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528Hz周波数は細胞DNAを修復するか?

今回も前回に続いて「音:周波数」に関して新たな知見を紹介していきます。前回は528Hzという周波数が自律神経やホルモンバランス(ストレスホルモンのコルチゾールや幸せホルモンのオキシトシンなど)に良い影響を与えていることが科学的に実証されたことを紹介しました (*1, *2)。今回の記事も前回に続いて「528Hz」の周波数が人体へもたらす影響について新たな研究を紹介していきます。

以前から動画において「528Hz」を題材にした音楽動画はよくみられています。瞑想音楽や環境音楽が多く、リラックスできる音楽がよく投稿されています(Figure)。このような動画で見かけるのが「細胞修復:Cell repair」や「DNA修復:DNA repair」という言葉が記載されているものです。

528Hzの音に「細胞修復効果やDNA修復効果」があるのでしょうか。それとも、全く根拠の無い一部界隈での「噂話」なのでしょうか。実際にエビデンスを検証してみました。

今回紹介する研究論文は“The Effects of 528 Hz Sound Wave to Reduce Cell Death in Human Astrocyte Primary Cell Culture Treated with Ethanol. (エタノール処理したヒトアストロサイト初代培養細胞における528 Hz 音波の効果と細胞死減少) (*3)”という2017年のBabayi氏らによる報告です。

我々の身近にあるもので多量に摂取すると体に良くないものとしてはアルコールが挙げられます。職場での飲み会の場ではアルコールを飲む機会がありますし、毎日の晩酌を楽しみにしている人もいると思います。しかし、アルコールを常習的に摂取していると脳細胞へのダメージも深刻になってきます。アルコール障害を与えた細胞に528Hzの音はどのような効果をもたらすかが検証されました。

・実験方法

今回用いられたものは「培養された細胞」で、「ヒトの脳細胞(星状細胞, Astrocyte)」が用いられました(Figure 1下)。培養された脳細胞に対しエタノール(アルコール)を一定濃度で投与する実験です。アルコールは一定の濃度になると脳細胞に対してダメージを与えます。Figure 1上のグラフは細胞の生存率にグラフですが、これを見るとエタノールの濃度が高くなっていくにつれ細胞生存率が下がってくるのがわかります。このような「アルコールによる細胞障害を528Hzの音で改善できるか」というのがこの実験デザインです。

・細胞に528Hzの音を聴かせる方法

今回用いたのは培養された脳細胞であり、それぞれの細胞には“聴覚”はありません。なので細胞培養容器全体を528Hzの周波数の音に晒すというやり方がとられました。実際にはさまざまな濃度のエタノールを培養液に混入し、528Hzの音も80dB (デシベル), 100dB, 120dBの音量で音を流しました。スピーカーの振動が台を通して細胞に影響を与えないように、培養容器は宙に吊るされた状態で音が鳴らされました。

・細胞生存率や細胞障害の評価方法

生存細胞数は、標準的なトリパンブルー排除法を使用して計測されました。また、同様に細胞生存率は、MTT アッセイを使用しても評価されました (*4)。細胞生存率はこれらの適切な方法によって評価されました。

細胞障害は乳酸脱水素酵素 (LDH: Lactate dehydrogenase enzyme) アッセイが用いられました。このLDHという酵素は通常細胞内に存在しますが、アポトーシスなど細胞が障害を受けたり細胞死が誘導されると、LDHという酵素が細胞外に放出されます。これを計測することで“細胞がどの程度障害を受けたか”という指標になります。

・実験結果

Figure 2がMTTアッセイによる細胞生存率です。何もしてない“対照 (Control)”は生存率100%で、150mM濃度のエタノールだけの培養細胞は生存率約50%です。ここで“エタノール+528Hz, 80dB(デシベル) (黒線囲み)”の培養細胞を見ると、生存率約70%でエタノール単独の細胞群よりも細胞生存率が改善しています

このグラフを見ると528Hz, 80dBでは統計学的にも有意に細胞生存率が改善していると言えます。対して528Hz, 100dBでは細胞生存率の改善は明らかではありません。さらに120dBでは逆に細胞生存率が低下する結果が得られました。ここについては後ほど考察を加えます。

・細胞障害(LDHアッセイ)

次に細胞障害や細胞死によって細胞内からLDHが放出され、それを計測することで細胞障害を計測するLDHアッセイの結果をFigure 3に示します。こちらの結果でも150mMエタノール単独の場合は50%程度の細胞死が観察されていますが、528Hz 80dB (黒線囲み)のデータでは細胞死の割合が有意に低下していることが分かります。

100dBの群は80dB群ほどではないですが細胞死の割合はエタノールだけの群よりもやや改善する傾向にあります。120dBでは先の結果と同じようにエタノール単独よりも細胞障害が増える結果となりました。ここも後ほど考察します。

・細胞の形態学的変化

この実験で用いられた細胞の画像がFigure 4に示されています。上段の画像は何もしていないControlの細胞です。神経細胞の本来の形態である細胞の突起がよく伸びていることが分かります。Figure 4左下は150mM濃度のエタノールを投与した培養細胞です。エタノールによる細胞障害のせいで脳細胞の突起がほとんどみられず、小さな丸い細胞が主体となります。これらの細胞も約半数は細胞死を起こしています

これに対して右下がエタノール+528Hzの音を聴かせた細胞です。隣と比べてみると丸く小さくなった死細胞はあまり見られません。そして神経細胞の突起がある細胞も一定の割合で見られます。ちょうど、Control群とエタノール単独群の中間くらいの細胞形態になっています。この結果をみると、528Hz 80dBの音によって細胞の致死的ダメージから回復した細胞もいることが観察されます。

・実験まとめ

・アルコールによる細胞毒性に対して、528Hz 80dBを聴かせた細胞は一定の生存率改善を示した
・LDHアッセイでも528Hz 80dB群では細胞障害や細胞死が有意に減少していることが示された。
・形態学的な変化でも、アルコール単独投与した群では健常な形態が失われていたのに対して、528Hz 80dB群では細胞の形態が正常に近かった

これらをまとめると、528Hz 80dBでの音波処理は細胞の致死的障害を回復させているようでした。しかし詳細が解明されるのは今後の研究にかかっていると思われます。

・80dBや120dBはどのくらいの音量か

この実験では80デシベルから120デシベルが用いられていましたが、どの程度の音量かというのをFigure 5にまとめています。下から、60dBが普通の会話レベル、80dBは“電車の中”、あるいは“1m離れたピアノの音”くらいです。ですので80dBはそれなりにしっかりと聴こえる音です。

100dBだと“電車が通り過ぎる時の音”くらいのレベルなので会話が聞こえにくくなるレベルの音量ということになります。さらに120dBは“飛行機のエンジンの近く”とのことです。つまり、ほぼ会話が聞こえないレベルの大音量ということになります。

この研究では120dBの音量に晒した細胞はエタノール投与よりもさらに細胞生存率が低下していましたが (Figure 2/3)、これは周波数に関係なく大音量すぎて細胞にストレスが大きすぎたのかもしれません。

・528Hzの動画

動画サイトにたくさん投稿されているこれらの528Hzの動画も科学的根拠が示されたので興味のある人は聴いてみてください(画像にリンクを貼っています. *6)。

今回の実験では細胞に直接聴かせても一定の効果を得ることが示されました。これは聴覚を介さなくとも、細胞に音が伝わるだけで効果が得られると考えられます。つまり、皮膚や身体の奥の細胞にも音が伝わると細胞に良い効果が期待できそうです。


他にもさまざまなサイトがありますので是非528Hzで検索してみてください。


今回は以前からその界隈では良く語られていた「528Hz周波数は細胞修復効果/DNA修復効果がある」という情報についてエビデンスを取り上げてみました。結論としては「細胞障害を受けた脳細胞に528Hzの音を聴かせると有意に細胞生存率が改善した」ということが言えそうです。一部では「528HzによってDNAの構造に変化が起こる」という研究報告も出ているようです。528Hzの音を聴きながら瞑想をすることは細胞レベルで良い効果がもたらされるようです。ストレス物質に囲まれた生活の中で「音」と「瞑想」を組み合わせて精神レベルでも自律神経レベルでもDNAレベルでも健康的な状態を取り戻していきましょう。

(著者:野宮琢磨)

野宮琢磨 医学博士, 瞑想・形而上学ガイド
Takuma Nomiya, MD, PhD, Meditation/Metaphysics Guide
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。

引用/参考文献:

*1. Akimoto, K., Hu, A., Yamaguchi, T., & Kobayashi, H. (2018). Effect of 528 Hz music on the endocrine system and autonomic nervous system. Health, 10(09), 1159. https://www.scirp.org/html/2-8204397_87146.htm 
*2. 528Hz周波数がホルモン/自律神経にもたらす効果. https://note.com/newlifemagazine/n/n2efc07019522 
*3. Babayi T, Riazi GH (2017) The Effects of 528 Hz Sound Wave to Reduce Cell Death in Human Astrocyte Primary Cell Culture Treated with Ethanol. J Addict Res Ther 8: 335. doi:10.4172/2155-6105.1000335
*4. 細胞の生存率を測定できるMTTアッセイキット. フナコシ株式会社HP. https://www.funakoshi.co.jp/contents/2810 
*5. “騒音について”:暗騒音工法研究会HP. http://www.bgnm.jp/noise.html 
*6. 528Hz + 174Hz || Full BODY CELL Regeneration || MIRACLE Tones for Golden Chakra Healing. Meditative Mind. https://www.youtube.com/watch?v=7xJw6eBEJQs 
*7. DNA Repair Music: 528 Hz Healing Music, Nerve Regeneration Music, Cell Regeneration 528 Hz. by Greenred Productions –Relaxing Music. https://www.youtube.com/watch?v=RjUPU-9ECJ0 
*8. MI - 528 Hz | pure tone | Solfeggio Frequency | Transformation, Love and Miracles (DNA Repair). by SupernaturalMusic. https://www.youtube.com/watch?v=qgSb8QdFU7k 

画像引用:
*a. https://www.freepik.com/free-photo/person-having-hearing-issues_36190616.htm
*b. https://www.freepik.com/free-photo/private-luxury-jet-airport-terminal_28006095.htm
*c. https://www.freepik.com/free-photo/close-up-young-businesswoman-using-mobile-phone-subway-station_3661384.htm
*d. https://www.freepik.com/free-photo/full-shot-woman-playing-piano_22201834.htm
*e. https://www.freepik.com/free-photo/students-working-study-group_22894068.htm

 

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