社員数

夜の祝賀会で行われたビンゴ大会では、実行委員の見事な企画で大盛り上がりで終えることが出来ました。会長に比べイベント企画に不慣れな自分ゆえの丸投げでしたが、お越し頂いたお取引の方に「ちゃんと若手に任せててよかったね」と仰って頂き、ああ、こういうふうにメンバーに任せていけば良いのか、と自分の殻が一つ破られた気がしました。

11.まとめ

こうやって振り返ってみると2023年、いろいろありました。
もちろん、これ以外にも会社は前進しており、商品改良や設備投資も行わています。もちろん、2022年から始めた中期事業計画も継続しています。ここに出しているのは私が(多少なりとも)関わったほんの一部です。

この他にも日本ノーコード大賞の特別賞頂いたり、個人としてはNHKのあさイチに男性不妊経験者として思いっきり顔出しして出たり、それで社長就任もあさイチでちょっと触れてもらったり…そしたら子供2人目が生まれたり…そして年末の代表就任に向けて不安から不眠症になったり…

就任前日のあさイチで社長就任を発表される

そんな中でも、多くの方々にお会いすることができました。
今後も新しい価値を生み出せるよう自分なりに三田理化工業として、道なきところに道をつくろう、を掲げて挑戦していきます。

2024年もどうぞよろしくお願いいたします。最後までご覧いただきありがとうございました。

わぁわぁ言う取ります。お時間です。さようなら。


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千種純(三田理化工業_RACOON)
大阪市在住の89年生まれ 父親経営の中小メーカーに在職。 グロービス経営大学大学院卒業 事業承継や、組織の変革、文系から見た社内システムの構築について掲載予定 好きなもの:サッカー(ガンバ大阪ファン)、漫画(オールジャンル)

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