映画「エンドロールのつづき(原題:Last Film Show)」感想

先日、久しぶりに映画を見てきました☺🎥
詳細なネタバレを含んでいますので、まだ観ていない方は注意です!

あらすじ

時は2010年。インドの田舎町で、父の店を手伝いながら暮らす9歳の少年サマイ。ある時、特別に家族で映画を見に行くことになり、初めて体験した映画の世界に虜になる。映画技師との出会いを通して、サマイはやがて映画制作に関心を抱くようになる。

感想


前半は、サマイ君が過ごす町の日常や、映画に魅了されていく過程がじっくり描かれています。スクリーンを通して、自然豊かな、インドの田舎の風景を堪能することができます。映写機から放出される光の描写が美しく、映像の色づかいがとてもオシャレです。

映画を観たいけれど、お金がない。たまたま出会った映画技師のファザルが、サマイ君のママが作ったお弁当と引き換えに、映写室から映画を見せてくれることに。
世の中ギブ&テイクですよね、甘くない!笑

空腹を忘れて映画にのめり込むサマイ君。(育ち盛りなんだから、ちゃんとごはん食べて~💦)とモヤモヤしていたら、途中からファザルさんのセリフが「一緒に食べよう」に変わって良かった。年の差を越え、「映画が好き」という共通項で結ばれたふたりの友情。

この映画、登場人物がとっても魅力的!!

まず、サマイ役の男の子。表情がくるくる変わって、とっても可愛い!
叱られてもへっちゃら、タフで好奇心旺盛な少年。友達を巻き込んで物事をやり遂げようとする、強靭なバイタリティーの持ち主です。
ただ、映画館のネガをこっそり切り取って自分の物にしたり、仲間と謀ってフィルムを盗んだりと、度が過ぎる行動もあり…サマイ君に100%は感情移入できなかったです。やんちゃ盛りと言っても、さすがに犯罪はね…。

そして、サマイ君のママ!美しすぎる~✨✨
ママが作るインド料理は、この映画の大きな見所です!
味の想像がつかないけど、ヘルシーで美味しそう💕

信仰心が篤く、厳格なパパ。飼っていた牛を騙しとられ、貧しいチャイ売りとして家族を養います。
サマイ君が悪事を働くと、パパは長い棒で容赦なくサマイ君を叩きます。パパがサマイ君に向けて発した、「俺のような負け犬になりたいか」という言葉からも、子どもには自分と同じ苦労をさせたくないというパパの気持ちが痛いほど伝わります。

役人から店の立ち退きを命じられたことで、不安定になり躾という形でサマイ君に一層つらく当たるパパ。当時の社会的にも、躾で叩くことが常態化していたのかもしれないけど、子どもに手を出すのはダメ!!男性優位の文化で、普段はパパに逆らわないママも、後半ではパパから棒をひったくり、サマイ君を守ります。子どもが冷めた表情で痛みに耐える姿は演技でも見るに堪えなかったので、ママの勇敢な行動にホッとしました。

映画を、信仰する宗教に反する低俗なものと嫌悪していたパパですが、サマイ君と友人達が手作りの映画を披露する場面を目撃し、感銘を受けます。そして、こっそり段取りを整え、映画制作を夢見るサマイ君が町を出て学ぶことを後押ししてくれます。

長年心の拠り所にしていた信念に目をつぶってでも、息子の気持ちを受け入れ、送り出すパパ…偉すぎます。
そして、毎日作り続けた愛情たっぷりのお弁当を、涙をこらえて息子に渡すママ。ここ、私がいちばん好きなシーンです。明日からはもう作ってあげられないんだなあ、とか、体に気を付けて、とか、この時のママの気持ちを想像すると泣けます…。

都会行きの列車に乗り込むサマイ君。
サマイ君を見守ってきた大人や友人たちが見送ります。
サマイ君の教師が出てきた瞬間、うるっときました。
貧困層への根強い差別がある町で、分け隔てなくサマイ君を見守り、応援してくれた先生です。
夢を叶えるために大事なことは、
①この町を出ること②英語を勉強すること
「発(た)て、そして学べ」。先生の教え。

英語や数学ができないファザルさんは、映画のデジタル化に適応できず映画館をクビになってしまいますし、
サマイ君のパパもまた、英語が読めません。貧困の背景にある、教育格差の問題も描かれていますね。

ラストは、旅立ちを象徴する映像。歩み始めたサマイ君の未来を予感させる、真っ白なスクリーンで終わります。

予告を見て、片田舎の貧しい少年が映画監督として活躍するまでを描くストーリーかと思っていましたが、違いました。でも、これはこれでアリです。
映画に詳しくない私は全然わからなかったんですが、色々な名作をオマージュしているようです。映画に造形が深い人は、一層楽しめるんだろうな~✴️

サマイ君の成長を通して、見ている私たちも背中を押してもらえるような、心温まる映画でした🍀


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