楽典が課される大学を受験する方へ
前回書いた通り、近年、音楽学部志願者は減っているのに加えて、楽典を課さない大学も増えてきた。そのため、この投稿内容はあまり需要がないだろう。しかし、希少な「大学入試に楽典が必要だ!」という人に、一応、都内の高校で受験のためのソルフェージュクラスを担当した経験がある者として書けるだけのことは書いてみたいと思う。「すでに私は素晴らしい先生に師事しているので結構です✋」という方は、これ以上読まなくても全然構わないですが、全く実にならないことは書かないつもりです。
楽典には「これ、一強」というテキストがある。まず、これができなくてはいけない。むしろこれさえできればいいと言ってもいいだろう。
「私は超難関音大を受けるのだからこれでは足りません!」という人もいるだろう。それでも、後半の問題集は何度か繰り返しやってみてほしい。すべて間違えなくなるまでやることが大切。なぜかといえば、楽典の試験はスピードと正確さが勝負だから。たとえば60分の試験なら30分、遅くとも40分で解き終わってほしい。そして残りの時間で、もう一度初めから解き直すくらいの時間を確保した方がいい。なぜなら唯一、満点が狙える科目だからだ。満点を狙わない手はないし、以前は満点をとってあたりまえと言われていた。そういう意味で、小さなミスが足を引っ張るから「スピードと正確さ」を身につけて欲しい。そのため、問いごとでいいので毎回時間を測り、記録しておくと良い。そうしたら、初めは時間がかかるかもしれないけど、次第に速くなっていくはずだから。それが力になる。
そうしたことを続けていれば、音程・音階・近親調・和音に関しては楽譜を見た瞬間にわかるようになるだろう。また、調判定は譜例を見ただけで頭の中で音が鳴るようにしたい(ここは新曲視唱と聴音との関わりがある)。そうすれば、すぐに答えはわかるはず。
移調課題はこのテキストに留まらず、自分が聴音のレッスンで取った大譜表のもの(初めは単旋律でも良い)を移調してみることをおすすめしたい。これは私が実際音高受験の時にしてきた方法である。レッスンとは別の五線紙を用意しても良い。そして移調にに慣れてきたら、ハ音記号の何種類かにも書き変えてみるのも良いと思う(慣れないうちは、加線があまり多くならないように先生に指定してもらうのが良い)特にハ音記号を読まない楽器専攻群が多いから、ハ音記号に慣れるのにも良い方法だと思う。そうすればクレ読みも早くなる(入試になくても入学したらやるので)。五線紙にたくさん書く数が多くなれば記譜が速くなるから、移調の解答時間短縮につながる。
こうした意味では、「楽典を課されない大学」でも音楽を学ぶならば、この『楽典』はやっておくものだと思う。なぜなら自分の演奏に生きるからだ。
上記のテキストだけでは、足りない大学もある。(近年の試験課題を見ていないのでなんとも言えないけど、東京藝術大学、東京音楽大学、国立音楽大学、桐朋学園大学などは必要かも)そういう方は以下のテキストを使うのが有効だと思う。
私が大学受験に向けた楽典やソルフェージュ指導をしていたのは2021年までだったけど、それから10年遡って考えてみると、2021年時点でもかなりの大学が易化しており、同じような難易度であっても合格しやすくなった。ただ、こうした現状に甘んじることなく、音楽を一生続ける気持ちがあるならやってみて欲しい。
こんなこと、私がわざわざ書くことではないが「楽典」は音大(または音高)に合格するために勉強するわけではなく、入学後に和声やソルフェージュを続けるための基礎ができているかどうかを測るものだけのものだ。だから上述したように「満点」を取れるようにやってほしい。そして、入学後和声学などを学べば*自分の演奏に生きてくる。
ただ、音を追っていくだけのような演奏にならないように、こうした基礎理論を学ぶことは本当に大事だと思う。練習時間との戦いもあるけど、練習できない夜や移動時間にぜひ、取り組んでほしい。また、基礎知識(音楽史のようなもの)を出題する大学もあるので、作曲家に関する本や、演奏会に足を運んだ時はプログラムノートなどを読むことも大切にして欲しい。音が出せるだけの人にならない。作品の解釈や意味を考えて演奏できる人になる。そうした志を持った人のために音楽学部というのは存在すると思っている。
私が書いたのはもちろん、一例です。勉強方法は様々。ご自身の先生が指導してくださっていることを参考にするのがまず第一ですが、もしこの投稿が何か解決のひとつになってくれたら嬉しいです。
*追記=もちろん、入学前に演奏が専門でも和声などを学んでいる人もいなくはないことは、承知です。あくまでも今「楽典」に困っている人のために書きました。
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