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一年で人格が変わった友達の話。

高校時代に仲良くしていた友達と1年ぶりに会った。

私の誕生日を覚えていてくれて、LINEをしてくれたのをきっかけに会うことになったのだ。

実は、ランチの段取りのLINEから既に多少の違和感を感じていた。彼女はどこか機嫌を取るような柔らかな物言いをしたり、語尾に♡をつけたりするような子ではなかったはずだった。


少し早く四ツ谷駅の改札についた。彼女は数分遅れるらしくて、私は時々行き交う人々を眺めていた。四ツ谷らしく、OLや小綺麗な格好をした人が風を切って歩いていた。

と、突然その中の1人が私に手を振ったので、私は驚いた。何に驚いたって、彼女は髪をショートにしていた。それだけではない。彼女はいわゆる港区女子のような、頭が切れる美人のような、上品なカーディガンとタイトなスカートを履いていた。

私と彼女は挨拶をして、久しぶり〜と当たり障りのない会話をしながら落ち着けるカフェを探した。私は上部では会話をしながらも、会話でも感じる違和感と、彼女との精神的な距離を感じていた。

彼女は上品な格好をする人ではなかった。むしろ、前回会った時は全身真っ黒な服を着て、ドフラミンゴを墨汁の海に沈めたようなフワフワしたコートを着ていた。

彼女は「可愛い服は着れない」と言っていたし、「スタバには真の陽キャはいない」「イケメンとその友達と3人で飲むのが一番効率よくイケメンを拝める」等々、沢山の名言を生み出しては私を笑わせた。初めての彼氏ができてすぐ「処女捨てた」というLINEを送ってよこして、その1週間後に破局した彼女は電話口で「医学部の男紹介してよ〜」と明るく言い放っていた。彼女は粛々とした女子校の雰囲気からついに卒業して、文字通り遊び狂っていた。

目の前に座っている彼女が同じ人間だとは、信じ難い光景。私は近況報告もほどほどに質問を切り込んだ。

「親友ができたの。」

彼女は言った。

「心から相談できて、信頼できる人ができたの。だからもう彼氏とかはいいや。」

それは、以前の彼女からは正反対とでも言うべき言葉だった。

親友。確かに彼女は高校では浮いていて、友達と言える友達はお世辞にも私だけだった。その反動か、大学ではいわゆる一軍女子に混じって派手に遊んでいた。同じ大学に進学した他の友達からもその変貌ぶりを伝え聞くほどだった。

しかし彼女曰く、憧れていた「一軍女子」は思っていたほど輝いてはいなかったらしい。その中で付き合いを続けるうちに、彼女は本当に気の合う友達を見つけた。その子の女性らしい服や振る舞いに彼女は惹かれたのだと言う。

「派手に遊んでても勉強ができる人がカッコいいと思ってたけど、そうでもないなって気が付いて。落ち着いてる方が素敵だと思うようになったの」

彼女は私に、憧れているものがあるなら、一度本気でなってみればいい、と教えてくれた。

「私は一軍に憧れてたけど、実際なってみればキラキラなんてしていなくて、全然大したことなかったの。一回経験してしまえば憧れも嫉妬もなくなるって気がついた。」

何事も経験。やってみないとわからない。

普段の私ならそんな助言は聞き流していた。でも、彼女のあまりの変化が私を惹きつけて離さなかった。


「つまらない女になっちゃって、ごめんね」

別れ際に彼女が言った。

私は確かに彼女の破天荒な、次に何をしでかすか分からない危うさを愛していた。
でも、彼女の幸せを願うのならば、私は祝うべきだろう。方向がどうあれ、彼女は大きな一歩の変化と成長を遂げたのだから。

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