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本好きが本を読まずに勉強する方法


書店をぶらぶらするだけでも勉強になる

多くの本好きに共感してもらえると思うが、本屋をぶらぶらして回るだけでいくらでも時間が使える。読みたい本を探すだけではなくて、どんな本が並んでいるかを見れば世間が何に興味を持っているのか?が分かるというのはよく言われるし、そういえばこのテーマってどうなっているんだろうと興味が喚起されることもある。
考えてみれば、本好きが持っている特有の勉強法と言っても良いのではないだろうか。
参考に私がブックオフをぶらぶらしながら考えたことを書いてみる。

シチュエーション

昼食を食べに出たついでにブックオフに寄る。特に目的があったわけでもなく、通り道にあったからふらっと立ち寄ったぐらいだ。
特に何か欲しい本があったわけでもないので、買い過ぎないように注意しつつ色々見て回る。

経済コーナー

今一番興味を持っている対象は投資で、自分の主義主張とは関係なくいろいろな立場の人の著作を読むようにしている。今のところ読みたい本のストックもあるので、そのうち読もうと思っていた本があれば買うかなぐらい。

投資分野で購入を検討したのは、次の3冊。

そのうち読もうと思っていた本で自分の投資に役立てようという意図で検討。
バフェット・ソロス共に著名な投資家だが全く異なった投資アプローチをする。その2人に共通するものがあるというのは面白い。著名投資家のテスタ氏が薦めていたことでも知られている本でミーハー的にも興味がある。
ただ、今のところ実益のための投資本は十分あるので今回は見送り。

これは実益というよりは、自分がやらない投資法を押す人たちがどういう論理で利益を得られると主張しているかを知りたいという興味で検討。

特にデイトレードは利益を出せるという理屈が全く分からない上に、研究者や機関投資家の様に論理的に説明することを求められる立場の人が書いた本も少ない。タイトルと煽り文句を見るだけで胡散臭すぎる本が多い。

想像としては主にテクニカル分析なんだろうけど、多少マシそうな本ぐらい確認してから結論を出したい。要するに、なんでダメなのか結論を出したいというのがこのジャンルの本を読む目的。テクニカル分析が統計的に有意差を出せていないことは承知しているが、それ以外の論理に無理なところがないか自分の言葉で説明できる結論を出したい。

これが最近最大の知的モヤモヤなので、マシそうな本の候補として目をつけていた本書があったので買うことにした。

本書は200円コーナーで発見。
米国株は今のところ投資対象としては考えていないのだけれど、200円なら良いかという事で検討。
著者は投資系インフルエンサーとして名前は知っている方。どこかでこの本を進めているのを見た覚えがあるし、気分転換に1時間ぐらいで読めそうな本はいくらあっても困ることはない。パラパラと中身を見てみると気になるところがちらほら。

1.単語の精度
毎度おなじみのジェレミー・シーゲルの引用で株式投資の優位性を説明している。このあたりの既視感はしょうがない部分なので良いのだけれど、米国株投資の優位性が証明されているという表現に引っかかった。「証明」ではないな。というのが1つ目の引っ掛かり。「証明」や「最適化」の様な表現が緩く使われていると信頼感が下がる。

2.根拠の提示
ポートフォリオの組み入れ銘柄数の目安が示されている部分でなぜその銘柄数になるのか理由が示されていいようだっだ。こういう基準は経験則でも良いのでなんでそう考えているのかは明示しておいてほしい。
この点については日本株に見切りをつけて米国株が良いとする根拠も弱いように感じた。

3.文中の強調部
これもざっと見た感じだが、文中で太字で強調されている部分がそんなところ強調する必要あるか?と思えた。

4.ポートフォリオ
著者のポートフォリオが示されていたり、いくつかの銘柄がリストアップされて紹介されていた。ざっと銘柄を見る限り知らないような会社があるわけでもなく、普通に分析していけばたどり着きそうな会社ばかりだった。
何も聞いたことがない銘柄をあげることに価値があるわけではないがさすがに平凡すぎるように思う。

読まなくても良いかなぁ。という事で見送り。
他にはゲーム理論の本で面白そうなものがあったが、今はそんな分厚い本は読めないなと思い見送る。

新書と文庫コーナー

トマス・ハリスの「カリ・モーラ」を見つける。寡作な作家で「ハンニバルライジング」以降に新作が出ていることを知らなかったのでちょっと迷ったが、「ブラックサンデー」をまだ読み終わっていないし他にも読んでいない小説が結構ある。トマス・ハリスは結構時間をかけないと読めない作家なので見送り。

今日は小説という気分でもなかったのであまり小説は見て回らず、新書も気分に合うものはなかった。

その他の活字コーナー

新型コロナ

ちょっと気になったのはマイケル・ルイス「最悪の予感」。新型コロナウィルスをテーマにした本。

もう社会的には落ち着いているけれど、このパンデミックは当事者として語れる歴史上の大事件であることは間違いない。

今思い出しただけでも、次のようなことが起こった。

トイレットペーパーがなくなる、国がマスクを配り出す、シャープがマスク作り出す、陰謀論が巻き起こる、リモート勤務やリモート会議が一気に普及する、37度の発熱で会社を休むようになる、インフルエンザが極端に減少する。飲食店が店頭で弁当を売り出す。オリンピックが延期される。興行で派無観客試合が開催される。

これってどういう状況で起こったことだったのか?その判断は正しかったのか?正しくなかった判断はなぜされたのか?時系列に沿って何が起きたか、自分の身の回りで何が起きていたか整理して言語化することは有益だと思う。

単純にパンデミックってエボラウィルスみたいなイメージだったので全然思ったものと違ったとか、案外何となく緩くなっていくという事も忘れてしまいそう。

今回は見送るが、収集テーマにしよう。

軽いものを探す

全体的にはちょうど良い感じのものは見つからず

バックギャモンの戦術書があったので買おうか迷ったが、あんまり高度な戦術を必要とするような相手と指すこともないので間違いなく積読になるなという事で見送り。

サピエンス全史が上下巻そろって200円で出ていたので買おうか迷ったが、これ読むんだったら「銃・病原菌・鉄」の積読を先に解消したい。見送り。

この他にアルゴリズムを題材に一般向けに書かれた本が面白そうだったが、どうせだったらちゃんと勉強した方が良いかなと思い見送り。

そんな中で次の本を買うことにした。

料理もするので素直にせっかくなら調理法を素材にあわせることで栄養をちゃんと取れた方が良いというのもあるが、中身を見てみると、捨ててしまうような部位に栄養があってこうすれば食べられるという類の記載もあった。
そんな調理法があるのかという発見があって面白そうだ。
1つの素材につき見開き2ページでの説明なので気軽に読める。

コミックコーナー

もう連載でマンガを読むことはなくなったが、文庫で面白そうなものがあれば読んでいる。
マンガはどうしてもスペースをとるので、人気のあった作品でも何十年も前の作品だと店頭に並べられているとは限らない。そう思えば古い作品かつ店頭で簡単に手に入る作品をチェックしておくと強力なIPのリストを作ることだってできるし、そのIPをどんな風に展開しているのか?収益化の機会の多いIPにはどんな特徴があるのか?などと想像が膨らむ。

まとめ

今回のテーマは店内を歩き回って買った2冊の本の中身ではなく、買い物中に考えたことなので、買いも読みもしていない本を見て回ったことにどんな効用があったのかをまとめると以下のようになる。

目的と手段の明確化

投資本の比較検討は、本を読んで勉強する前に何のために読むのか?その本に何を求めているのかを明確にするプロセスで、本を読む前にやっておくと読書の効率が上がることはもちろんだ。
しかし、それ自体が要するに自分の目的と判断基準の言語化、作業仮説の言語化と言えるので1つのトレーニングとして効果があると私は思う。

既知の知識の活性化

新型コロナ関連の連想で行ったことは以下の様に既に自分が持っている知識を活性化し、既知の知識では分からないことを明らかにする効用がある。

  1. 自分がすでに持っている知識を思い出す

  2. その知識に意味付けを行う

  3. 関心テーマを見つける

  4. そのテーマを論じるにあたって不足している知識を明らかにする

他社の意図からの情報取得

コミックコーナーの陳列からの連想は店の意図から店頭に並んでいる商品が持っている情報を読み取るという事だ。売れるものしか陳列できないなら陳列されているものは売れると考えられているという事が想像できて、今回ならなぜ売れると判断したのか?売れると判断されたものの共通点は何か?と考えていくと情報として価値を持ち始める。

  1. 相手の意図をふまえた表現からの情報取得

  2. 相手がその判断に至った状況の想像

いかがだろうか?本を読まなくても書店をぶらぶらするだけでも勉強になるというのは無理のある発想ではないと思う。
他にも、本の出版年を見比べる。特定著者の扱っているテーマの変遷をたどる。なども有効な手法になりえると思う。
あまり本を読まないという方もたまには書店をぶらぶらしてみると面白いよ。

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