GANG PARADEは2024年の日比谷野音に何を見るのか - 2023年のGANG PARADEとこれから -
今週末の1/28(日)にGANG PARADEが日比谷野音に立つことになっている。
GANG PARADEを知っている人なら、2019年、大阪・日比谷野音で行われたCHALLENGE the LIMIT TOURのことを知らない人はいないと思う。GANG PARADEの代名詞とも言えるステージで、GANG PARADEの一つの到達点だった―――私は当時の彼女たちを知らないので、いろんな場所で語られる内容を見るに、そのようだった、と思う。
そして、この野音は色んな意味でのターニングポイントでもあったようだ。それは、2020年のカミヤサキの脱退発表、ギャンパレ活動休止とグループの分裂へと繋がっていく。
前回の野音と分裂を経て、今回の野音がどういう意味の公演になるのか、分裂後から彼女たちを見てきた一人のファンとして伝えたいと思ってこのnoteを書いている。
この野音では、少なくとも私達が過去のCHALLENGE the LIMIT TOURから想像できる「GANG PARADEの野音」とは比べられない、全く違うものを見られるんじゃないかと思っている。
以前の彼女たちが、カミヤサキという精神的支柱を失くし、泣きながらどうしていいかわからないと見失ってしまった道を見つけて、新しいグループとして彼女たちなりに見出した答えが見られるステージだと思う。前回の野音を期待していると結構肩透かしを食らうのではないかなと思うし、過去を知っている人もそうではない人も、すべての人に新しいGANG PARADEとして好きになってもらえるような、そういうグループになったと思う。
彼女たちがどのようにこの1年間を活動してきたのか、2024年のアイドルとしてチューンアップされたGANG PARADEについて、2023年を振り返りながら書く。
WACKの音楽性の変化
2023年というのは、GANG PARADEが所属しているWACKにとっても印象的な年だった。6月のBiSH解散というのも勿論大きなイベントだったし、名物プロデューサーである松隈ケンタがサウンド・プロデュースから離れた年でもあった。
GANG PARADEにとっても、2023年は確実に音楽性、ひいてはグループの方向性が変わった1年だったと思っている。というのも、再始動後の2022年にリリースした曲たち―「PARADE GOES ON」「シグナル」「Priority」など―はすべて松隈ケンタ作曲だったし、作詞も松隈ケンタとWACK社長の渡辺淳之介が行っていた。このタッグは非常にWACKらしくて、何度でも続いていくことを示唆していくエモーショナルな歌詞とそれを強調するサウンドが印象的だった。
2023年になってリリースされた曲たちはうって変わってダンスミュージックが中心になっていて、代表的な出来事で言えばトラックメイカー・DJとして有名なKOTONOHOUSEが参加した。ドラマ主題歌にもなった「Träumerei」から始まり、「Gangsta Vibes」、2024年の年始に公開された「躍動」は今回の野音の代名詞的な曲になりそうだ。
GANG PARADEというのはもともと、前身グループであるプラニメやPOPから、WACKの中でも異色なダンスミュージックなどの多様な音楽ジャンルをやってきたグループだったと思う。したがって2022年から2023年の音楽性の変化については(実際は気になる人はいても)あまり大々的に語られてこなかったのではないか、と思うが、この変化によって、同じ13人体制でも2022年のGANG PARADEと2023年のGANG PARADEはガラッと雰囲気が変わった。つまり、元々WACKらしいとされていた泥臭いストーリーやエモさがフィーチャーされている状態を振り切って、よりコンテキストを排除した見せ方を新しく見出し、それに答えてきたのが2023年のGANG PARADEだった。
大人数を生かしたダンスやフォーメーション
GANG PARADEというグループは、現在振付師として活躍するカミヤサキを筆頭に、事務所の中でもダンスやフォーメーションなどのステージパフォーマンスに力を入れていたグループだったのではないかと思っているが、2024年のGANG PARADEにおいてもその魂は健在で、これが前述した音楽性の変化と非常に相性がいい。13人体制になってからは、南流石振り付けの「Priority」や東京ゲゲゲイ振り付けの「SUPER PARTY PEOPLE」など難度の高い振り付けも着実に消化していて、パフォーマンスの練度はライブアイドル界の中でも非常に高いように思う。
メンバーが口々に「大人数を活かした迫力」「ステージの端から端までの情報量」と言うように、ここは明確に今のGANG PARADEの新しい強みとして捉えられている。これらの構成は、キャン・GP・マイカ、月ノウサギ、カ能セイの3名からなるパフォーマンスチームを軸に制作していたり、フォーメーションや作詞においてもメンバーの共作が目立っており、メンバー全員が主体となって制作に関わっていることも、前回の野音におけるGANG PARADEと大きく変わったところだと思う。
TikTokと渋谷トレンドリサーチネクストトレンド「チャンベイビー」
WACKのようなライブを主体としてZeppなどのライブハウスを回っているライブアイドル界隈において、2023年はTikTokが重要なキーワードになった年だった。年末にこんな記事が上がっていた。
新しい学校のリーダーズやFRUITS ZIPPERがTikTokを足がかりに大きく集客をのばし、紅白進出やアリーナ公演を果たした。もちろんブレイクの要因はそれだけではないが、TikTokが確実に無視できない集客装置になった。
これはGANG PARADEでも例外ではなく、2022年末にTikTokアカウントを開設した。前述のSUPER PARTY PEOPLEでメンバーのチャンベイビーがバズったことをきっかけに、渋谷トレンドリサーチ夏ネクストトレンド10選に選ばれたり、その後リリースされた「涙は風に、思いは歌に」ではガオガオダンスを発信して有名なTikTokerに使われたりしている。
今の約半数は前回の野音を経験していないメンバーであり、2023年3月からは新しいグループKiSS KiSSが始まるなど、よりフレッシュでアイドルらしさを内包したグループになった。
何よりチャンベイビーがそのポテンシャルを遺憾なく発揮していてめちゃくちゃ可愛い。余談だが、1/24(水)まで写真集刊行を目指してTikTokチャレンジをしているので見てみてほしい。
広がる客層と変わらないもの
GANG PARADEの特徴として、客層が非常にバリエーション豊かである。WACKでも珍しく半数が女性ファンだったり、あるいは子連れの家族だったり、老若男女いろんなファンがいるグループだと思う。これは彼女たちが積み重ねてきた歴史の長さによるものもあるが、どんな人でも巻き込んで楽しくさせてしまう人柄だったり、それが愛されてきた結果でもあると思う。
2023年に限らず、過去の多様な音楽性やグループの変化にも関わらずファンが絶えないのは、おそらくそういう彼女たちの人柄が為せる技で、これはきっと将来にわたって変わらないGANG PARADEの魅力の一つなんだろうと思っている。個人的には、今の彼女たちは私が見てきた数年の中でもすごく面白い段階にいると思っていて、長くからのファンも初めてのファンも分け隔てなく楽しませるような、メジャーアイドルとしての新しい形をこの1年で見つけたのではないかと感じている。
過去一度でも関わった人には、そんな彼女たちがたどり着いたひとつの答えを見てほしいと思うし、そんなことは関係なく新しく興味を持った人たちも気兼ねなく楽しめるライブやイベントになっているので、この記事が彼女たちの今の活動を見たいと思うほんの小さなひと押しにでもなったら嬉しい。
ちなみに、2024年のWACKについては、全グループ携帯電話での動画撮影が許可されたり、オールスタンディングのフロアやパーテーションなしの特典会が戻ってきていて、ようやくコロナ禍前の空気を取り戻しつつも新しいフェーズに進みそうだ。ぜひ気軽に遊びに来てGANG PARADEの沼に沈んでほしい。なにせ彼女たちはとても人たらしなので。