大人の麦茶30.5杯目公演『すいません、どうかしてました。』を観た
2024年の観劇始めに、大人の麦茶30.5杯目公演「すいません、どうかしてました。」を観てきた。
大人の麦茶の作品を観劇するのは今回が初めてだったのだが、「すいません、どうかしてました。」の脚本・演出は、主宰の塩田泰造さんではなく、劇団最年少の今川宇宙さん。今川さんは今作で大人の麦茶を退団されるということで、このタイミングで観に来れて良かったな…と思うなど。
お話としてはオカルト、ファンタジー要素強めで、癖の強いキャラクターたちのドタバタ珍道中…と思いきや、後半にかけて人間の怖いところだったりその人にとっての幸せを見つめ直すところがあったりと、色々(言語化!!!)考えさせられる舞台でした。
全体的な印象で、伏線がたくさん張り巡らされていた。久太の肩、定食屋のおじさん、占い師のところに行くまでの駄菓子屋、干し芋……回収も自然で上手い。客層は割と幅広い印象を受けたのだけど、所々でクスクス笑いが巻き起こっており、脚本の練り具合に感服。
あと本編(?)を「怖かった〜」の台詞で締めるのが良いなあって思った。印象的な言葉の使いどころ、使い方が素敵。記憶が確かであれば、劇中で2回、「すいません、どうかしてました。」の台詞を言うんだけど、2回目をあえてあのニュアンスで終わらせることで、観劇後の後味がよかった。私は好きな終わり方でした。
照明も色とりどり、ぐるんぐるん転換していて面白かったな〜。舞台セットに照明が当たると、色味も印象も変わってこの作品の世界観がどこまでも延長されるような気がした。壁にゴボの模様が当たるところ、怪しげな雰囲気が劇場全体を包み込んでいて、とってもわくわくした。どこだったかは忘れちゃったけれど、音合わせの照明にも痺れました。
印象的だった役者さんについても少し。
みっちゃん役の堀江鈴さん(Twitterのお名前がズンドコほりえさん、一度聞いたら忘れなさそう)の声が素敵でハマってしまった。美知恵ちゃん、顔も心も声もとーーーーってもかわいかった。
あと、エミちゃん役の五味未知子さんが初舞台だそうなのだがめっっっっちゃ良かった。お父さんも怪奇の類も、客席までもエミちゃんのパワフル不思議ワールドに引き込まれました。また機会があればお目にかかりたいです。
カテコは並木さんとわかばやしさんがお話しされた回だったのだけど、聞いていて胸が熱くなるようなご挨拶でした。お二人を始め、この舞台は年長の皆さんの確かな演技力に支えられているんだろうなあ、と(勝手に)観劇しながら想像していた。こうして若いキャストさんとベテランのキャストさんが一緒になって一つの作品を作っていけるところが、劇団が作る作品の良さだなあと思ったり。。。
作品には関係のないところで、少し残念だったのが座席。学割チケットがあったので有難くそちらを購入させていただいたのだが、シアタートップスほぼ最後列は流石に見えにくかった…。舞台中央が前の人の頭で隠れてしまうので、中央で座ったり寝転んだりするシーンがほぼほぼ見えない。あと上の階?の椅子か何かを引きずる音が結構響いていて気になってしまった。どちらも以前観劇した時は気にならなかったので、後方席だけの話かも。お値段が安いのでしょうがないかな〜とは思います。
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すいまどうか、最初のうちはだいぶファンタジーでぶっ飛んだ世界観だと思っていたのに、観ているうちに何故か馴染んできてしまった。みっちゃんと大人になったともちゃんの会話にはうるっときたし、久太の2回目の「すいません、どうかしてました」にはなんだか救われたような気がした。あらすじにある「人生で迷子になった大人たち」がそれぞれ「絵」がすき、「歌」がすき、だいすきな「娘」…と「すき」なものの存在を見つめ直せる終わり方が素敵でした。私ももっと「すき」の気持ちを大切にしたいし、「すき」を諦めなくても良いんだって教えてもらった気がする。
改めて、今川さんのつくるオトムギ、面白かったです。今度は塩田さんがつくる公演も観に行ってみたい。よい観劇始めになりました。