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【ネット歯科大】口の内の菌は多いが毒性は弱い

 
 口の中には、多くの細菌が定着しています。数でいうと、億レベルの細菌数が存在するとされています。
 
 口腔細菌とよく比較されるのが、腸内細菌です
 
 人体に存在する総量としては腸内細菌の方が多いわけですが、1グラムあたりなど、単位質量あたりの細菌数では口の細菌数も負けていません。
 
 このように細菌数で表現すると口腔内細菌も非常に多いのですが、細菌の毒素という点では、口の中の細菌はそれほど強くありません。
 
 考えてみれば、口の中に多くの細菌が生息している状態で、私たちは食事をしたり水を飲んだりしています。しかし、それが原因でただちに体調が悪くなることはありません。
 
 したがって、口の中には多くの細菌が定着していますが、その毒性はあまり強くないといえます。
 
 ただし、弱いとはいえ、影響がまったくないわけではありません。
 
 たとえば、特に高齢者で問題となる肺炎ですが、口の中の細菌はその大きな原因となっています。
 
 誤嚥(ごえん)といって、本来は胃に入るべきものが気管を通って肺に到達してしまうことがあります。高齢者では反射が弱くなっていることもあり、誤嚥が生じやすくなります。誤嚥が原因で肺炎となることを誤嚥性肺炎といいますが、その主な原因菌は口腔内の細菌です。
 
 また、最近の研究からは、口腔内の細菌が酸性である胃を通過して腸内にまで影響しうるという結果も得られています。
 
 さらに、口の中の細菌が血流に乗って全身をまわっていることは、多くの研究から示されている事実です。
 
 以上のことから、口の中の細菌は毒性が弱いとはいえ、できるだけ菌の量を減らしておいた方がいいといえます。
 
 毎日歯をみがくのは、細菌を減らすためです。むし歯や歯周病など口の病気を予防することが主たる目的ですが、全身の健康を維持することにもつながっているのです。
 
 日常生活の中で、細菌の存在について過度におそれる必要はありません。たとえば、1回使った歯ブラシの毛先には口の中の細菌がたくさん付着していますが、毎日新品の歯ブラシを使うのは現実的ではありません。
 
口の細菌について正しく理解していただき、科学的に健康な生活を目指しましょう。
 
神奈川歯科大学 青山典生
 

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