見出し画像

サトシは僕たちのヒーローだった

あのサトシがついにやったらしい。

あのサトシって一体どのサトシかと聞かれたら、答えてあげるが世の情け。

そう、アニメポケットモンスターの主人公サトシのことである。
きっと35歳ぐらいまでの人なら、カタカナで書かれた「サトシ」の文字を見るだけで、彼の顔が思い浮かぶだろう。

25年前にピカチュウ一匹だけを連れてマサラタウンを発った少年は昨日、25年抱き続けたポケモンリーグ優勝という悲願の夢を果たした。

それは渋谷の大型ビジョンでリポートされるほどで、ポケモンを知らない人たちにもそれがどれほどのことかが伝わるだろう。

1993年に生まれた僕が彼と出会ったのは、僕がまだ3歳だった頃。

1997年4月に放送を開始したアニメポケットモンスターは、今年で放送25周年という四半世紀の歴史を誇る。

当時、7歳も歳上だった僕たちのヒーローは今、僕にとっては18歳も歳下の少年になってしまった。

子どもの頃の僕にとって、サトシの何もかもが眩しくてかっこよかった。
僕とポケモンの出会いのきっかけはアニメで、ストーリーは主人公であるサトシにフィーチャーされて展開される。

気合いと根性で試練を打開し、そのハートで敵対していた人物やポケモンたちとも心を通わせることができる、サトシのカリスマ性に憧れたものだった。

その後に手を付けたゲームでは、アニメのストーリーをなぞるような展開に、自分はサトシと同じ世界を生きているかのように思えた。

いつからか、
水タイプのポケモンに炎タイプのポケモンを繰り出し、気合いで相性なんて吹っ飛ばしてやるぜ!と意気込む彼を冷ややかに見るようになったり、

自己中心的で周囲の気持ちを慮らない、等身大の10歳の少年像に嫌気が差すようになってしまい、

自分自身の生活や嗜好も変わり、ポケモンの世界から距離を置いてしまった僕は、彼と違う世界を生きることになった。

しかし、ネットの世界に身を置いている以上、意図せずサトシの近況を聞く機会は多かった。

最近はポケモンの相性や特性を重視してバトルの戦略を組み立てていること。
理性的な面が発達して人格的に成熟し、後輩トレーナーの指導をする程に成長したこと。

お互い違う世界で、彼も僕たちと同じように成長していた。
その事実がなんだかとても嬉しくて、疎遠になってしまったけれども心の底での繋がりを信じている旧友の近況を人伝てに聞いているような気分だった。

25年間、何か1つのことを追い求めたことはあるだろうか。
何度失敗しても、25年間追い続けたことはあるだろうか。
たった1人の友達と、行ったこともなければ当然知り合いもいない外国に、夢を叶えるために数年に1回のペースで旅に出たことはあるだろうか。
悪の組織やモンスターと敵対し、彼らから世界を10回以上救ったことはあるだろうか。

彼は10歳という若さで、ピカチュウと共にここまでのことを25年間で成し遂げてきた(何だか意味不明な文章になっているが)。

サトシにも未熟な面があるとは言え、元から僕が馬鹿にできるような存在では決してなかった。

自分が思っていた以上のことを彼は25年間成し遂げてきたという彼の執念と努力に、誠に恐れ入った。

ポケモンリーグで25年越しに悲願の優勝を成し遂げた彼の偉業を、ずっとポケモンから離れていた私たち大人もその吉報を受け取り、こうしてネットで賛辞を送っている今、

サトシに憧れていた子どもの頃の自分に戻っているような感覚を、きっとあなたも感じているだろう。

彼には、たくさんの夢をありがとうと伝えたい。

Best regards⭐️Noel🐬