ドッペルゲンゴ郎[短編]
JR横須賀線の構内で急行待ちをしていると、向かいのホームにおれとよく似た男がいた。
まず、着ているスーツがよく似てる。なんなら靴と鞄も揃いじゃないか。べつにスーツも小物にもこだわりなんてものはないが、全く同じというのは気分がいいものではない。
でも今日のネクタイは別れた彼女が博多土産に買ってきたものだ。明太子柄だ。まずかぶることはない。
おれはさりげなく男の襟元を盗み見た。ほら、ただの紺に水玉のネクタイじゃないか。おれは何を気にしてるんだ。髪型や背格好が似てるからって。通勤