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(15/100)キライな登場人物ばっかりだ【夏の裁断】(島本理生)
読み始めから、登場人物にイライラする。
最悪なのは柴田だ
柴田は初対面から千紘に馴れ馴れしい。二人っきりになると急にキスしてきたり、触ってきたり。でもセックスしたい素振りもなく、千紘を振り回す。こんな男いたよなぁ、と思い出してムカつく。アノヤロウ。
千紘も千紘だ
幼いときに性的虐待を受けていたトラウマもあるのだろう。プレッシャーをかけてくる相手に対する最大の防御は、それを受け入れることだと学習してる。でも嫌なことやモヤモヤしたままの状態に耐えきれず、精神を病む。
好きなのか、付き合ってるのか、騙されてるのか、遊ばれてるのか。関係性の輪郭がぼやけていることに耐えきれず、千尋は柴田を刺そうとまでする。
モデルもイラストレーターもまったく
その後に出会うモデルの「王子」やイラストレーターの猪俣くんは、千紘との距離感を探りながら、ときどき部屋に上がりセックスをする。彼らには他にも遊ぶ相手がいる。彼らにとって千紘は、さまざまな世界観の中の一つだけど、千紘にとっての彼らはなんだろう。
そんななか知り合うのが清野だ
彼はどこか同じ匂いがする。たまにメールが来て、たまに泊まりに来ることは王子たちと変わらないけど、孤独感、距離感がどこか似てる。千紘になにも押し付けない存在。家族の話をしたことのない清野が、初めて千紘を連れて行ったのは、自分が巣立った孤児院だった。
性的虐待で大人や他人を信用できなくなった千紘。親に捨てられ、孤独の中を生きてきた清野。清野は千紘以上に孤独だったのかもしれない。
いつしか千紘の気持ちもやわらかくなり、「押し付けない」清野を見る目が変わってくる。
なんとなくまだストーリーが続いていきそうな終わり方だった。