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SDGs推進と技術移転

ビジネスとしてのSDGs

「持続可能な社会」といえば人権や平等、ジェンダーなどが取り上げられることが多いだろう。しかし、ビジネスの世界ではそのためにかなりラディカルな舵取りが行われている。
特に
7 AFFORDABLE AND CLEAN ENERGY(手頃でクリーンなエネルギー)
13 CLIMATE ACTION(気候変動への取組み)
この達成のために産業構造が大きく変わろうとしている。

例えば、以前から言われていたことではあったが、欧州連合(EU)の主要機関は2022年10月27日、2035年にガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止することで合意したと報道された。
これは何を意味するのか。

葬られる技術

従来、内燃系エンジンは日本が得意とするところであり、80年代には内燃系エンジンでは世界を席巻し、メルセデスもBMWもワーゲンも大打撃を受けたのだ。
このためにどれだけの技術者が日夜研究を重ね、サプライチェーンはクオリティに保つため厳しいレギュレーションを自らに課し、技術を向上させてきたことか。
近年では、プリウスに代表されるハイブリッドの燃費の良さはそれだけでも大いにSDGsに貢献するはずだった。
しかし、先のニュースによると、この内燃系に貢献してきた技術そして、それに携わってきた人材は2035年以降お払い箱になるということなのだ。


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必要とされる技術が変わる

大通り沿いに沢山あった、多くの自動車修理工場はどうなるのであろう。
車がEVに代わり、故障となった場合、従来の修理工場では対応できるのだろうか?
内燃系エンジンの製造や修理に携わってきた方々の技術はどうなるのだろうか。この方々の雇用は?
EVに代わったら必要とされるのは、システムエンジニアであり、デバイスや蓄電池、充電池のことがよくわかっている者になるだろう。
EVのタッチパネルに不具合が生じた場合、今の街の自動車修理工場で対応してくれる可能性は低いだろう。

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国連・EUの主導権

鼻持ちならない批評家はこのように言うかもしれない
「そうなることは予測されていた。新たな情報や技術を取り入れず、大手の下請けとして仕事してきた結果だ。」
批評する側はそれでよいが、実際は困難だったはずだ。
世界の情報などほぼ受け身では入らないガラパゴスな日本で、しかもトヨタやHondaという、そうは言っても世界でトップクラスの自動車メーカーを擁する日本で、エンジンの仕事がなくなるなど想像できただろうか。
コロナ騒動をきっかけに、「世界は足並みを揃えて、課題に向き合うべき」という暗黙の合意形成は強まり、特に国連の発信は以前より大きなインパクトを持つようなった。
また、EU連合は、エネルギーや気候変動においては強い主導権を握っており、EUが宣言したレギュレーションに関しては、遠い日本でも、もはや無視はできないのだ。

技術移転を急げ

先にEV化における、葬り去られる技術について述べたが同じようなことが多くの業界、業種で起きていくのだ。
ガソリンスタンド、石油や天然ガスを輸送するタンカー、精製技術、これらに携わってきた方々の雇用。
イノベーションだ、環境だ、と言うと聞こえはよいが、その背後では葬り去られようとしている膨大な技術や人材がいるのだ。
よって、これは国主導で、衰退技術と今後必要とされる技術の親和性や類似性を取りまとめ、新産業構造へ大転換するための技術移転方針を建てなければ、SDGsと引き換えに大リストラと大失業時代の到来をむかえなくてはならなくなるだろう。

Baton

国には期待したいが、この手の話で日本がうまくいった前例がない。
日本が今後経済回復するには、新技術開発も必要だが現行の技術をどう新産業構造の中で移転させ、今までの産業で活躍してきた人材を活かせるかが重要になると思っている。

#SDGsへの向き合い方


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