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夏目ジウ
2023年5月8日 20:12
小学校6年の作文で将来の夢「アイドルと結婚します」と、僕は大口をたたいた。周囲の同級生達は意外だったのか、それを境に僕に対して後ろ指を指すようになった。そのうち同級生に留まらず、担任の前田先生までも僕を怪訝な目で見るようになった。でも、校長先生は「横山君。アイドルは腹黒いから気をつけなさい」と説いてくれた。 あの時の校長室での教えは僕に世の中は甘くない、と教えてくれた。 高校を卒業してす
翌日僕は仕事を休んだ。 一日休暇を取る、などとそんな一時的なものではない。永遠にずっと、休むつもりだった。入社二年目の僕に工場に行くメンタルなんか、体内にはなかったのだ。 窓から差し込む陽光が途轍もなく眩しかった。 これから僕はどうなって行くのか。 途方もない死に近い何かが追いかけてくる。寝ても醒めても、「死に近いもの」しか身近にない場合はどんな末路を辿るのか。 携帯電話のバイブ音
2023年5月20日 07:00
「やっぱり、別れようと思うんだ」 日付けが変わるか変わらないかぐらいのタイミングで裕樹は恋人のエミーにそう告げた。 8月、真夜中の公園。 周りは蝉が激しく鳴いていたにも関わらず、彼女は耳を塞いだようにその鳴き音は一切聴こえなかった。エミーは追いたてられるように声を出さずに静謐に涕泣した。 時が一瞬止まったように、息を一つ吐いたエミーは声を絞り出すように言った。何となくそんな気がしていた
2023年5月28日 11:30
※本文1,963字。 僕たちは今日も一人の女性に魅せられる。彼女はいつも携帯電話片手に大きな紙袋を引っ提げて忙しそうに見える。年齢はいくつだろう。顔に無数のシワがあるから、40歳は超えているのだろう。 小学校の休み時間にみんなで外を眺めていたら、何やら彼女は携帯電話片手に校門の前で話をしていた。 「もしもし。私です。今週日曜日ですね。かしこまりました・・・」 風船を背中につけて空を飛べ