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車内にて
思い出
幼少期の私は音楽に全く興味がありませんでした。
町中にあふれる音楽は「雑音」か、せいぜい「おまけ」くらいに認識していました。たとえばcmソングはcmのおまけであって、アニメの主題歌はそのアニメのためだけに制作されたものだと思い込んでいました。
ましてや、曲を作るアーティストに目が向くわけがありません。兄弟姉妹もなく共働き家庭で育った私は自宅での一人の時間を専らテレビで消費しており、毎週土曜日は必ず「ミュージックフェア」を視聴していました。しかしながらこれは19時以降のバラエティ番組の「前座」であって、一刻も早く過ぎ去るべきものでした。アーティストも曲も私にとっては意味不明でした。
そんな私にとって、父の運転する車のカーステレオが音楽経験の全てでした。父は運転中必ずといっていいほど曲をかけました。会話もまばらな車内で沈黙を嫌ったのでしょうか。もちろんこれにも私は全く関心がなく、ただ退屈な移動時間でした。何をするでもなく疲労が蓄積する後部座席で、シートのどの位置に首を置くのが一番楽なのかを躍起になって探していた私。刺激のない、取るに足らない時間のはずでした。
カーステレオから何度も流れる曲たちがひっそりと私の根幹を蝕んでいっていたことに、当時は全く気が付きませんでした。
曲の心地よさは「繰り返し」にあると思います。リフレーンがその曲を印象づけ、何度聴いても飽きることはありません。本日は、幼少期の私に投与された遅効性の毒、もとい今では手放せなくなった大好きな曲たちをご紹介したいと思います。
本題
1曲目は、Fly Away/EXILEです。一点の曇りもない空をひたすら上昇していく情景が浮かぶようで、聴くたびにワクワクします。サビ直前の「飛び立つ」を合図に、体が浮かび上がってきます。鬱屈とした気持ちを晴らしたい時にこの曲をかけるようにしています。
Acidな間奏もとてもよい。透き通った曲調に適切に差し込まれています。
前述の経緯もあり、これがカバー曲(というより前身のグループの楽曲)なのを知ったのはつい最近のことです。原曲はこれ。もとの力強いvocalもなかなかいいですが、きれいな声色が曲のイメージにより合っているのかなと思います。
(そうです、「初代」です。初代がいないのに三代目を名乗るやつなんかいません。)
2曲目は、Chandelier/MISIAです。この曲の「私」にいつも救われます。とにかく前向きで明るい。加えて、MISIAさんのあまりにも力強く、むしろ編曲で抑えているんじゃないかと思わせるほどの声が、前向きな歌詞に根拠を与えています。ただ明るくてなんだか間抜けっぽいということはなく、着実に一歩づつ前進していく強い意志、強い女性像を感じさせる曲です。
いわゆる歌詞が刺さるという経験はあまりないのですが、この曲は歌詞がいい。どうやら「私」には想い人がいそうですが、表現がべたべたしていなくていい。
最後の曲は、Blurry Eyes/L'arc~en~Cielです。前述の経緯もあり(2回目)、この曲が1stシングルであることを知ったのは随分後になってからです。tetsuyaさんのハモリがとにかくいい。ラルクは全員作曲できるバンドなのですが、tetsuya作曲のものが一番聴きやすいなと思います。「L'arc~en~CielはV系か否か」というおなじみの(?)論争にここで立ち入るつもりはありませんが、少なくともこの曲はV系のそれではないのかなと思います。
構成は少しだけ特殊で、AメロBメロを繰り返してからサビに入っていきます(いわゆる1番、2番…の構成では無い)。最初のAメロだけリフが抜けており、その変化も楽しい曲です。最後のサビ直前のギターソロがしつこすぎないのも好きなポイントで、この音色が入るとラルクの曲だなという気分になります。
最後に
以上3曲、当時の車内からピックしてお届けしました。理由はともかく今は大好きな曲たちで、事ある毎に聴いています。特に帰り道で聴くのがいい。
こういうのを原体験っていうんでしょうね。しらんけど。