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時代の尻拭い∼白旗宣言∼

以前も書いたが、私は生活困窮者自立支援制度に基づく『就労準備支援事業』を受託しているNPO法人で、相談員として働いている。
(就労準備支援事業とは・・・様々な理由により直ちに就労することが困難な方に向けて就労に向けた準備としての基礎能力の形成からの支援を、計画的かつ一貫して実施する事業です。厚生労働省の手引きより。分かりづら…。)

現場で日々『様々な理由により直ちに就労することが困難』な方に接するようになって5年が過ぎた。

最近よく感じるのは、「この仕事は『時代の尻拭い』なんだな。」という思いだ。

この5年、誰一人として『直ちに就労することが困難な理由』が同じ人はいなかった。

ただ、この人にとって今現在『世界は信頼できないもの』である、ということ、そして『世界は信頼できないもの』という考えをこの人に植え付けたのは『時代』だ、という二つは共通していた。

必死に勉強して、誰かを蹴落として傷つけてもいいから戦って戦って戦って『勝ち続けること』。
この価値観を教育によって植え付けられ、友達も家族も自分も信頼できなくなってしまった人。

そんな人達の話を聞き、「この世界はそんなに悪くないかも。」という世界への信頼を取り戻すまでを見届ける。
それはほぼ、『育て直し』だ。


他人が育てた赤ん坊を、ある日突然「やっぱ育てられなかった、あとよろしく。」と腕の中に渡される。

そしてその赤ん坊はバケツリレーのごとく次から次へと私の腕の中に渡ってくる。
よくこんなに次から次へと現れるものだと感心するくらいだ。

私の敬愛する上野千鶴子先生がおっしゃっていた「8050問題は政治の責任。」はその通りだと思う。

私達現場の人間は、政治の尻拭い、時代の尻拭いをさせられてるのだと思う。


私にはもうできない。
自分の子どもと、親の介護と、夫の看護とで精一杯の私には、他人が育てた子どもを、またイチから育て直すことなど、到底できない。
私ごとき人間にできることではない。

やっとそう思えた。
やっと白旗を上げることができた。
熱中症になって、体が悲鳴をあげて、初めてそう思えた。


辞めよう。
このままでは私が壊れてしまう。

1度目の休職の時は辞めようとは思わなかったが、今は辞めようと思っている。

回復途中で気持ちが抑うつ状態なのかもしれない。
数週間経てば、また考えが変わるのかもしれない。

でも今は、「辞めよう」と思っている。

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