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マティスの切り紙絵を見に国立新美術館に行き本格ミステリ小説好きなことを想う
マティスの展覧会に、ずっと行きたいと思い続けて、やっと行けた。
マティスという人がどういう人生だったかとか、あんまり詳しくないんだけど、作品はなんかいいよね。カラッとした感じで。
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(*展覧会には出品されてない)
マティスといえば、ダンスしてる人たちの油絵とかが有名だけど、今回はそういう絵は出てない。
ポスターとかチラシでも『切り紙絵』の作品を押してて「油絵じゃなくてそういうのも作るんだー」と思って国立新美術館に行ってみた。
![](https://assets.st-note.com/img/1716557023940-NQHDrdtk9F.jpg?width=1200)
この展覧会では、油絵から切り紙絵に至る道のりが見えるような感じで作品が並べられているんだけど、マティスはクロッキーの人なのかなって思った。
クロッキーっていうのは、1分くらいの短い時間で、サクッと特徴を掴んでざっくりした絵を描くこと。迷ったり考えたりせずシャシャシャッーと描く感じ。
短い時間だから、形は単純化した感じで捉えないといけないし、細部を書き込んだりなんてできない。最低限の線や色で見た印象を紙に写し取るトレーニングでもある。
いい感じのクロッキーを極めた先にあるのは、油絵の超絶技巧とかじゃなくて、色のついた紙を切り抜いた“フォルム”になるんだと思った。
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細かく描写されるよりも、こういう素朴な表現の方が、見る人にとっては想像力が刺激されるんじゃないか。と、前々から思ってる。
極端な例だけど、例えば小説。
視覚的な情報としては、白い紙に印刷された黒い文字しかない。
でも、それを読んでいる僕の脳の中には主人公や仲間たちの活躍の様子が顔の表情まで豊かに像を結んでいる。
白い紙に黒い文字さえあれば、人間は想像力を働かせて脳内に映像を作ることができるくらいなので、マティスの鮮やかな色の“フォルム”は想像力を刺激するのに十分な情報量があると思うんだ。
ひょっとしたら、最低限の視覚情報をもとに自分の脳内で映像を作り出すという行いは快感を伴うものなんじゃないだろう??
僕は、本格ミステリ小説が好きだ。
考えてみると、本格ミステリ小説は、他の小説ジャンルに比べて脳内映像化がしやすいんじゃないかと思う。
舞台はだいたい謎の洋館だし、しかも、密室の謎を解く必要性があるので、建物内の間取りはもちろん、窓の位置や家具の配置なども明示されていて、頭の中にビジュアルを描きやすい。
マティスの作品も、もはや記号のような表現まで削ぎ落とされて、でも、観客が脳内に映像を生成するのに必要な情報はきちんと残してくれているような気がする。
マティスの作品を見ていると、残された手がかりをもとに、暗号を解いていくような快感がある。
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もはや、顔なんて書かなくていいんだ。
そのほうが、脳内で想像する楽しさがあるから。
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もう、本格ミステリなら、ダイイングメッセージのごとき聖ドミニクスの肖像画。
聖人の肖像画はこれくらいのでいいんだね。信者の脳内では、微笑みかけてたり、泣いていたり、さまざまな表情が見えるはずなんだから。
印刷された文字の羅列の中に、さまざまな景色を見ることができる僕らは、きっとマティスの作品を楽しめるはず。
展覧会は2024年5月27日まで。ぜひ国立新美術館へどうぞ!