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ESGに経済学を活用!慶応義塾大学経済学部教授 坂井豊貴氏ご講演

こんにちは、NEXCHAINです。

NEXCHAINでは、会員企業によるコーポレートピッチを定期的に開催しています。

今回は、会員企業の株式会社ディアブル 様よりご紹介がありました慶應義塾大学経済学部教授 坂井豊貴 氏に「ESGの経済学」についてご講演いただいた内容をかいつまんでお届けいたします。


NEXCHAINコーポレートピッチ・オンラインサロンとは

NEXCHAINでは、会員企業によるコーポレートピッチを定期的に開催しています。テーマはそれぞれの会員企業から持ち寄って頂き、会員企業の業界課題や知見・アイデア等を他会員企業へ発信します。

新しい知見やフィードバックをもらうことでアイデアのブラッシュアップや共創のパートナーを募集する活動です。

これまでに10社以上の会員企業によるコーポレートピッチ、累計30回以上のオンラインサロン(意見交換会)を実施致しました。中には、コーポレートピッチをきっかけに一緒に共創したいという企業が集まり、個別検討から分科会へ発展したケースもいくつか生まれています。詳しくは別の機会にお話できればと思います。

これまでコーポレートピッチの内容は会員外には公開しておりませんでしたが、今後は会員企業と登壇者のご了承が得られたものについて、noteでも発信していく予定です。ご興味がある方はNEXCHAINのnoteアカウントをフォローください。


慶應義塾大学経済学部教授 坂井豊貴氏「ESGの経済学」

坂井氏 ご経歴


慶應義塾大学経済学部教授、Economics Design Inc.取締役、株式会社デューデリ&ディール・チーフエコノミスト。ロチェスター大学経済学博士課程修了(Ph.D.)。主な著書に『多数決を疑う』(岩波新書、高校国語の教科書に掲載)、『マーケットデザイン』(ちくま新書)など。著書はアジアで翻訳多数。専攻はメカニズムデザイン。取引ルール、投票方式、スコア関数の設計実務に従事。

坂井氏 ご講演内容

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「経済学を使ったらこんなことができるよ」ということをESG のE、S、Gをキーワードにお話しさせていただければと思います。

経済学のビジネス実装は、割と最近盛り上がっていることです。

経済学者の知見をビジネスに活かそうじゃないかというものです。日本だと珍しいことですが、アメリカでは20~30年前から学問を含む無形資産をビジネスに取り入れるのに非常に積極的です。日本でもようやくその流れがやってきたと我々は感じています。

今日はESGがテーマです。昔は「ただのきれいごとじゃないか」「企業の社会的責任(CSR)と同じようなものではないか」と思っていました。ところが様子を見てみるとそうではありません。

CSRはやるかやらないか自由な選択科目であるのに対し、ESGは必須科目になった感を強く持っています。ちゃんとやらないと不利益を被るよという世の中の状況、あるいは国際関係の中でそうなってきていると思います。

一方で、当然ながら企業は利益を上げないと生き残っていけません。そういうわけでESGが利益に反するのであれば、どれくらい大真面目に取り組めばいいのか、あるいは取り組んだらどんないいことがあるのか。そういうことを多くの方が考えている状況ではないかと思っています。

まずはE、Environmentです。自然環境にフレンドリーな商品を作った場合、消費者はどれくらいの良さを感じてくれるでしょうか?

ここでは金銭単位で良さを計測します。企業活動にとって金銭単位は非常に重要な単位だからです。これは非常に難しい問いのように思えます。

ところが、金銭換算価値を計測するメソッドは、経済学では歴史が古く、議論が蓄積されています。とりわけ「マーケティング・サイエンスにおけるブランド価値の計測という問題」とみなすことができます。というのは、環境に優しいものを作ったという事実が消費者にプラスの影響を与えるからです。

もちろん企業や商品によって金銭換算価値がどれくらいになるかは異なります。とはいえ、既存の研究を見ている限り、自然環境に配慮した投資が売り上げに約8倍のインパクトがあったという論文もあり、結構プラスの効果があるのではないかと私は考えています。

個々の商品、企業について消費者がどれくらい高く評価してくれるかは、アンケートや実験で図ることができます。精緻に設計されたアンケートであれば、参考情報としては有用なものになり得ます。データの処理をきちんとやったら、完璧とは言わなくともそれなりに有用な情報が得られるはずです。

次のSはSocietyです。

とある企業が環境保護にお金を投じたといたしましょう。その活動は投資企業の売り上げに戻っていないとはいえ、社会に価値を提供できているはずです。それを証明する必要は往々にしてあるわけです。

例えば株主から「株主に還元するはずのお金じゃないのか」と言われてしまうかもしれない。その時に、Societyに極めて高い投資効率で価値を提供できているときちんと説明することができれば納得してもらいやすいです。

今ESGは権威性が強いというか、良いこととして社会で認識されているので、「Societyにこの投資は十分に価値提供できている」と言えたら納得されやすくなります。ただし、曖昧に価値あることをしているんだと言っても受け入れてもらえない。厳密に金銭単位で推計することが非常に重要になります。

これには環境経済学で培われた評価手法を使います。環境経済学では、市場で売買されていない自然環境の経済価値を計測するということをやります。

例えば売買されていない干潟の価値とはどれ位なんだろうとかです。干潟にはまだ人が住んでいないので開発されやすい、そうすると、干潟は渡り鳥が休む場所として有用なんだけど簡単につぶされてしまうと、そういう時は人々が干潟に対してどれくらいの価値を感じているのかをきちんとした手法で計測するとより実りのある議論になります。愛知県の藤前干潟では2960億円という非常に高い金額が計測されました。

ESGでどれくらいポジティブな影響が自社にあるのか、あるいは社会にあるのかというのはこれらの手法を使うと計測することができます。重ねて言いますと、完璧に計測ができるということではないんです。ただし現時点で人類が使える手段のうち、相当優れたやり方で計測ができます。

最後はG、Governanceです。

不祥事の対策やリスク管理に企業のGovernanceを強化せよとの論は強いです。しかし形式的な議論が過度に多いように思います。

例えば、社外取締役を置いただけで、取締役会の意思決定が自動的に改善するわけではありません。その人に情報を何も与えなかったら、むしろ意思決定のノイズにもなり得るんですね。

そもそも人間の集団は、どのようであれば不祥事を防げたり、リスクを正しく管理できたりするのか。その議論が横で伴走していないと非常に偏ったものになると考えています。

このあたりは、会議の経済学が対応できます。人間の集団はこのようであるとうまくいく、あるいはうまくいかないというのは、理論とか統計学もそうなんだけど、実験研究が多くあって参考になります。

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最後に

いかがでしたか?今回のご講演には、20名以上の会員企業の方々から申込を頂き、その後のオンラインサロンへ移行し、意見交換を行い、多くの質問があり、非常に盛り上がりました。

※オンラインサロンの内容は、情報開示範囲の規定に従い、こちらでは割愛させて頂きます。

前回 は社外の人と積極的に交流を持ってご自身のアイデアをどんどん発信し、本音の意見を貰える関係を築いていく重要性をお話しました。

今回紹介した、社外の人と意見を交わすコーポレートピッチの仕組みを活用してアイデアのブラッシュアップに使うことができます。

ご興味のある方はNEXCHAINへお問い合わせください。


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