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【エッセイ】武蔵(埼玉編)⑩─戸田橋から大宮まで(『佐竹健のYouTube奮闘記(41)』)─
蕨城だけでは物足りないので、武蔵編最後の1話を使って埼玉の名所について話そうと思う。
前にも話したと思うが、埼玉にはよく自転車や電車で行っている。自宅から手軽に行ける県外だからだ。関東各地を巡っているが、東京を除いた6県の中では、一番よく行っている。いや、日本全国の都道府県の中で一番よく行っているのは間違いない。
行き方は3つある。
一つは中山道を北へ進み、舟渡にある戸田橋を渡って入るルート。二つ目は池袋から川越街道経由で和光へ入るルート。三つ目は赤羽を経由して川口へ入るルートだ。今回は話の都合で、一つ目の中山道経由で入るルートの話のみしよう。二つ目と三つ目は、またの機会にゆっくり語ろうと思う。
先ほども話したように、板橋の舟渡から荒川にかかる戸田橋を渡ると、埼玉県戸田市に入る。
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戸田橋の土手からは東京側の風景が見える。見えるのは、主に高島平の団地などといった、お隣板橋の光景なのだが、その向こう側に大きな山がそびえ立っている。日本で一番高い山である富士山だ。
夕焼けをバックにそびえ立つ富士山は、とても美しい。
夕焼けの前に影となっている団地の様子も、寂寥感を感じていいのだが、富士山はとても雄大に感じる。夕焼け空が真っ赤であればあるほど、少し青みがかった影を持つ富士の高嶺は存在感を増していくから、ついつい拝んでしまいたくなる。
また、晴れた冬の日に見える富士山もいい。雪を被って、てっぺんが真っ白になった富士山がきれいだから。
高層ビルやタワマンの上とかを除けば、中山道界隈でこれほど見晴らしのいい場所というのは、まず無い。
戸田からさらに北へ進むと、前に紹介した蕨がある。
エッセイでは紹介していなかったが、蕨城から西側に少し歩いたところに、中山道の旧道が通っている。そこには、旧街道の宿場町であった蕨の町並みを遺している。
その様子がよくわかるのが、蕨市の資料館の分館となっている地元の豪商の屋敷だろう。
縁側、座敷、お茶の間。現代では、NHKの朝ドラやスペシャルドラマ、近代をテーマにした資料館などでしか見かけることが無い昔の日本家屋にあった設備を見ることができる。ちなみに豪商の家なので、庭もしっかりついている。
東京と比べ、埼玉には古民家が数多く残っているが、特に開発が著しい南部でここまで残っているものは、とても珍しい。
蕨の向こう側にあるのが、サッカーの浦和レッズで有名な、あの浦和だ。
浦和には調(つき)神社と呼ばれる神社がある。
調神社は崇神天皇の時代からある古い神社で、かつては伊勢神宮に納める貢物を納める蔵があったそうだ。鳥居が無いのは、その貢物を運び入れる際に邪魔になるからなのだそう。
神社の中でも長い歴史を持つ調神社には、ウサギの置物がたくさんある。
門前の狛犬の代わりに、手水に、池の噴水の石像に。とにかく、ウサギを推している。
調神社がここまでウサギを推す理由は、「調(つき)」が「月(つき)」に転ずることから、中世に流行った月待信仰と結びついたためらしい。
伊勢神宮の貢ぎ物を納める蔵や後ほど話す一宮があるさいたま市の辺りは、昔から武蔵国の重要な土地であったのだろうか。
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浦和のさらに向こう側が大宮だ。
大宮には武蔵一宮氷川神社というとても格式の高い神社がある。こちらも、創建は神話の時代からで、倭建命や源頼朝、明治天皇といった歴史上の有名人とも所縁がある。
秋の氷川神社の参道の紅葉はとてもきれいだ。
色づいた紅葉や欅の葉が、アーチを作り、参拝客を出迎えてくれる。
鳥居をくぐり、神社の敷地へと入る。
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社殿の目の前に来ると、門が見えてくる。
門には、丹が塗られた柱や色付きの彫刻などがあるためか、とても華麗荘厳なものとなっている。また、塀垣の柱にも丹が塗られていて、窓のような部分は緑色に塗られている。そのためか、平安朝の宮殿を連想させるようで、とても雅に感じる。
雅やかな門をくぐった先に、社殿がある。
社殿の方は大きいが、門ほど贅を尽くしておらず、どこか質素な感じがする。だが、それがいい。ありがた味や風情があって、神社らしくてとてもいい。
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氷川神社の裏手には、大宮公園という大きな公園があるのだが、ここも紅葉がきれいだ。特に池の辺りに植えられている紅葉(もみじ)が。
特に晴れている日はいい。
池の周辺にある小道から紅葉が見えるのだが、そこに落ち着いた秋の陽の光が当たることにより、紅葉の赤がより鮮やかに見える。
この様子から、大宮公園の一帯は東京の近くで、紅葉がきれいな場所ベスト10を決めるなら、必ず入るであろう場所だと、個人的に感じている。
大宮で思い出したが、スピッツの曲に『大宮サンセット』という曲がある。ダークネスなメロディーに、君の浮気を疑う男の哀しい心情が歌われた曲だ。
昨年大宮へ行った。動画と写真を撮るために。
昼間は赤く色づいた紅葉の写真と動画を撮影した。後は大宮公園の中にある動物園で動物を見たり、公園の中にあるお茶屋さんでかき氷を食べたり、博物館で古代や中世の遺物を見たりした。
そうこうしているうちに気が付けば、夕暮れ時。秋の日というのは、かなり短い。
大宮公園の一帯は翳り、樹木の向こう側からは、太陽の光の灯火で紅に染まった夕焼け空と藍色に染まった夕闇が混じり合う。
目の前に見える夕焼け、今いる場所は大宮。この二つの要素からから私は、スピッツの『大宮サンセット』という曲を思い出した。
そして夕方になったときに、大宮の夕焼けを撮ろうとした。撮れたのは夕焼けだった。けれど、自分のイメージしていた、仕上がりとは少し違った。
動画も撮っていたが、大宮の夕焼けが上手に撮れなかったからということで、お蔵入りにした。それでも、実際の大宮サンセットには、どこか物悲しいような感じもあった気がする。
戸田市や蕨市、さいたま市の辺りは東京圏の家賃の安い場所というイメージが強い。だが、近代的なベッドタウンのイメージに反して、古代からある社など、人が昔から暮らしていた痕跡がたくさんある。埼玉南部、特に中山道の周辺は、大昔から住みやすい場所だったのだろう。
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