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夏目ジウ 掌編・短編小説集

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これまでnoteに掲載した小説をまとめてみました。
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2023年9月の記事一覧

わたしの おとうさん【掌編小説】

わたしの おとうさん【掌編小説】

 ※文字数2,402字。
  作品はフィクションです。

 私は父性を知らない。男親がいるって凄い、といつも妬んでいた。父は物心ついた小学1年には この世にいなかったから、普通に凄いと思ったことは今までずっと続いている。
 私は父に成り代わる存在をずっと探していたんだと思う。父親みたいな大きな存在・・・私にとっては今の彼氏である同い年の井上 恭(やすし)君だ。
 二十歳になるまで彼氏が出来なければ

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ショートショート「夏の終わり」

ショートショート「夏の終わり」

 祖母が亡くなった時は今でもよく覚えている。私が10歳になった8月末日の翌朝で、自分は日本一不幸な小学5年生だと思った。
 しかし、肺がんと最後まで闘う姿は強く美しく見えた。「人はいつか死ぬ。こうやって抗う苦しむ姿を見とけ」と言われているようだった。
 祖母が亡くなって、病院から帰ってきた時には既に沢山の人達が居間に集まっていた。
 葬式は厳粛に執り行われた。すすり泣く声が住職の念仏をかき消してい

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