銭湯の話
月に二回、近所の銭湯に通っている。近所の銭湯の会員になってから、ポイントがたくさん貯まる券が送られてくるようになったからだ。ちなみにそのポイントを3000ポイント貯めると、無料で施設が利用できる。貯められるものは貯めようということで行っている感じだ。
銭湯に行くようになったのは、離れたところに住む友達と時々ドライブに行くようになってからだ。
初めて銭湯に入ったとき、自分の裸が見られるのが少し恥ずかしく感じられた。だが、入ってみると、身体が温まってゆくのと同時に、先ほど考えていたことがどうでもよくなってゆく。以来銭湯に通うようになった。
友達といくつか巡った銭湯。その中でも個人的に一番好きだったのは、山の麓にあった銭湯だ。
その銭湯の周辺には木々が生い茂っており、小鳥のさえずりがどこからともなく聴こえてくる。露天風呂からは木漏れ日が差し込んでくるので、癒し効果は倍に。値段も460円とお手軽だ。また、現地のものを売っていたり、日曜日になるとアヒルを大量に浮かべた風呂をやっていたりと、サービスも充実している。
アヒルを大量に浮かべた風呂を初めて見たとき、私は衝撃を受けた。
アヒルを浮かべた風呂があるのは、私も以前から認知していた。だが、まさかここまでたくさん浮かべるかと思った。
でも、それがまた可愛らしくもあったので、また行く機会があったら入ってみようと思う。
アヒル風呂のある銭湯の隣町にあるスパ銭は、とても風流であった。
その銭湯へは、私の20歳の誕生日祝いを兼ね、いつもドライブに行く友達と、家が近かった友達と一緒に行った。
一見すると、どこの地域にもありそうな普通のスパ銭。だが、露天風呂がいい。落ちた紅葉(もみじ)の真っ赤な葉が秋風に揺られ、湯の貼った露天風呂に落ちてくる。そのさまが何とも風流だったことか。
穏やかな秋風に揺られて落ち、湯けむりの立つ湯の中を漂う紅葉。それを、暖かい湯船に浸かりながら私は眺めていた。
なお、他の友達二人に関しては、ただ湯船に浸かるだけで終わっていた。家が近かった友達に関しては、いろいろ思うところがあって先に風呂から出てしまった。
普段ドライブに行く友達の方が後になってから上がる。だが、このときは自分が一番後になってから上がった。やはり、紅葉と露天風呂という組み合わせのせいだろうか。
最後に話すのは、板橋にあった銭湯。このときは一人で行った。
ここは、ドラマとかに出てくるような、木造の古びた感じが下町の雰囲気を醸し出している粋な銭湯だった。もちろん風呂の壁にはしっかり絵もある。
その銭湯の湯船に浸かった感想としては、まず「熱い」だった。
湯に触っただけでも思わず、
「熱っ!」
と叫んでしまうほど。そして湯に浸かった場所は真っ赤になる。だが、慣れというものは面白いもので、どんなに熱くても、気持ちよさを感じるようになるのだ。
風呂を出て、髪を乾かしたり着替えを済またりしたあと、番頭さんと思しきおばあちゃんが、
「熱かったでしょ?」
と声をかけてきた。
私はうなずいた。
番頭さんは、
「常連さんが熱い湯を好むからね、ついこうなってしまって」
と笑いながら熱さの理由を語ってくれた。
(なるほど、そういうことか)
私は納得した。客層を見てみると、年配の人が多かったなと感じたからだ。年配の人や通な人ほど「熱い湯」が好きなので、そうなってしまうのだろう。熱い湯は本格派銭湯の醍醐味でもあるので、これでいいのだが。
熱い風呂という本格派銭湯の醍醐味を味わえた私は、また一つ勉強をしたのだった。
こうして振り返ってみると、銭湯一つ取っても、個性があって面白い。
近所のスパ銭もいいけれど、たまには違う銭湯にもゆっくり浸かってみようかと思う。