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ヨーロッパのドストエフスキーゆかりの地を巡る旅~『ドストエフスキー、妻と歩んだ運命の旅~狂気と愛の西欧旅行』

2022年11月初旬から12月末にかけて、私はヨーロッパを旅した。

ドイツ、スイス、イタリア、チェコ。

これらの国を私は巡ったわけだが、私がこれらの国を訪れたのはロシアの文豪ドストエフスキーゆかりの地であるからだ。

フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)Wikipediaより

私はこの3年半、「親鸞とドストエフスキー」をテーマに学び続けてきた。そしてその集大成として私はこの旅を計画したのである。

本来はここで私がなぜドストエフスキーを学び始め、そして愛するようになったのかをお話しするのが筋だろう。

だがそれは以前当ブログでも紹介した。なのでここではその一覧記事を紹介するにとどめておく。

この一覧の記事の中でも特におすすめしたいのが「『カラマーゾフの兄弟』大審問官の衝撃!宗教とは一体何なのか!私とドストエフスキーの出会い⑵」「親鸞とドストエフスキーの驚くべき共通点ー越後流罪とシベリア流刑」の記事だ。私がなぜ「親鸞とドストエフスキー」をテーマに学んでいるかが端的にわかる記事となっている。

とは言え、やはり記事を書いた私としては全体の流れを読んで頂ければこれほどありがたいことはない。恐縮ではあるがぜひはじめから通して読まれることをおすすめしたい。

さて、というわけで私はこの「親鸞とドストエフスキー」の学びの集大成としてこの旅を計画することとなった。

だが、多くの方はこう思われたのではないだろうか。

「ロシアの文豪ドストエフスキーを学ぶならロシアに行けばいいではないか」

そう。まさにそうなのだ。

実は私もほんの一年前まではそう思っていた。ドストエフスキー研究の仕上げはやはりロシアに行かねばならない、そう思っていたのだ。

しかし世界情勢がそれを許さなかった。ロシアによるウクライナ侵攻で世界は変わってしまった。

ロシアによる侵攻は言語道断としか言いようがない。これまで私はドストエフスキーをきっかけにロシアの歴史や文化を学んできた。そして今も学んでいる。だが、だからといって今回の侵攻が正当化されることなど到底私も認めることができない。ロシアの文学や芸術はそうした圧政や暴力に反対する人々が紡いできた歴史であったはずだ。しかしロシア帝国やソ連の時と同様、暴力でそれはねじ伏せられてしまった・・・

ソ連や現代ロシアの歴史を学んでいると、つくづく同じことが繰り返されていることを感じる(もちろん、形を変えてではあるが)。

そんな世界情勢の中、私は元々考えていた別のプランをメインに据えることを考え始めた。

実はロシア国内のドストエフスキーゆかりの地を巡るという計画と並行して、ヨーロッパ内のドストエフスキーゆかりの地を巡りたいという思いが私の中に強烈にあったのだ。

この世界情勢の中、実行できるとしたら間違いなくこちらだ。しかも、ドストエフスキーの学びも最終盤に入り、私の中で「ヨーロッパとドストエフスキー」というテーマに関心の比重が移っていたのも事実だった。

では、なぜ私がヨーロッパのドストエフスキーゆかりの地に強い関心を持つようになったのか、そのきっかけこそドストエフスキーの奥様アンナ夫人による伝記『回想のドストエフスキー』だった。

私がドストエフスキーを学ぼうと思ったきっかけは『カラマーゾフの兄弟』だった。

だが心の底からドストエフスキーを好きになったのはこの『回想のドストエフスキー』のおかげだったのだ。

そしてこの本の中で説かれるドストエフスキーとアンナ夫人の西欧旅行。これが私の心を打ったのだ。新婚早々二人はロシアを離れてヨーロッパへと旅立った。そして4年に及ぶ西欧滞在で2人の運命は大きく変わることになる。この旅がなければ『白痴』以降の大作、つまり『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』も生まれることはなかっただろう。それほどこの旅はドストエフスキーにとって大きなものがあったのだ。

そして何よりこの旅を通して2人は強く結ばれ、ドストエフスキーは苦しみ抜いた前半生と全く異なる幸福な家庭生活を過ごすことができたのだ。ドストエフスキーといえば重く陰鬱なイメージがあるかもしれないが、彼の晩年は幸福そのものだったのである。これは私にとっても大いに救いとなった事実であった。

そしてドストエフスキーを学び始めてすでに3年以上が経った今、私は強く感じている。「私はアンナ夫人と共にいるドストエフスキーが好きなのだ」と。

このように、2人が強く結びつくきっかけとなったのがこのヨーロッパ旅行であり、この旅の最中に『悪霊』、『未成年』、『カラマーゾフの兄弟』の萌芽が生まれているということも見逃せない。

そう考えるとこの旅がドストエフスキーにとってどれほど巨大な意味を持つかが見えてくるのではないだろうか。

また、私はドストエフスキーを学ぶ過程でヨーロッパの歴史や文化も学ぶことになった。『レ・ミゼラブル』のようなフランス文学からローマ帝国の歴史、ルネサンス、フェルメール、メンデルスゾーンなど様々な地域、ジャンルを超えて学んできた。一見全く異なるジャンルのものに見えるかもしれないが私にとっては「親鸞とドストエフスキー」というテーマに一直線に繋がる大切な存在だ。全ては繋がっている。

ヨーロッパの歴史や文化を学んだ上でドストエフスキー夫妻の旅を追体験することは、私にとって必ずや大きな意味を持つことだろう。そう思い私はこの旅を決めた。

そして同時にこの旅を通してドストエフスキーの人となりを知ってもらえたらきっと皆さんの彼に対するイメージは変わることだろう。私はドストエフスキーが好きだ。そしてそれは彼の人柄やアンナ夫人と過ごした幸福な結婚生活があったからこそだ。暗くて厳めしい文豪ドストエフスキーではない、素顔のドストエフスキーを知って頂けたら何よりも嬉しく思う。

もちろん、タイトルにも書いたがドストエフスキーは狂気の作家だ。正直、彼はダメ人間中のダメ人間でもあった。旅の最中ギャンブル中毒でどれほど窮地に陥ったことか。さらには嫉妬深くて癇癪持ちの一面もあった。そしててんかんの持病に苦しみ続けた病人でもあった。

だが、それにも関わらずドストエフスキーとアンナ夫人は強い絆で結ばれ愛し合った。これには驚愕するほかない。信じられないようなことが起こったのだ。

この旅ではドストエフスキーがかつてのダメ人間から復活していく過程も見ていくことになる。彼はこの旅でまさに絶望的な精神状態から復活した。そして妻アンナ夫人の成長にも驚くことだろう。何と言ってもアンナ夫人は若干20歳でこの旅に出た。そして旅を終えた4年後にはそれこそドストエフスキーが全幅の信頼を置くほどの精神的成熟を見せることになる。二人の奇跡のような旅路を巡ることは超一級の小説を読むにも等しい冒険だ。

これから先私は『ドストエフスキー、妻と歩んだ運命の旅~狂気と愛の西欧旅行』という伝記と旅行記のハイブリッド型の記事を書いていく。基本的には上で紹介した『回想のドストエフスキー』をベースに彼らの旅路を紹介し、実際に現地を訪れた私の所感も合わせてお話ししていく。

まずは次の記事でドストエフスキーが妻アンナ夫人と出会うまでの前半生をざっくりと振り返っていく。彼の波乱万丈な人生を短くまとめるのはなかなかに難しいことではあるがまずはやってみよう。ドストエフスキーがいかに苦しい人生を送ってきたかを知れば、アンナ夫人との出会いがいかに幸運なものであったかがはっきりするだろう。


今回の記事は以前当ブログで公開した以下の記事を再構成したものになります。

これからご紹介する『ドストエフスキー、妻と歩んだ運命の旅~狂気と愛の西欧旅行』は上でお話ししたように、ドストエフスキーの伝記と旅行記のハイブリッドという特殊な形の旅行記となっています。

ブログで連載した元記事では『回想のドストエフスキー』から多くを引用しているため記事そのものの文量が多くなり、ほんの少し専門的な内容となっています。

これは私が旅行記を書くにあたり、参考文献や出典を明確にした上でドストエフスキーの生涯を描きたいという思いがあるからです。私個人の思い込みで伝記を書くことはあまりにも恐れ多いという思いがありました。

ただ、元記事で主に引用しているのはドストエフスキーの妻アンナ夫人の言葉になります。つまり、妻から見たドストエフスキーを知るには最高の文献です。さらに、歴史研究の専門書と違ってアンナ夫人の率直な回想という文体ですので非常に読みやすいのも特徴です。

なので私としてはこの旅行記はドストエフスキーを知らない方にも読みやすく読んで頂けるものになっていると感じております。

ただ、こちらのnoteではなるべく引用部分を減らして私が実際に現地を訪ねた旅行記パート主体で更新していきたいと思います。

もっとドストエフスキーその人や、そこでどんなことがあったのかを知りたい方はぜひ元記事を読んで頂けましたらと思います。ドストエフスキーの波乱万丈のヨーロッパ旅行を一本の物語風にまとめています。

ドストエフスキーの祖国ロシアのゆかりの地を訪れ、それを記録に残した作品や文章は数多くあることでしょう。ですが、ヨーロッパのゆかりの地に特化して書かれたものはほとんどありません。そうした意味でもドストエフスキーを愛する方々にも微力ながらお役に立てるのではないかと僭越ながら感じております。

ドストエフスキーは面白い!肩肘張らずに読める旅行記を執筆したつもりです。ぜひ楽しんで頂けましたら幸いでございます。

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