採用の二極化
昨今の人手不足を背景に、ありがたいことに僕のところにも多くの採用代行案件の依頼が来るのですが、僕のところに依頼のある会社は大半が中小零細企業なので、採用に予算をかけられない会社ばかりです。もちろん、経営者としてはコストを抑えることを考えるのは当然ですよね。
先週打ち合わせした企業の社長は、予算をかけずに良い人材を採用したいとおっしゃっていました。これまで大手求人媒体に掲載し、月に数名からの応募があり、比較的に応募はあったようですが、自社に合った人材からの応募が来ないようなんです。多い人には5~6回の面接をして入社させても長続きしないなどの課題も見えてきました。この状況だと、媒体にどれだけ予算をかけて応募者が増えても、そのコストは回収できませんよね。単純に媒体掲載予算だけでなく、応募者対応や面接にかかる「時間」というコストもかかっていますからね。さらに、中小零細企業での採用は、採用担当者なんていないので、社長自らが採用業務全般に関わっていて、本業である社長業が疎かになり、そこでの損失も出てきますね。
そんな中小零細企業の多くから採用の問い合わせをいただき、とてもありがたいことなのですが、先にも書いた通り、できるだけ予算を抑えつつ、3ヶ月で2人を採用したいなど、かなり難易度の高い要望をいただくんです。僕も採用の専門家として、依頼を受けた場合には全力を尽くしますが、短期間では僕でもどうしようもできない問題もあるんです(実際には3ヶ月で2人採用することは可能なんですが)。それは、給与・休日・勤務時間・勤務場所などの採用条件、既存社員の意識や労働環境などの社内の問題です。例えば、基本給が¥200,000程度で年間休日が90日、かつ肉体労働など、応募者から見ると、働く魅力が全く感じられない条件で優秀な人材を採用したいといった無理難題を提示してくる企業が増えてきています。つまり、人を雇うこと企業努力もせずに、かつお金もかけずに採用したいんですよね(ある意味正論なのかもしれませんが)。そんな会社の多くは、社長自身の利益を優先し、従業員の給与は低いのに、社長は高級車に乗っているケースが散見されますよね。
反面、自社の改善点を外部の視点から見つけてほしいという前向きな企業もちらほら出てきています。先日、クライアントの社長と採用や労働環境、社員の定着について2日間かけてディスカッションしてきました。その会社は地方の金属加工会社なので、一般の人からすれば、酷暑の中で肉体労働をするイメージがついているような会社ですが、そのネガティブなイメージとは反して毎年順調に採用ができているんです。それなのに、その社長は現状に甘んじることなく、もっと定着率を上げたい、もっと自社に合った人材を採用したいとの考えから、僕の提案を真摯に受け止めていただき、積極的に提案を受け入れてくれています。当然そこにはコストもかかりますが、目の前のコストをケチらず、未来への投資をされています。
採用がうまくいかない企業の社長の特徴として、目の前のコストダウンを優先しすぎて、未来への投資ができていないんです。その結果、採用すらできない、仮に採用できても長続きせず数ヶ月で離職してしまう、また募集をかける、という具合に負のスパイラルに陥り、結果的に無駄なコストがかかっているんですよね。
これからの日本は確実に人口が減ってきて、(外国人が日本で働くメリットがないため)海外からの人材も確保しづらい状況は明らかなので、減少していく労働人口の中で、いかに自社に合った人材を集め、大切に育てることができるのかを、中小企業経営者はいち早く現実に目を向け、未来への投資ができるかが事業を継続する鍵となるのです。