世の中には不思議な事はないと言う、不可思議な物語を紡ぐ(京極夏彦編)
小説紹介第16弾!
「ヒトでなし 金剛界の章」 京極夏彦
2015年発売
本日紹介するのは妖怪や怪談をモチーフにする独特の世界観の作品を出し続ける京極夏彦(きょうごくなつひこ)。
1994年に何の新人賞も受賞せずの突如として(姑獲鳥の夏)でデビュー。
弁当箱並の長編に、これホントに平成の本か?という古めかしい文章。
そして水木しげるに影響を受けた妖怪の名を持つタイトル。
総てが規格外のデビューでした。
読み始めると、これまた難解で、全然本筋とは関係ない蘊蓄の羅列が半分以上占める展開に、正直初めは読むのやめようかと思った位です。
後半になるとグイグイ展開が早くなり、何時の間にか快楽に変わったんです。
この作品のヒットを受けて、作者と同じ名字を持つ(京極堂シリーズ)として大ヒットを続けます、
当然全作品読んでますが、私が一押しするのは、代表作の(京極堂シリーズ)ではなく、珍しく現代が舞台の今作なんです。
簡単に説明すると人生どうでもよくなった主人公の周りに集まってくる(死にたい)人達に対して、主人公自身も人生どうでもいいと思っているので、辛辣な言葉を言うのですが、逆にそれが(死にたい人達)の心に刺さっていき(生きる希望を持つ)ようになり、何時の間にか教祖の様な存在になるという物語。
何か物凄い哲学を感じたんです。
京極さんの本筋の持ち味ではない作品なんだけど、私は一押しします(ガチファンの方からは、大批判されそうですが)。
それでは京極作品のマイベストスリー紹介します。
選べなかったので三位は二作です。
第三位 塗仏の宴 宴の始末 1998年発売 京極堂シリーズ第6弾 シリーズ前半の集大成的作品の前半作品。なので前作全部読んでないと面白さは伝わらないけど、読んでた人にはあらゆる作品に出て来た人物が出てくるので最高です。前半の終わり方が最高で、後半が読みたくて仕方なかった。
第三位 虚談 2018年発売 冥談・幽談とかの(〇談)シリーズの中の一冊。他の作品と違い総てが(虚言)と言う点が画期的で面白かったです。
第二位 嗤う伊右衛門 1997年発売 これも後のシリーズ展開していく作品の一冊目。歴史的名作の怪談を京極氏がリメイクするシリーズ。今作は(東海道四谷怪談)をリメイク。滅茶苦茶面白かったです。この後(番長更屋敷)など続けていきます。
第一位 ヒトでなし 金剛界の章 2018年発売 唯一真っ当な物語が無い作品かもしれない。でも何か私には刺さったんです!独断と偏見と言う事でご了承ください。
他にも沢山お勧めしたい作品あります。
難点を言うとすれば、兎に角面白くなるまで少し時間がかかると言う点。
特に京極堂シリーズは三分の一は全然関係ない蘊蓄を読む覚悟が要ります。
昨年10年ぶり以上に10作目(鵺の碑)が出たんですが、暫く読んでなかったんで、初めメチャ辛かったです(笑)