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tsukinotsutsuji
新聞|湊かなえ「C線上のアリア」第133回掲載分より
しかし、徐々に、自らの幸せなエピソードに蓋をするようになってしまうのは、背負うべき荷物が増えてくるからだ。社会に出て働き始めた途端、ぐっと背中にのしかかるものを感じるのは、一人で生きていく際に背負う荷物の本当の重さを知るからではないだろうか。自分の荷物くらい自分でちゃんと持てていると思っていたのに、実は社会や家族が、かなりの部分を引き受けてくれていたことに気付く。
学生時代はなんの屈託も衒いもなく、お互いの幸せエピソードを讃え笑い合うことができたのに、社会に出る頃になると色んなことを先回りして気にして、うかつに話すことが躊躇われる。
そのうちに、自虐的に話す技術を得たり、心に秘めたままにしておいたり、当たり障りのない話題だけで会話を乗り切ることができるようになったり。そんな自分に戸惑ったり。
これから巣立っていく子どもたちもこの変化を経験するのだと思うと、戸惑いすぎることなくどうか軽やかに乗り越えていってくれと願うばかり。
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