【書評】「名目GDPって何?」という人のための経済指標の教科書
書籍情報
署名 「名目GDPって何?」という人のための経済指標の教科書
著者 小宮 一慶
出版社 PHP研究所
出版年 2015年
概要
経済指標の読み方の教科書的な本。
各経済指標単体で見るのではなく、複数の経済指標のつながりを著者の見立てを例に説明しているため、1つ1つの指標を単体で見るだけではなく有機的につながりを意識して理解することができる。
同著者の「PERって何?という人のための投資指標の教科書」についても以前、書評を書いた。
こちらと比べると今回の本はテーマが絞られているため、説明が深くなっている。
どちらか1冊と言われれば断然今回紹介する本を勧める。
評価基準は前掲書と重複する部分もあるが以下の3つ。
① 取り上げられている指標のつながりの説明の分かりやすさ
② 情報の利用しやすさ
③ 指標の評価基準
詳細
① 取り上げられている指標のつながりの説明の分かりやすさ
以前取り上げた「PERって何?という人のための投資指標の教科書」は経済・経営・株価・投資信託と4つのテーマにまたがって指標を説明していたため、1つ1つの分野について説明されている範囲はどうしても狭いものになっていた。本書では、経済に絞って1冊の本になっているので、幅広く丁寧につながりを説明されており、こちらの方がためになると感じた。複数の指標を併せて実体を掴むと様に説明されているので実際に自分が指標を読む場合にも順を追って真似をすれば筋立てた分析ができるようになると思う。
② 情報の利用しやすさ
上述の通り、指標のつながりを丁寧に説明してくれているのでとても有用。しかし、すべて文章でストーリー立てて説明されているため、再現をしようとすると文章を読み直さなければならない。分析の骨子を図や一覧表のような形で示してあると読んで終わりではなくて、実践するためには役に立ったように思う。もともと新書なので、腰を据えた環境でノートを取りながら読むというものではないので、その点残念に思った。
③ 指標の評価基準
指標の評価基準については前掲書と同じ評価。著者の示す基準値は個人の経験値を基にしているので、妥当性の根拠はあまり示されていない。継続的に指標を見続けたり、他の本でも調べたりすることで、納得できる評価基準を読者自身が見つける必要がある。
総評
同著者の「PERって何?という人のための投資指標の教科書」は、読む価値はあるけれどこの本でなくても良いぐらいの評価だったが、本書は手に取る価値のある本だと思う。
ただ、やはり著者の経験値による部分は大きく、類書と読み比べたり、自分で指標がどう動いているのかを見て考えることは必要だと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?