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知られざる鍋つゆ市場の真実(ヤミ)

スーパーマーケットの売場で目にする鍋つゆコーナー。一見シンプルな商品に見える鍋つゆですが、実はその背後には緻密なマーケティング戦略と、興味深い消費者行動が隠されています。今回は、経営企画・営業企画の視点から、鍋つゆ市場の最新動向と消費者インサイトについて深掘りしてみましょう。


市場規模の変遷と成長要因

2010年から2020年にかけて、鍋つゆ市場は279億円から448億円へと1.6倍に成長しました。
この成長の背景には、コロナ禍による内食需要の増加だけでなく、調理の簡便性や野菜摂取ニーズの高まりがあります。
2023年度の市場規模は407億円となり、前年比96.7%とやや減少しましたが、これは暖冬の影響による一時的な現象です。5カ年の年平均成長率は101.5%を維持しており、市場の底堅さを示しています。


各社POS集計データより筆者推計

商品形態の進化と消費者ニーズ

形態別シェア

市場の約8割をパウチタイプが占め、残り2割を個包装タイプが占めています。特に個包装タイプは年平均成長率102.9%と高い成長を示しており、単身世帯の増加や個食化トレンドを反映しています。

新たな市場の創造

名店監修系鍋つゆは約32億円の市場規模となり、全体の約8%を占めるまでに成長。若年層の取り込みに成功し、新たな市場セグメントを確立しています。

世帯構成の影響

2025年には平均世帯人数が2.1人、単身世帯割合は40.1%に達する見込みです。この変化に対応し、個食対応型の商品開発が進んでいます。

消費シーンの多様化

従来の「家族団らん型の鍋」から、「おかず型の鍋」へとシフトする傾向が見られます。平日の夕食メニューとしても定着し、より日常的な食事として位置づけられています。

季節別販売動向

グラフが示すように、販売数は12月に最大となり、約220万個に達します。一方で、平均単価は1月が最も高く、252.8円を記録。これは年末年始の需要増加と価格戦略が反映された結果です。

消費者行動の特徴

購買タイミングの重要性

9月に初めて鍋つゆを購入した消費者は、その後のシーズンを通じて購入頻度が高くなる傾向があります。これは早期の購買体験が、その後の継続的な消費行動につながることを示しています。


各社POSデータより筆者推計

最新トレンドと市場の変化

味の変遷
2-3年前まではあごだしや寄せ鍋などさっぱりした味が主流でしたが、現在はみそベースの商品が好調です。また、名店監修系鍋つゆが市場の約8%(32億円)を占めるまでに成長しています。

新たな価値提案

ミツカンは「職人一丸」シリーズを展開し、有名店の味を家庭で再現できる商品を投入。若年層の取り込みを図っています。

年齢層別の消費傾向

商品別購買層の特徴
ごま豆乳鍋つゆは40-50代が中心購買層となっており、寄せ鍋つゆは50-70代と幅広い年齢層に支持されています。この違いは、味の好みだけでなく、食生活スタイルの違いも反映していると考えられます。

販売チャネルの戦略

スーパーマーケットでは約70種類の鍋つゆが展開され、特設コーナーだけでなく、精肉・青果・鮮魚など、関連食材の近くにも配置されています。これは購買動線を考慮した戦略的な売場づくりの一環です。

今後の市場展望

若年層向けの新商品開発や、SNSを活用した情報発信の強化など、各メーカーは新たな市場開拓に注力しています。特に、キャンプや鍋パーティーなど、新しい食シーンの提案による需要喚起が進められています。このように、鍋つゆ市場は単なる調味料市場ではなく、消費者の生活スタイルや価値観の変化を反映した、ダイナミックな進化を遂げているのです。

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