父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと 31
一九八三年(昭和五十八年)、三月三十一日。その日の尾崎さんは、同じ月の一日に逝去したばかりの小林秀雄を特集した『新潮』を隅から隅まで読んでいたそうです。小林秀雄も、尾崎さん同様に、志賀直哉の門下であり、志賀直哉を敬愛してやまなかった人でした。それゆえ、尾崎さんの失意はひとかたならぬものでした
夜になり、尾崎さんは体調の異変を感じて、習慣になっていた晩酌(一週間でオールドの瓶を一本空けるペース)を控えるのですが、夜九時頃には心臓が苦しいと訴え、躊躇の後にかかりつけの医者が呼ば