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学びあいサークル第2回 瞳さん
学びあいサークル 地域を歩く、話す、つながる(下記※1)
機関誌『開発教育』71号の「学びあいフォーラム実践報告」の中で、サークルについても紹介しました。字数の都合で詳しく語ることができなかった内容(「サークルの活動~地域の写真を読み解く」/サークルメンバー5名への個別インタビュー)を6回に分けてNOTEでお届けします。
第2回はサークルメンバーの瞳さんへのインタビューです。サークル参加時にはちょうど知らない街に引っ越したばかりだったという瞳さん。サークルの参加が実生活に及ぼした影響などをお聞きしました。
―参加した時は引っ越してすぐでしたね。(サークルの活動で)写真を撮ってみたり、色々な観点で街を観てみたりして、気づきはありましたか?
瞳:これまでに引っ越しは何度か、つながりのないところに住むことを経験してきました。目的が仕事だと家と職場の往復になってしまって。受け身だと、自分から積極的にいかないと、人との、地域とのつながりはできません。これまでは、よく考えずに、ただ住んでいました。
今回の街ももともとのつながりは無くて。学びあいサークルに参加する前は行く場所は役所か、新しい職場か、スーパーか。同じ道しか通らないんです。サークルで、何かを見つけに行く活動をしてみて、水とゆかりがある町、お坊さんの治水工事が町のベースになっていると知りました。酒蔵があって、日本酒で経済も文化も発展してきたとも。何気なく通勤で使っている駅が、日本酒造りから始まっていたこと、経済発展のために誘致してきた駅だと酒蔵の人に聞いたんです。酒蔵から始まって、豪商が、商人が集まるようになって。市民性が根付いている。まちを自分たちで作っていく精神があると聞きました。まちの成り立ちを知ることができました。
ふだん何気なく歩いている、通っている、暮らしているまちの背景を知り、より彩(いろどり)をもって、見える景色が違ってきました。まちに愛着を持つことにつながったんです。ここまでじっくり自分の住むまちについて考えたのは初めてのことでした。自分一人だったら、こうやって能動的に動くことはなかったと思うと、良いきっかけをもらったと思っています。
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―その後、地元に帰られて、地元について新たな見方が始まったそうですね。くわしく聞かせてください。
瞳:地元にいたのは高校卒業まででした。高校生の行動範囲は限られていますよね。学校、家、親戚、友人…。住んではいるけれど、街の特性や成り立ちを考えたことは、その年齢では当然かもしれないけれど、ありませんでした。帰ってきて、どういう視点で街を見るかを得ているので、新たに見えるものがありました。
具体的には、地元にある、石炭と化石を両方見られるミュージアム。炭鉱で栄えた町で、古生代の化石も出ている土地でもある。小さい時から何度も訪れている場所ですが、久々に行ってみて、あらためて石炭の街なんだなと、そういう産業で栄えてきたんだなと実感しました。
あとは、地域のおまつりについて。これまでは見る専門だったのですが、今年は一歩踏み出して、近くの神社の境内で、おまつりでも披露される郷土の念仏踊りの練習をしているのに何回か行ってみたんです。そして練習している人とコミュニケーションをとってみました。お祭りが9月にあって、そこでもお手伝いをしました。屋台の準備を手伝ったんです。今まで「やる側」に入っていく勇気はなかったのですが、自然と行ってみたいという気持ちになったんです…一歩踏み出せました。行ってみると、目と鼻の先のご近所さんと、ふだんの日常生活では会って話すことがない人とも会って話して。こういう人が地域にいるんだ、という発見がありました。やってよかったと思っています。
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―高校生の目線と大人になって帰ってきた目線と、違いますよね。学びあいサークルがあったからちょっと踏み出せたのでしょうか?
瞳:はい、行ってみようと思えたし、面白そうだと思えるようになりました。まちのことを知るのが楽しいんです。前のまちでもそういう気持ちが芽生えていました。サークルの参加者は積極的に地域活動をしている人が多くて、他の人の話を聞いて、自分もやってみたいと自然に思うようになっていきました。
―都心から離れると人間関係が密ですよね。地域とのつながりが濃くてしんどいと思う人もいるかもしれません。瞳さんは、地域とのつながりが面白そう、知りたいと思っているということですか?
瞳:はい、今もまちのことをもっと知りたいと思っています。
―「ふるさとのことをもっと知りたい」と戻ってきた人が思えることは素敵なことですね。地元にずっといる人にとっても、素敵ですねと言われると、新たな気づきになります。
―最後の質問です。あなたにとって「学びあいサークル」はどんな場所になっていましたか?
瞳:「思っていることを安心して出せる場所」でした。あまり普段は、まちを歩いてこういうことがあったとか、面白いことがあっても、家族以外に共有することはありません。感じたものを自分の中に留めておくだけではなく、外に出せる。出した時に、みなさんがそこから拾ってくれて、広げてくれる。自分の地域との比較をしながら、つなげてくれました。自分もさらに学びが深まり、なによりも、安心して思ったことや感じたことを話せる場所でした。
―知識として知っていた地域と、その人から語られる地域で、見えてくる景色が違うと思いました。その人から聞いたことで身近になって、理解度が深まって、行ってみたくなりますね。
―普通の観光はガイドブックで情報を得ます。最初にオンラインで仲良くなって、その人を訪ねつつその地域の観光をするのは面白いと思いました。新しい観光、旅のカタチとして。
瞳:楽しそうですね。行くのも楽しそうだし、来てもらって案内する案内側も楽しそうです。学びがありますし。誰かに自分の地域のこんな面を知ってほしかったんだと気付くことができますよね。
―THE観光地ではない、新たな旅の形になるといいですね。
インタビューが終わってからも、この夏に瞳さんが訪れたある場所のお話や、取り組んでいること、今後の展望もお聞きするなど、話は尽きず。もっと聞きたいのでサークルで紹介していただくことになりました。また新たなつながりや学びが生まれそうな予感!
瞳さん、どうもありがとうございました。
第3回「ゆうこさん」はこちら
第4回「かなこさん」はこちら
第5回「あきこさん」はこちら
第6回「Aさん」はこちら
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学びあいサークルとは?
学びあいフォーラムを通して各地域の団体と関わってきたけれど、自分の地域とはあまり関わっていない、という思いを持つコーディネーター3人が企画し、2021年からサークル活動を開始した。サークルでは、メンバーが自分の地域を歩き、気づきや発見を共有し、地域とつながることを目的とした。サイトを見てDEARを知った人を含む5名が参加し、コーディネーターを入れた8名(地域は東京3、大阪3、兵庫1、ドイツ1)で、オンラインで活動を開始した。メンバーは毎回、地域を歩き、視点を持って撮ってきた写真を共有し、写真を読み解きながら学びあい、次は地域の人と話してさらに深めた結果を持ち寄る、という過程を繰り返した。互いに知らない地域についてであったが歴史、社会、地域のつながりが掘り起こされていった。次年度にはリアルで会うオフ会やテーマごとの回に発展するなど、内容とつながりが深まっていった。
(サークルコーディネーター:大野のどか、佐藤友紀、中村絵乃)