『遠くから見たら島だった』 ブルーノ・ムナーリ 創元社 2023年 978-4422440415
「白い線がやたらとたくさん入った石もある。線をじっくりながめていると、しだいに、森のなかでからみあうつる植物のように見えてくる。」(p21)
「石は、発見に満ちた世界だ。形や色や模様、でっぱりやへこみがさまざまで、いくらでも飽きずにながめていられる。石は、海や川による彫刻だ。それぞれに異なり、ひとつとしておなじものはない。芸術作品と同様に、どれも「この世にたったひとつ」の存在。」(p6)
ムナーリが石に注目した理由がよくわかるエッセイだ。石といっても、彫刻の石と言うよりは、海や川に存在する意思を指している。海岸を歩くと足元に広がる数の石。石という感じ。一文字で出てしまうけれども、表情がどれも違うと言うことを無なりが言いたいのではないだろうか大学時代の石の先生が授業で教えてくれた表の異なる石の魅力について思い出させてくれた本だった。芸術作品における石の作品は、実際の重さを感じられる。ゴツゴツした石もあれば、表面が磨かれたきれいな石の作品もある。石と言う塊で見るのか、無数のちっちゃな粒子の塊として見るのかにもよってだいぶ異なってくる。ムナーリがここまで石について言及していたとは知らなかった。そしてこの本を訳してくれたのは大学時代の先生だった。プロフィールを見て確信は持てないけれど、この訳し方はあの先生しかいない。無駄がなくて言葉の奥深くまで入って、いくためのキーワードを散らめてくれるそんな訳し方をする先生だったたまたまお世話になっている書店で取り扱いがあって、手に取ったこの本がこういうつながりをもたらしてくれるのは実に嬉しいことだった。
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