小須戸ARTプロジェクト2024 -展示作品の紹介-
10月5日に開幕した小須戸ARTプロジェクト2024の成果発表展は、11月4日まで。作品の公開は土・日・祝日のみなので、残り3日間となりました。
会期中は県内外からお客様がいらっしゃり、作品をご覧いただいています。ただ、なかなか新潟・小須戸へ訪れることが難しい、と言う方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方にもプロジェクトや作品について知っていただきたく、今回の記事では作品の紹介をしたいと思います。
「また会いましょう」大川友希
大川友希さんは、昨年度のプロジェクトにリサーチ参加、小須戸縞を中心とした機業と、地域の歴史について調べていきました。今回は、そのリサーチの成果を作品化し、大川前4倉庫で展示しています。
会場は以前、ガレージなどとして利用されていたようですが、現在は使われていない空き物件。
大川さんが制作した作品は、物件内の空間に古着を積み重ねた柱が林立する、インスタレーションです。
積み重ねられた古着は地域で募集して、集まったものです。
作品では、集まった古着をきれいに「おり」、「たたみ」、「かさねる」作業を繰り返すことにより、柱の形になっています。
大川さんは、昨年度のリサーチで、言葉と行為の密接な関係を意識されたようで、それが作品を読み解くキーとなります。
例えば、この作品は「たたむ」という行為の積み重ねで作品ができています。この「たたむ」という言葉には、折り畳んでしまいやすくするというような意味だけでなく、事業を畳む、つまり、モノゴトを終わらせる、決まりをつける、というような意味も併せ持っています。
小須戸縞の機業は商業生産が途絶え、ここ数年で、職人さんが亡くなり、工場も解体されています。終わりを迎えた、決まりがついた状況とも言えなくもありません。
その一方で、地域の産業はニット業に変化していきました。しかし、ニット業も事業者数は減っている現状があります。そんな中でも、リサーチの際に訪れたYOSHIHIDEさんでは、新たなブランドの立ち上げなど、今後に向けた取り組みが進められていることも知りました。
一つの終わりが、次の何かの始まりになる。「おり」、「たたみ」、「かさねる」行為の繰り返しが、地域の歴史の流れやその蓄積を表している、とも思えますね。
余談ですが、最後にこの作品をモノクロで撮影した写真を載せてみます。
色の要素を省くことで、古着の柱が縞模様に見えてきませんか?
これが、職人さんが大切にしていた縞帳の、縞見本のように見えてしまうのも不思議なものです。
「匙日記」光延咲良
鍛金作家の光延咲良さんは、今年の8月10日から25日にかけて町屋ラボに滞在し、その日食べるおやつのための匙や器を作り、午後3時にその場にいた人と一緒におやつを食べる、という取り組みを行っていきました。
その滞在期間中に制作した匙や器、食べたおやつの写真、周辺を散策して購入したもの、テキストを組み合わせ、町屋ラボで展示しています。
滞在中に制作した匙や器だけでなく、その後滞在期間を振り返って特に印象に残ったシーンの空間配置を、溶接の技法で作った作品も3点ほど展示されています。
歓迎会の様子、おやつを食べたシーン、そして秘密の思い出。
その当時の町屋ラボの建物の家具の配置などを、ミニチュアのように再現しています。
この作品は、小須戸滞在中に過ごした時間に関する作家の日記です。
他人の日記を読むとした時に、本人の持っている情報と見る側の情報は違うので、伝わることも、全くわからないこともあるかもしれません。
そうしたときに、一緒におやつを食べた人、そのおやつを知っている人、光延さんが行ったお店、会った人を知っている人、それぞれで見え方が変わってくるというのも。この展示のおもしろさかもしれません。
匙、写真、テキストをもとに、作家がこの匙を作った日にはどんなことがあったのだろうかと、想像しながら鑑賞してみるのが、楽しむ一つの方法かと思います。
また、光延さんは自身の作品について、美術館、博物館でケースに入れて展示されるようなものではなく、道具として使ってもらうことに意味を感じるとお話していました。
こうしたお話をもとに、ご近所のCAFE GEORGさんにご協力いただき、プロジェクト会期中に光延さんの匙を使って食べる限定メニューをご提供いただいています。
10月20日までは「スーパーレモンムーン」、10月24日からは「新月」という名のおやつメニューです。プロジェクト来訪の際はぜひ合わせてお楽しみいただきたいですね。
関連イベントなど
オープニングイベント:作家と巡る作品解説ツアー
プロジェクト初日の10月5日、午後1時には、オープニングイベントとして「作家と巡る作品解説ツアー」を開催しました。
遠方からご参加いただいた方もいらっしゃり、盛況でした。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
小須戸ARTプロジェクト紹介展関連トークイベント「地域とアートの交点、アートプロジェクトやAIRを考える」
新潟市中央区のゆいぽーとでは、プロジェクトの会期と合わせて「小須戸ARTプロジェクト紹介展」が開催されています。10月18日(金)には、関連トークイベントが開催されました。
トークのテーマは、「地域とアートの交点、アートプロジェクトやAIRを考える」。
プロジェクト代表・石田が小須戸ARTプロジェクトについて紹介し、続いてプロジェクト立ち上げから関わる美術家・南条嘉毅氏に、これまでのプロジェクトへの関わり方や、ご自身の制作への影響などをご紹介いただきました。
プロジェクトは今回で12回目。その間の様々な出来事をお話するには少し時間が足りず予定時間を押してしまいましたが、その後の意見交換では、地域を訪れての印象や、他のアートプロジェクトへの参加経験をもとにした質問などがあり、活動の考え方や地域の実情などをお答えしました。
主催いただいたゆいぽーとの佐藤さん、お忙しい中新潟にお越しいただきお話しいただいた南条さん、ご参加の皆さま、ありがとうございました。
と、こんな感じで展示作品と関連イベントについて紹介しました。
興味をお持ちいただいた方は、11月頭の3連休に、ぜひ小須戸へ足をお運びください!