読後感想「イマムラ」/浅生鴨さん
「ブンガクフリマ28ヨウ」を読んでの感想、浅生鴨さんの「イマムラ」。
「わたしのしぶとい生命線」と「ラブバード」は実写かアニメで映像、「横断歩道の呪い」は絵本になるといいなって感想を抱いたけれど、この「イマムラ」は、小説のまま朗読してもらいたい。もしくはラジオドラマ化。
地形を含めた情景も、雪子の部屋、家、家族、全て自分の頭の中で映像化しながらお話を聞きたい。もちろん「イマムラ」も私の不完全な想像の廃屋のまま。
音はどうかな。それらも朗読がいい。
鳥の声だけ音声にするのもいいかな。
雪子の通う道のりを思い浮かべたら、浅生さんの小説「エビくん」で思い浮かんだ二つの山と同じになった。絵を上手に描く人はたぶん思いつかないような、遠近法も方位方角もめちゃめちゃな地形が頭の中で描かれている。エッシャーのだまし絵のように、ほんとはうまく繋がっていない道が書いてある。
でもそのままでいい。文中の細かい描写をヒントに、頭の中で想像しながら聴くのも楽しい。
冒頭でメラミンスポンジが登場して、このお話はそれほど遠くない過去の、ほんとにあったお話なんだよ、SFでもないよと言われてた気がした。
そのままひとつの文章が5行続いて、まるで小学生の日記のようだったから、雪子本人が自分の気持ちを書いたように解釈できた。その後も時々長い文が登場して、雪子の気持ちに寄り添いやすくしてくれた。
読み終えたあとは自分の子どもの頃を思い出した。
悲しいこと嬉しいこと、子供時代に経験した心を揺れ動かす出来事は、思い出してもらう機会をじっと待っていたみたい。