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 神様のしゃべる声が聞こえた 「 #ショートショートnote杯 」


 義父が亡くなったのは、偶然にも夫の誕生日だった。その翌日、車で夫の実家へ急いで向かっていると、後部座席で携帯電話が鳴り、私は助手席から右手を伸ばしそれを取った。

「出てくれないか」
「職場からみたいよ、私じゃ分からないかも」
「明日の葬儀の件だろう」

 私が出ようとした途端に電話が切れた。夫が車を止めて着信履歴から電話を掛け直すと「誰も掛けてませんよ」と言われた。私は側で「安全運転で行きなさい」と誰かの声が聞こえたような気がした。

 18時からのお通夜を控えて、実家に兄弟で集まっていると、義父の棺を迎えに来た葬儀場の男性が「火事だよー」と大声で家に飛び込んで来た。倉庫から出火し母屋に燃え移りそうだった。

 消防が駆けつけて必死の消火が行われたが、古い家はパチパチと音を立てて、勢いよく燃え上がり2棟が全焼した。

義父の103年の人生を讃えるために「全てを焼き尽くし綺麗さっぱりと片付けたよ、大往生」神様のしゃべる声が聞こえてきた。

☆ かなり事実に近いです。

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RYOKO 満天の星
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