GoogleもSpotifyも超えられない信頼筋のレコメンドとバーチャル思い出迷子
・3連休の最終日。
・ハッ、と目が覚めて、「最終日じゃないか」という絶望が頭をよぎる。
・と、同時に、まだ終わってなかった。良かった。という安心感が訪れる。
・そして、起きてみれば実際休日なわけで、だんだん心も晴れてくる。
・天気は悪いが、それもよし。
・今日もしっかりと噛み締めて生きていこう。
・有意義に休みを使いたいというなかば脅迫的な観念に背中を押され、朝の家事もサクサクと進む。
・エアコンのフィルターを掃除して以来、部屋干しの洗濯物の乾燥もサクサクと進む。
・悪いことばかりではない。
・さて今日はどのように過ごそうかと思案しながら、ちょっとインスタなんか見ていると、古着アカウントが目に飛び込んでくる。
・ミリタリーものを見ていた履歴から、ミリタリー古着のアカウントがたくさんフィードされてくる。
・かっこいい。ミリタリーはいつの時代も少年を惹きつけるなにかがある。
・ミリタリー。ものによっては、最近はけっこう高値で取引されているらしいことは噂には聴いている。
・20年前ぐらいはそんなふうではなくて、どこの古着屋でもそこそこの価格で買えたように思う。
・そんなものを見ていると、古着屋に行きたくなってきた。
・いかん。つい昨日、仕入れは一旦止めてインプットだと決意したばかりではないか。
・気持ちを強く持て。
・と思って次のフィードをみていると、シニアのかっこいい古着好きおじさんたちの画像が現れた。
・ここでも、細身のシニア(おじいさんと言ってもいい方たち)が、ミリタリージャケットとワークブーツをかっこよく着こなしていた。
・いいな、歳を取ることに希望が持てる。こういうふうになれるように気をつけて生きていこう。
・とりあえず家を出た。雨が弱く降っている。
・勉強道具、本とかノートとかを持って出た。
・水筒に温かいお茶もスタンバイした。
・図書館に行こう。
・後藤さんに教えてもらった中野坂上に新しくできた図書館に行こうか。
・と、思いつつ、いや、古着を見るだけ見たい。という気持ちが心の底にあり、高円寺方面に歩き出した。
・ちょっとだけ古着をみて、買わずに、高円寺の図書館で勉強しよう。
・そう思った。
・と同時に、多分古着買うなこれは。とも思った。
・そういった曖昧さを許容できるのが大人というものだろう。
・自分への言い訳というものはいくらでも思いつくものだ。
・自分という中央銀行が、自分という消費者に対して紙幣を刷り続ける。
・いつか破綻するのだろうか。
・いや、千円以下の古着だから多分大丈夫だろう。
・そんな光景を頭に浮かべながら高円寺の図書館につくと、
・閉館中だった。
・改装工事でここ2週間ぐらい閉館しているとのこと。
・なんだ、そうか。じゃあ、古着見に行かないと。
・ということで、いつもの高円寺トレファク2号店さんに寄った。
・冬から春への脱皮中、という店内だった。
・ササッと眺めて帰ろう。まだ12時だから、中野坂上の図書館に方針変更しよう。
・と思っていたはずなのに、腕にはいつのまにかLevi'sのスタープレスト(スラックスっぽいやつ)が確保されていた。
・スタープレスト、略してスタプレ。
※公式には「ステイ・プレスト」なんですね。始めて知りました。
・これを古着屋で見つけたらとりあえず手にとってしまう。
・でもサイズが丁度いいのにはなかなか巡り会えないのだけれど、今日のはジャストフィットの匂いがした。(面倒なので試着はしない)
・しかも、デニム地のスタプレだった。これはいい感じだ。
・ちょうど今、家にデニム地のテーラードジャケットがあるので、セットアップぽくなる。
・お値段、2,980円の50%オフの1,500円。
・千円は超えてしまったが、状態のいいスタプレなら安すぎるくらいだ。
・買う。
・これでもう満足だ、と思ってレジに立ったと思っていたら、いつの間にか腕に長袖カットソーとデニムシャツが確保されていた。
・記憶が曖昧だ。
・でも、どちらも使いやすそうな良品で、それぞれ900円だ。僕ぐらいになると無意識でここまでできる。
・ええい、もう分かったよ、買いますよ。
・合計、3,500円ぐらい。いいせんべろ古着だった。
・お会計を済ませ、清々しい気持ちで店を出る。
・鬱々とした弱い雨空も、なんだか暖かな雰囲気に思えてくる。
・古着というのは、セラピーのようなものだ。
・僕にとってはそれが古着というだけで、だれにもこういうものが少なからずあるのだろう。
・そのことを考えるだけで楽しくなるようなものが。
・そんな感じでいい話にまとめておくことで、自分にも納得感をもたせることができる。
・さあ、次は図書館でちゃんと勉強しよう。
・新高円寺駅から丸ノ内線に乗り(その道すがら何件もの古着屋に入りそうになったが踏みとどまることができた)、中野坂上に向かった。
・後藤さん(信頼の情報筋)に教えてもらった図書館。中野東図書館。
・最近できたばかりで、いろいろなスペースが充実していてとてもいいのだ、と後藤さんがおすすめしてくれたところだ。
・着いてすぐ、これは最高の場所だと確信できた。
・仕事の勉強をしたかったので「コワーキングスペース」という場所を利用させてもらったのだけど、中野坂上のビルの9階にあるきれいなワーキングスペース(かっこいい会社の休憩室的な雰囲気のつくり)で3時間まで仕事や勉強ができる。
・ちょっとした商談をしても良いそうだ。PCも使えるし電源もある。
・さらに、このスペースに限っては飲食も可能。
・もうカフェに行く必要はない。
・疲れたら、図書館の本を読みながら休憩してもよい。
・3時間の利用時間が終わっても、図書館内の一般スペースもくつろぎやすい作りになっている。
・これは通う。
・日本の公共施設も捨てたものではない。
・こういう情報をもたらしてくれるのが「信頼できる情報筋」である。
・僕のことをよく分かっているからこそ、レコメンドが直撃する。
・この精度のレコメンドは、Spotifyにだってまだできないことだ。
・Googleがある日突然、「好きそうな図書館が近所にあるよ」とは教えてくれない。
・人とのつながりはやはり重要なものだ。
・昔のように頻繁に会わなくなっても、昔と同じなのだ。
・後藤さん、こんどこのワークスペースでミーティングしましょう。会議室を借りてもいいかもしれません。
・そういえば昨日の日記で、幡ヶ谷のモスの前で後藤さんが自転車で通り過ぎるのを見た、ということを書いたけれど。
・あのあと後藤さんからラインが来て、「時間的にそれは僕じゃないなあ」ということだった。
・よく似た別人だった。自転車までよく似ていた。
・きっと、幡ヶ谷の風景が昔を思い出させ、僕の心のなかで、その風景にバーチャルな昔の後藤さんが重なってしまったのだろう。
・これはなかなか、ノスタルジックでロマンチックじゃないかと思う。
(end)