
ロシア国境近くのダリアリ渓谷へ~雄大な山々を舞う鷲の姿に感動
前回の記事で紹介したグヴェレティの滝から下山した私が次に向かったのはダリアリ渓谷という場所。こちらはまさにロシア国境の目と鼻の先にある地点だ。
私はカフカースに2022年の9月12日までいたのだがその数日後、ロシア国内で徴兵が始まり、このロシア・ジョージア国境がロシア脱出者の殺到でとてつもない事態になったことはニュースでも目にされた方がおられるのではないだろうか。まさにその国境がここなのである。

この山の先が国境エリア。この近辺の山にはロシアの兵士がいるため近づくのは非常に危険なそう。2008年のロシア・ジョージア戦争以来両国間の緊張は続いたままだそうだ。

この国境近くのダリアリ渓谷に立つのがこちらのダリアリ修道院。比較的最近作られた教会だそう。こうした面からもジョージア人が今もなお信仰を重んじていることがうかがえる。これほど大きな施設を作るのは様々な面で大きな苦労があったことだろう。


この修道院のそばに川が流れていたのだがこれがまた素晴らしかった。
敷き詰められたかのような大きな岩の間を川が流れてくる。
川の流れ、水の音、山の景色。最高の組み合わせだ。
ロシア・ジョージア国境付近のダリアリ修道院のそばに川が流れていたのだがこれがまた素晴らしかった。
— 上田隆弘@函館錦識寺 (@kinsyokuzi) January 9, 2023
敷き詰められたかのような大きな岩の間を川が流れてくる。
川の流れ、水の音、山の景色。最高の組み合わせだ。#秋に記す夏の印象 pic.twitter.com/DebynpwHzB

そして近くの木にケルベロスのようなリスを発見しほっこりする。


私はこの雄大な山々をただ茫然と見渡すことしかできなかった。ごつごつした岩肌、崖のようにそびえ立つその力強い姿・・・
そしてふと、私の目に黒い点が二つ飛び込んできた。
すぐにハッとして目を凝らしてみると、それは二羽の鷲だったのである。
私は慌ててカメラを構えた。そしてなんとかその鷲を写真に収めることができた。それが上の写真だ。写真左側に小さく映っているのが見えるだろうか。
私はこの鷲を見た時、トルストイの鳥瞰図の意味がわかった。
街の中を飛んでいるカラスとは違う。雄大な山々を自由に飛ぶ鷲の視点。
これなんだ。
それにしてもすごい。こっちの山にいたかと思えばあっという間に向こうの山へ。
山と山の間は深い深い谷になっていて、少し飛び立てば一気にはるか上空となる。
とてつもないスケール。これなんだ。トルストイは。
トルストイは『戦争と平和』でとてつもないスケールの物語を描き出した。そして作中、彼の筆は全世界を映し出す鳥瞰図的な視点が何度も出てくる。
『戦争と平和』だけではない。トルストイはその作家人生でどれほど大きなスケールで世界を描き出したことか。
ドストエフスキーが小さな暗い部屋で何人かが集まりやんややんやと奇怪な言葉のやりとりを繰り返す物語を書くとすれば、トルストイはロシアやカフカースの広大な世界や華やかな貴族の大広間のイメージだ。
ドストエフスキーが人間の内面の奥深く奥深くの深淵に潜っていく感じだとすれば、トルストイは空高く、はるか彼方まで広がっていくような空間の広がりを感じる。
深く深く潜っていくドストエフスキーと高く広く世界を掴もうとするトルストイ。
それをこの二羽の鷲から私は改めて感じることとなった。
トルストイはカフカースを舞う鷲だったのだ。
今回の記事は以前当ブログで公開した以下の記事を再構成したものになります。
この記事では前回の記事で紹介したグヴェレティの滝についてもお話ししています。ぜひこちらもご参照ください。
以上、「ロシア国境近くのダリアリ渓谷へ~トルストイはカフカースを舞う鷲だったのだ」でした。
次の記事はこちら
前の記事はこちら
関連記事