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瞑想/現実化に向いている人の特徴とは

今回も前回紹介した二重スリット実験 (Double-slit experiment) に関する実験の続報になります。未だにその原理が解明されてない“二重スリット実験 (*1)”。量子 (quantum) が波 (wave) と粒子 (particle) の二重性 (duality) を持つことは物理学では広く知られています。それが波として振る舞うのか、粒子として振る舞うのか、が“人が観測するかどうか”で決まり、ここが大きな謎として残されています。今回もこの不思議な現象に焦点を当てていきます。

・二重スリット実験のおさらい

二重スリットの実験の概要は前回の記事にも書かれているのでそちらを参考にしてください(*2)。ここではさらに簡略に説明します。二重スリット実験 (*1) とは非常に細いスリット(すき間:slit)が2本開けられた二重スリット板に光子 (photon) や電子 (electron) のような量子 (quantum) を1個ずつ投射します。そしてスリットを通過してその先の検知器 (プロジェクター: projector/detector) に投影された像を観察します (Figure 1) 。


このとき、通常の状態だと量子は“波”として振る舞い、Figure 1Aのように何本もの干渉縞(かんしょうじま)が投影板に写し出されます。しかし、“スリットのどちらを通過したか観察しようとする”と、途端に量子は“粒子”として振る舞い、干渉縞は消えてスリットの2本の線になってしまいます。

光が波になるか、粒子になるか、それが観測者の意識によって決まる”という、古典物理では説明困難な現象が現れました。この二重スリット実験に関しては過去に取り上げているので理解を深めたい人は読んでみてください (*4, *5, *6, *7)。今回もさらに掘り下げていきます。


・今回取り上げる研究

紹介する研究は前回に引き続き ”Consciousness and the double-slit interference pattern: Six experiments (意識と二重スリット干渉パターン: 6 つの実験) *3”というカリフォルニアの研究所からの報告の続報です。前回の記事(*2)では4つの実験に関して結果を紹介したので今回は残りの2つの実験結果を紹介します。

・測定原理と「R値」 (次まで読み飛ばしてもOK)
測定装置は前回同様に卓上サイズの二重スリット装置と、その投射された光子の波形検知器が用いられました。この投射された波形のスペクトルを解析するとFigure 2左のようになります。ここでは“D: 二つのスリットを同時に通過した干渉波形”と“S: 片方のスリットを通過した光子の回折波形”の合成がグラフとして示されています。

そして「R値」というのは各波形のスペクトルパワー(強さの比率と思って構いません)から計算されます。Figure 2右側に書かれている通り、R=D/S、つまりR=[二つのスリットを通過した光子の成分/一つのスリットを通過した光子の成分]から導かれます。

もしここに「人の観測/意識による観測」というものが影響を与えた場合この「R値」に変化が起こります。「人の意識(念)が物理的な現象に影響を及ぼすなんてあり得るのか?」という古典的常識では一見理解し難いことです。ところが過去に紹介した研究(*5)でも前回の記事(*2)でもちゃんと「意識によって変化が起こる」ということが科学的に証明されています。

そしてこの「R値」は分母が「一つのスリットを通過した光子の成分」となっているため、「粒子の成分が増えるほどR値は低くなる」ということが予想され、実際に前回の結果でも「意識を向けると信号が低下する」ということが観察され、予想を裏付ける結果が得られています (*2)。

前回の4つの実験では“様々な測定誤差の可能性を排除する”という検証によって「やはり人の意識が確実に影響をもたらしている」ということが分かり「一般人と瞑想熟練者で結果が大きく違う」ということも分かりました。今回はさらに“脳波”や“変化を起こす人の適性”についての追加実験を示します。


・実験5:脳波と二重スリットへの効果の解析

参加者は瞑想に慣れた31人が対象とされ、脳波計 (EEG: electroencephalography) を装着して実験が行われました。“意識を向ける(集中)パート:20秒間”と“意識を逸らす(リラックス)パート:20秒間”を交互に40回/セッションとし、合計50セッション分の記録を解析。脳波は1Hz (ヘルツ) から50Hzまでそれぞれの周波数を毎秒計測し、比較に用いられました。

・結果:通常の解析

まずはこれまでのように50セッションでR値がどう変化したかが解析されました。Figure 3左グラフに示されるように参加者のR値 (Ratio) とコントロールのR値 (Ratio C)を比べると有意差があることが分かります。そして波形のピーク部分 (Peak)と谷の部分 (Trough) も参加者とコントロールで明らかな違いが出ていることが分かります。この部分はこれまでの実験を裏付けるような結果となっています。

・結果:脳波との関連性

そして脳波の解析において“意識を向けるパート”と“リラックスするパート”で比較を行ったところ、Figure 4グラフのようになりました。これを見ると10Hz前後でのスペクトルパワーの低下が明らかで、この領域はちょうどアルファ波領域 (8〜13Hz)に合致します。当然かもしれませんが、“意識を向ける集中パート”ではアルファ波のパワーが増大していることが脳波計でも実証されました

そして“集中/リラックス時の脳波変化から得られた値”をERD (Event-related desynchronization, イベント関連非同期化) 値と定義して、この値とR値の関連性が解析されました。結果はFigure 4右下の表のようになりました。全50セッションの解析結果は“わずかに正の相関”の“傾向がみられる (p=0.09)”という結果でした。


この中の独立に相関した9のセッションを解析すると有意な相関 (p=0.05) がみられたようです。また後で精査したところ19のセッションにおいて「電極の接触不良」「過剰なノイズの混入」が確認され、これらを除いた31のセッションを解析したところ“より強い有意性 (p=0.004)“が確認されたようです。

つまり、“脳波がアルファ波状態にあるときほど二重スリットの信号変化が有意に顕著であった”ということが示唆される結果でした。ただし、これらは事後解析 (post-hoc analyses: 後から一部データを除外したもの)なので注意が必要と著者らは書き加えています。


・実験6:参加者の性格や信念と二重スリット結果の関連性

これは「二重スリット実験に参加する人の考え方などが結果に影響するのか?」という観点からの実験です。例えば「超能力を信じている人と超能力を信じてない人が二重スリットに念を送った場合は違いが現れるのか?」「頭の中で映像化できる人と映像化が得意でない人で違いが現れるのか?」「超自然的な現象が実在すると思う人、全てただの迷信に過ぎないと思う人で違いが現れるのか?」という疑問に対する実験です。

・マンチェスターメトロポリタン大学超常現象信仰スケール
このようなことを調べる機会は日常ではほとんどありませんが、マンチェスターメトロポリタン大学超常現象信仰スケール(Manchester Metropolitan University Scale of Paranormal Belief *8, *9) というアンケート調査票が存在します。

これはFigure 5に記されているように
「人はある出来事が起こる前にその結果を知ることができる」
「人はテレパシーでコミニュケーションすることは不可能である (Neg)」
「魂は肉体の死後も存在し続ける」
回答:1全くそう思わない・2・3・4・5・6・7強くそう思う

という具合に数字で回答し、それによって超常的な事象に対する信仰度をスコア化することが可能です。

回答者には知らされませんが、「Neg」と書かれている質問は回答が偏らないように敢えて逆の聞き方をしており、スコアは逆転して計算されるようになっています。このような質問票が合計50問用意されておりこの領域における思想/信念をある程度正確に評価することができます。


・没入能力の評価:Tellegen没入度スケール
もう一つは“没入能力 (Capacity of Absorption)”に対する調査が行われました。これは言い換えると“なりきる能力/没頭できる特性”とも表せます。例えば、「水の中に浮かんでいる状態をイメージしてください」と言われた時に「本当に水の中に浮かんでいるかのように、水の感覚を想像し、水の音を思い浮かべられるか」、「子供の頃の家で生活していたことを思い出してください」と言われた時に「実際の過去の家の中の様子や家族の様子や当時の光景や音や匂いが想起されるか」といった能力や特性を評価することができます。

使用された調査票はTellegen没入度スケール (Tellegen Absorption Scale *10) というもので1974年にTellegen氏らにより作成されました。

Figure 6に示されるように
「時々自分の心が世界全体を包み込むかのように感じることがある」
「時々いつもの自分から抜け出して全く異なる存在の状態を体験する」
「特定の音楽は、絵や動く色のパターンを思い出させる」

というようにいつも目で見えているものと違う世界を体験したり、見えないものを可視化する能力といったものを評価することが可能です。このアンケートは34の質問からなりTrueまたはFalseがいくつあるかで没入能力をスコア化することができます。

・結果:通常の解析

この実験でも瞑想経験のある人から50人が選ばれ参加しました。セッションは同じく「集中/リラックス」を繰り返しますが、タイミングが予期されないように1回のパートは20秒〜30秒の間でランダムに決められ、他はほぼ同じように行われました。

まず基本的な“ヒト対コントロールの比較”ではFigure 7上段にあるように参加者 (Experiment) グループのeffect sizeは負の値をとり、対して無人対照 (Control) グループは正の値を示しており、これまでの実験と同様に“瞑想者グループが意識を向けた場合に明らかにR値が低下する”という予測通りの結果となりました。

・結果:参加者の超常現象への信仰度や没入能力と“R値”の解析

次に興味深いのは先に述べたMMU超常現象信仰スケールスコア (Belief in Psychic phenomena) との相関です。これはFigure 7下段の表に示す通り、有意な負の相関関係があるようでした。つまり、“超常現象を信じている人ほど二重スリットのR値の低下が有意に大きい (有意水準:p=0.03)”と言えます。

また、Tellagen没入度スケールによる没入能力のスコア (Capacity of Absorption) もR値と負の相関を示しました。この結果では“視覚化能力や没入能力スコアの高い人ほど二重スリットのR値の低下が大きい傾向がある (p=0.07)”と言えます。

最後に“瞑想の経験年数 (Years of Meditation experience)”について解析されましたが、こちらは予想外に“瞑想経験年数自体はほとんど相関関係もなく有意な関係性もみられない (p=0.75)”という結果でした。


・前回の実験も含めた二重スリット6実験の結果

Figure 8左のグラフは前回の4実験と今回の2つの実験で実験1 (E1) から実験6 (E6) までの全セッションを累積で記録したものです(Extra=追加で解析されたセッション)。これを見ると人の意識が関与しないControlと人が意識を向けた時の信号変化が明らかに違っていて、「人が意識的に観測することで光子の状態が変化する」ということがはっきりと実証されています

そしてFigure 8右のグラフが実験1〜5までの結果を“非瞑想者 (non-meditators)”と“瞑想熟練者 (meditators)”に分けて解析した結果です。この結果でも「瞑想をしない人と瞑想熟練者では二重スリットの信号変化にはっきりと違いが出る」ということが分かります。実験4までは一般人も瞑想者も一緒に含めて実験が行われましたが、この結果の違いがあまりに大きく実験5からは“瞑想者のみ”に絞って実験が行われたようです。

そして、今回の実験6の結果で示されたように、「同じ瞑想経験者でもその性格や信念によって二重スリット実験の効果が変わってくる」と言えます。具体的には「超常現象を現実だと考える人」、「イメージを思い浮かべたり没入することが得意な人」が高い実験効果を導き出すということが示されました。



・これまでの6実験のまとめ(前回から)

 ・コントロールと比較して“人の意識”で明らかに信号は変化した
  =意識だけで現実の光子に変化を起こすことができた
 ・体温から発せられる熱の影響ではなかった
 ・ダミー映像を見せた実験でも意識で変化は起こった
 ・一般人と瞑想熟練者では明らかに効果の違いがあった
 ・同じ瞑想者でも超常現象への信仰度が高い人ほど強い効果が出た
 ・瞑想者でも想像力/没入能力が高い人ほど効果が強い傾向が出た
  =信じ込む/没入する能力や性格が高い適性と結びついていた


最後にこの実験6で用いられた「MMU超常現象信仰スケール (*8, *9)」、「Tellegen没入度スケール (*10)」の調査項目をいくつかピックアップしてみましたので興味を持った人は自分の適性を調べてみてください。

・実際に木に触ると幸運が訪れると思う。

・未来のことがわかる人が本当にいると思う。

・意思だけでのコミュニケーション(テレパシー)は可能だと思う。

・時々、自分の心が世界全体を包み込むかのように感じることがある。

・絵をじっと見つめてから目をそらすと、まるで自分がそれを見ているかのように、絵のイメージが「見える」ことがある。

・一部の人々が神秘的な体験について話すとき、私は本当にその意味を理解していると思う。

・自然や芸術に完全に浸り、私の意識状態全体が一時的に変化したかのように感じることがある。

・オルガン音楽やその他の力強い音楽を聴いていると、まるで空に持ち上げられているような気分になることがある。

・特定の音楽は、絵や動く色のパターンを思い出させる。

・物理的にはそこにいない誰かの存在をなぜか感じることがある。

・少しも努力しなくても、考えやイメージが浮かぶことがある。

(MMU超常現象信仰スケール (*8, *9)、Tellegen没入度スケール (*10)より抜粋)


前回今回と紹介した研究は“物理世界”と“意識の世界”をつなげる非常に意義のある検証結果を示しました。“意識の持ち方で日常生活も変わる”とは言われていますが、どうもただの精神論ではなさそうです。“意識の使い方で物質世界に何か変化を起こせる”可能性は十分にありそうですし、“意識から物質へ、反対に物質から意識へ”という相互作用も考えられそうです。

ただ言えるのは、「誰でも思えばそうなる」わけではなさそうです。やはり「最初から信じていない」「そんなの起こるはずないと思っている」「非科学的なことに一切否定的」という人の場合は「効果が出ない」というのは当然のことかもしれません。それは「自分で自分の潜在能力を否定している」と言い換えることもできます。もしかしたら「自分にでもできるかもしれない」「自分もそういう能力を持っているかもしれない」「想いを現実化できるはず」と「思い込む」ことも大事かもしれません。瞑想の効果が実感できてない人は、まず「超常現象も自分の潜在能力もあらゆる可能性を信じて」自分の気持ちを切り替えて瞑想に取り組むと今までとは違ってくるかもしれませんね。

(著者:野宮琢磨)

野宮琢磨 医学博士, 瞑想・形而上学ガイド
Takuma Nomiya, MD, PhD, Meditation/Metaphysics Guide
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。

引用/参考文献:

*1. Double-slit experiment. Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Double-slit_experiment 
*2. 二重スリット実験:瞑想熟練者と一般人の違い
https://note.com/newlifemagazine/n/ne8f8b2613016 
*3. Radin D, Michel L, Galdamez K, Wendland P, Rickenbach R, Delorme A. (2012). Consciousness and the double-slit interference pattern: Six experiments. Physics Essays, 25(2).
*4.「観る」ことで「現実が変わる」?:二重スリット実験https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a 
*5. 「意識」が物質を変えることを証明:二重スリット世界規模実験https://note.com/newlifemagazine/n/n19342d9a4f56 
*6. 量子の最新研究と因果律の崩壊?https://note.com/newlifemagazine/n/nf66f91110a61 
*7. 「量子」と「時間」と「世界」の謎解きhttps://note.com/newlifemagazine/n/n96af4cbc0890 
*8. Dagnall, N., Parker, A., Munley, G., & Drinkwater, K. (2010a) Common Paranormal Belief Dimensions. Journal of Scientific Exploration, 24, 477–494.
*9. Drinkwater, K. G. (2017). Belief in the paranormal: measurement development and evaluation (Doctoral dissertation, Manchester Metropolitan University).
*10. Tellegen, A., & Atkinson, G. (1974). Openness to absorbing and self-altering experiences ("absorption"), a trait related to hypnotic susceptibility. Journal of Abnormal Psychology, 83(3), 268–277. https://doi.org/10.1037/h0036681 

画像引用:
*a. Image by vat loai from Pixabay. https://pixabay.com/illustrations/brain-brainwave-head-wave-hologram-8825819/
*b. Image by Shawn Suttle from Pixabay. https://pixabay.com/illustrations/cosmic-cosmic-orb-cosmos-alien-8211108/
*c. image by freepik. https://www.freepik.com/free-ai-image/radiant-depiction-empowered-female-sun-goddess_152368090.htm
*d. https://www.bing.com/images/create?
*e. https://firefly.adobe.com/

 

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