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ルーブル美術館のマニアックな楽しみ~ドストエフスキーも愛したクロード・ロランを堪能!

パリといえばやはりルーブル美術館を思い浮かべる方も多いだろう。

ミロのヴィーナスやダ・ヴィンチの『モナ・リザ』などあまりに有名な作品がてんこ盛りのお化け美術館だ。

だが、ドストエフスキーに関心を持っている私にとっては実はこの美術館はノーマーク。正直、特にこれといってものすごく見たい作品があるというわけでもなかったのだ。「有名なルーブルだし、せっかくだし行っておきますか」くらいのものだったのである。

しかし実際にここを訪ねてみて、そんな軽率なことを考えていた自分を大いに恥じることになった。この美術館はやはり評価されるべくして評価されている素晴らしい美術館だった。今さら私がこんなことを言うのもおこがましい話ではあるが言っておこう。「やっぱりルーブルはすごかった!」

ルーブルに入るにはいくつも入り口があるのだが、私は北のパレロワイヤル側から敷地内に入場した。

ルーブルといえばやはりこれだろう。ガラスのピラミッドだ。夜のライトアップはさぞ綺麗なことだろう。

入ってすぐのエリアは彫刻が展示されている。そしてこの写真の先に少しだけ見えているのだがこれがルーブルの顔のひとつ、「サモトラケのニケ」だ。

階段を上った先の広間にどんと立っているニケ。

恥ずかしながら、私はこの彫刻のことをほとんど何も知らなかった。ルーブルのサイトやパンフレットにもこの彫刻がかなり大きく取り上げられていたのだが、私はほとんど目に留めることすらなかった。完全に甘く見ていたのである。

しかしどうだろう。私は正味一週間ほどこの街に滞在したのだが、「パリで1番衝撃を受けたものは何か」と聞かれたら間違いなく私はこの「サモトラケのニケ」を挙げるだろう。あまりのショックに私はしばらくここから動けなくなったほどだった。ニケについては次の記事で改めてお話しするのでここではこれ以上はお話しできないが、それほどの魅力を持った作品だった。

そしていよいよ絵画の展示エリアへ。ここにはダ・ヴィンチなどの作品も展示されている。

洗礼者ヨハネ
岩窟の聖母

これらも超有名な名画であるにも関わらず意外とこれらの前は混雑していない。あまり人を気にせず鑑賞することができた。皆『モナ・リザ』のところへ直行してしまうのだろうか。

さて、こちらが『モナ・リザ』のある部屋。やはり大行列。私もこの列に並び、ほんの少しの間だけ近くで観ることができた。だが、う~む、落ち着かない。じっくり観るのは不可能だ。おそらくこれでも割と空いている方だと思う。時間にして10分ほどしか待っていない。だがこれよりもっと混むのだとしたら私はそもそも観ることすらあきらめるかもしれない。

悲しいかな、実はそもそも私はダ・ヴィンチの絵にあまりピンと来ない。おそらく、好みの問題ではないだろうかと思っている。ダ・ヴィンチの圧倒的な画力はわかる。でもどうしてもうっとりするほどにはならない。私はダ・ヴィンチの何が苦手なのだろう。これは帰国してから今にかけてもどうしても解決できない疑問だ。ダ・ヴィンチの完全さが私を遠ざけるのかもしれない。私はダ・ヴィンチよりもミケランジェロが好きだというのがこのルーブルでいよいよはっきりした。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画や『最後の審判』などの、あのダイナミックでドラマチックな作風が私にはたまらないのだ。そう考えるとダ・ヴィンチは数学的な緻密さ、完璧さを感じる。「冷たい」というわけではないのだが、その完全な理性に私は臆してしまうのかもしれない。

さて、この後もルーブルの誇る名画たちを鑑賞しながら進んでいったのだが、人もまばらなある展示室に入った瞬間、私は思わず「あっ」と声を上げてしまった。

まさかここでクロード・ロランの絵に出会えるとは!!この時の驚きはもう、息が止まりそうになるほどだった。

というのも、私にとってはクロード・ロランといえばドイツのドレスデン絵画館のイメージしかなかったのだ。この画家の絵がルーブル美術館に所蔵されているということがすっかり抜けていたのである。

それにしても、なぜ私がこんなにもクロード・ロランに思い入れがあるのかというと、このクロード・ロランこそドストエフスキーが愛した画家だからなのだ。

クロード・ロランの理想風景画(過去の理想郷 アルカディアを題材)は17世紀当時からヨーロッパ人を魅了していた。そしてその影響はその後も絶大で、ドストエフスキーもクロード・ロランの絵に強い愛着を持ち、その影響は彼の長編『悪霊』『未成年』に見ることができる。

ドストエフスキーが直接言及するのはそれこそ下のドレスデン絵画館所蔵の『アキスとガラテイア』という作品だ。


『アキスとガラテイアのいる風景』1657年 アルテ・マイスター絵画館所蔵 Wikipediaより

だがここルーブルにはクロード・ロランの代名詞とも言える「舞台全体を優しく照らす夕陽の光」が描かれた数々の名作が展示されている。これは私にとっては心の底から嬉しいサプライズだった。

『タルソスに上陸するクレオパトラ』
『クリュセイスを父親のもとに送り返すオデュッセウス』

クロード・ロランの展示室には残念ながらほとんど人は来ない。来てもすぐに通過していってしまう。これは本当にもったいないと思う。ドストエフスキーに縁がなかったとしてもクロード・ロランの絵はとにかく素晴らしい。

クロード・ロランはイギリスの画家ウィリアム・ターナーに巨大な影響を与えたことでも知られている。ターナーについては以下の記事でお話ししているのでぜひ参照して頂ければ幸いである。

他にもルーブルではフェルメールやレンブラント、ラトゥールなどの絵も観ることができた。

フェルメール『レースを編む女』
フェルメール『レースを編む女』
ラトゥール『灯火の前の聖マドレーヌ』

光と影を巧みに描き出した彼ら巨匠の作品を観ることができたのも素晴らしい体験だった。残念ながらお目当てのひとつだったフェルメールの『天文学者』が出張中で観れなかったのが心残りだ。

完全にノーマークなまま来てしまったルーブル美術館だったが、すっかり私は魅了されてしまっていた。「甘く見ていました。大変失礼いたしました」としか言いようがない。

次の記事では改めて『サモトラケのニケ』についてお話ししていく。あまりの素晴らしさに本当に度肝を抜かれてしまった。この感覚はサン・ピエトロ大聖堂のミケランジェロのピエタ以来だろうか、それほど素晴らしい作品だった。ぜひ引き続きお付き合い頂ければ幸いである。


今回の記事は以前当ブログで公開した以下の記事を再構成したものになります。

今回の記事ではお話しできませんでしたが、この元記事ではクロード・ロランの他にもニコラ・プッサンの絵画についてもお話ししています。


ニコラ・プッサン(1594-1665)Wikipediaより

このプッサンという人物もクロード・ロランとほぼ同時代の画家で、この後の絵画界に絶大な影響を与えたことで知られています。日本ではあまり知らていない画家ではありますが、非常に興味深い人物です。もちろん、その作品の素晴らしさも折り紙つきです。この元記事ではそんなプッサンについてもお話ししていますのでぜひご覧ください。

また、今回の記事で紹介したクロード・ロランの『アキスとガラテイア』が所蔵されているドレスデン絵画館を訪れた旅行記がこちらになります。

ぜひこちらもお楽しみ頂けましたら幸いです。

以上、「ルーブル美術館のマニアックな楽しみ~ドストエフスキーも愛したクロード・ロランを堪能!」でした。

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