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阿川弘之

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作家 阿川弘之の作品の読書感想等
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父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと 31

一九八三年(昭和五十八年)、三月三十一日。その日の尾崎さんは、同じ月の一日に逝去したばかりの小林秀雄を特集した『新潮』を隅から隅まで読んでいたそうです。小林秀雄も、尾崎さん同様に、志賀直哉の門下であり、志賀直哉を敬愛してやまなかった人でした。それゆえ、尾崎さんの失意はひとかたならぬものでした 夜になり、尾崎さんは体調の異変を感じて、習慣になっていた晩酌(一週間でオールドの瓶を一本空けるペース)を控えるのですが、夜九時頃には心臓が苦しいと訴え、躊躇の後にかかりつけの医者が呼ば

【読書感想】阿川 弘之 『井上成美』 (新潮文庫) #わきまえない男

グーテンターク!皆さまこんにちは。フランクフルトのYokoです。 昨日、電子書籍でも500ページ以上ある大作を読み終えました。 この本は『山本五十六』『米内光政』『井上成美』の海軍提督三部作の最終版。Amazonの本紹介にはこうあります。 内容紹介 昭和五十年暮、最後の元海軍大将が逝った。帝国海軍きっての知性といわれた井上成美である。彼は、終始無謀な対米戦争に批判的で、兵学校校長時代は英語教育廃止論をしりぞけ、敗戦前夜は一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭し、戦後は近